コンテンツ・アグリゲーションは次代の金脈と成り得るか?

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少し前まで「注目している分野やサービスは何ですか?」と人に会うたびに聞かれて「…」と沈黙せざるを得なかった私ですが(私が仕事で携わっている分野はもちろん注目しているので、そういうサービスの名を挙げることは多かったのですが、毎回同じこと言ってても飽きる)久々に「これは!」と自信を持って言える注目分野を見つけました。アグリゲーションなのですが、敢えて「コンテンツ・アグリゲーション」と名付けます。

コンテンツ・アグリゲーションモデルの分類及び、コンテンツ・アグリゲーションが機能する条件について本稿で掘り下げてお届けします。厳密には「広告主導型」ではなく「ユーザー課金型」が最近ホットだなと思っております。

BLOGSなどのメディア運営による広告主導型

まず少し前から存在する「メディア運営による広告主導型」モデルの紹介です。具体事例としてBLOGOSAll Coupon Japanを取り上げます。

■読者視点から見たBLOGOS

私も本誌の転載を許可する形で参加しているBLOGOSですが、読者サイドに立つと極めて便利なメディアで、私は自分が転載するまで読んでいませんでしたが、今では毎日回遊するほどのメディアとなっています。私の主な情報収集ツールはRSS、twitterが主ですがヤフトピやBLOGOSといったポータルも覗いており、特にBLOGOSでピックアップされている記事やランキング上位の記事には時間がある際には目を通すようになりました。

BLOGOSの最大の価値はアグリゲーションサイトであるものの、著名ブロガーの記事を一定のフィルターを掛けてキュレーションしている点といえます。自分のRSSやtwitter上からは流入してこない記事や自分が興味がありそうなブロガーを見つけることができます。ランキングやコメントにより、社会的に関心があるコンテンツは何かを探ることもできます。

BLOGOSは私の転載が始まった2012年初くらいから掲載ブロガーを増やしPVを追いかける方針のようで、正直、こんなブロガーと一緒にされたくないと思う人も載っているわけですが(私自身も他からそう思われているかもしれません)一定の質はキュレーションで担保し、コンテンツプロバイダーであるブロガーの母数を増やしてコンテンツ数を増やしPVを伸ばすという戦略は、ユーザーメリットもあり、十分に機能しているといえるでしょう。

■コンテンツ提供者視点から見たBLOGOS

ただし、数字を取りたいがために、ピックアップする際にブロガーの意向と反したタイトル付けや、炎上ネタを特集したりなど、品位に欠ける点も多々あるかと思います。私自身は「転載のされ方」が汚く(原文を忠実に反映していないため)何度かクレームをつけたり、BLOGOSから降りることも考えましたが、「The Startupでバズらなかった記事がBLOGOSでバズる」という現象を何度か体験しているため、こうした「保険心理」が働くため、掲載し続けている私のようなブロガーもいるでしょう。

BLOGOSに露出しているからといって、The Startupのサイトパワーが上がったとは思えないのが正直なところで、この辺はアグリゲーション・メディアに参加するプレイヤーにとっては悩ましいところでしょうが、BLOGOSは「転載でok」という手間がかからないライン引きが絶妙です。

■クーポンのアグリゲーションサイト:All Coupon Japan

BLOGOSは「ブロガーをアグリゲーション」した事例ですが、All Coupon Japanは名前の通り、一時期流行ったGroupon系のクーポンサイトをアグリゲーションした事例です。2010-2011年にレッドオーシャン化したこの市場も、最近ではあまりニュースを聞かなくなりましたが、プレイヤーが多すぎたこともあり、この手のアグリゲーションが機能しやすい事業環境であったと思います。おそらくアフィリエイトや広告収入が主でしょうが、低コスト構造でそれなりの利益を上げていると推測されます。

今がホットなパッケージングによるユーザー課金型

この分野がホットな分野です。事例としてはKDDIのauスマートパス、デジタルコンテンツの有料配信プラットフォームcakesを挙げます。

■無料アプリ事業者に朗報?:auスマートパス

意外にメディアに情報の少ないauスマートパスは、Android端末で月額390円で500本前後の有料無料アプリが使い放題というパッケージプランです。利用者50万人突破の「auスマートパス」は本当に得なのか? という記事にある通り、たしかにユーザーメリットは大きそうですね。KDDIは3,000万人強いる国内契約者のうち、500万人ほどのスマートパスの導入を狙っているとの話もあり、年間APRUを約5,000円と考えると、約250億円程度の市場となりそうです。

