マーケットとユーザーニーズの見極め方の方程式

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投資家があらわれた!

呪文を唱え始めた!

マーケットガダイジダ!

マーケットガダイジダ!

初期の起業家と投資家のお見合いで、日常茶飯事なシーンです。投資家ではない僕にもなぜか事業相談が多数持ち込まれ、最近はよほどヒドくなければ一度はお会いして、頭の体操をするようにしています。その際に僕でも「マーケットガダイジダ!」という呪文を唱えます。この呪文はもはや挨拶の定型文な感が否めませんが、具体的にいうと「マーケット」とはなんなんでしょうか。

インドネシアの投資家とカフェで雑談していて、「良い経営者は良いマーケットを選ぶ」という話で盛り上がったので、整理しておきます。当たり前の話な気がしますが、チェックリストとして有用なはずです。下記のような定量化が大事ですが、わざわざ定量化する前に直感的に「このマーケットはない」と1分でジャッジしていることも多々あります。

マーケットと合わせて「ユーザーニーズ」の話も盛り込みますが、この両方が曖昧であり、突っ込まれた時に上手く回答できない起業家は少なくないです。多少の偏見も含みますが、学齢の高い人や著名企業出身の方は、この辺の数字に強い傾向があると見受けられます。「ふわっとした回答」ではなく、どれだけ「たしからしい回答」ができるかという点で、コンサルの採用面接の「フェルミ推定」の素養が求められます。

魅力的なマーケットを見極める方程式

■1:大きさと成長可能性

「良いマーケット」とは投資家の言葉では「大きいマーケット」であると言い換えることもできるでしょう。プレゼン資料でよくあるのは、例えば「外食業界は日本国内では5兆円の市場があります」というようなもの。その市場の何%をどういう収益モデルで狙いにいきますという話の筋が通っていると良いです。極力大きいマーケットを狙った方が果実が大きいため、投資家は大きいマーケットを狙う起業家を好む傾向にあるでしょう。

成長可能性に関しても当然の話ではありますが、斜陽産業よりも成長産業を選択した方がベターでしょう。斜陽産業でイノベーションを起こして既存市場をペネトレートするやり方も勿論あるでしょうが、成長産業の波に乗った方が事業の成長可能性も上がります。ガラケーとスマホ、どちらの市場を狙うか、という例が2012年現在だとわかりやすいでしょう。

■2:既存市場の置き換えか、新規市場の創造か

これもマーケットの議論の大きな論点です。既存市場を最先