この売上をスマートパス参加プロバイダーにアクティブ率などの貢献度順にレベニューシェアすると考えられます。事業者側からみると、無料アプリ提供事業社には収益化の良い機会ですが、有料アプリ提供事業社の場合はスマートパスに組み込む場合と、単独でリリースする場合での売上のアップサイドに差が出るであろうため、手放しで乗っかるのが良いというわけでもないでしょう。スマートパスで上位に食い込むためのコンサルの需要が既にあるという話も耳にしており、スマートパス市場に注力するアプリ事業者も出てきそうですね。

■ビジネス版・週刊少年ジャンプ:cakes

そして私が今最も注目しているのがcakesです。cakesはこちらによると 「豪華執筆陣による、寄稿、連載のほか、さまざまなコンテンツホルダーの雑誌、書籍、コミック、ウェブサイトなど多彩なコンテンツを配信するプラットフォーム」を「定額(週)150円」で提供とあります。これはとてもわかりやすくいうと「質の高いビジネス版ジャンプ」が登場するようなものであり、巨大なマーケットとなる可能性を秘めていると思います。

著名人のコンテンツは、現状では有料メルマガでホリエモンが1万人の読者を獲得したりしているが、それ以外の有益なツールはあまり存在しない。(私も展開している「サロン」も新しいモデルとして注目されてはいる)有料メルマガ事業者の手数料率の高さ、個人で展開する際のスケールの効きにくさなどから、個人有料メルマガモデルにはあまり未来がないように思えます。

■cake参加者の心理:事業運営のポイント

逆にcakesのようなプラットフォームを利用して知名度を上げ、自分のプラットフォームにユーザーのトラフィックを流し、個人のブランドエクイティを上げるツールとして機能すると、連載はcakesでやってるけど、そこで知名度が上がって書籍を出す際にヒットしやすくなる。という流れが作れれば素敵ではありますが、似たようなスキームに見えるBLOGOSでそれが機能しているかをベンチマークする必要はありそうです。(私は大した影響力ではないので実感できませんが、例えば切り込み隊長さんなどはBLOGOSのPVの稼ぎ頭的な感があるので、BLOGOSでの露出の恩恵を受けられているかもしれません)

ここも貢献度に応じたレベニューシェアで参加者に利益を配分する形になるのではないでしょうか。参加者側はcakesが上手くスケールすれば、個人では得られないプラットフォーム上でコンテンツを配信できるので、個人の売上の手数料率ではなく、月々の貢献度に応じて配分する(よって、コンテンツを提供しない月があってもいい)など、参加社側がコンテンツを提供し続けるハードルの低い収益モデルを構築するのが肝かなと。

あ、cakesさんからは僕にも声を掛けて頂けると嬉しいですなあ…w

コンテンツ・アグリゲーションモデルが機能する条件

長々と4つのサービスを紹介しましたが、このモデルが機能するであろう条件を最後に2つ紹介します。

■1:その市場のプレイヤーがたくさんいること

アグリゲーションの最大の価値は「特定のジャンルの情報を一つのサイトに集約すること」であると私は考えます。よってプレイヤー数が少ない市場ではあまり機能せず、プレイヤーが多い市場において機能するモデルであると言えます。

たとえば「飲食のアグリゲーションだ!」といって、食べログとぐるなびとHotpaperとRettyをアグリゲーションしてもプレイヤー数が少ないためさほどバリューにはならず、ユーザーはそれぞれ自分が好きなサイトを単独で見に行くのではないでしょうか。一方で「ブロガー」とかの場合ですとかなりの数になりますから、ユーザーメリットが高まり、アグリゲーションの価値があるといえます。

■2:アグリゲーションによりスケール性が高まること

1つ目の「プレイヤーがたくさんいる」に紐づきますが、1事業者でのスケールに限界のあるものを、アグリゲートすることによってスケール性を高めることができれば、このモデルは機能します。cakesの1コンテンツになるであろう、メルマガが良い例で、ホリエモンすら1万人の集客ですが、様々な執筆者を迎えることで10万、100万とスケールの可能性がある。

売れっ子執筆者が参加した際には自らの取り分が下がる可能性はありますが、プラットフォーム事業者側としては、ホリエモン級のコンテンツプロバイダーを100人獲得して、読者1万×100=100万を目指すよりも、パッケージングして100万人の読者獲得を目指した方が、特定の個人に依存するリスクも下がり、スケールしやすいでしょう。

ということでコンテンツアグリゲーションモデルは、市場を間違えなければ確実な収益を上げられるモデルであると考えます。次代の金脈となる大きな可能性を秘めているといえるでしょう。。レッドオーシャン市場に参入するのであれば、その前にその市場のアグリゲートの旨みを検討しても良いでしょう。



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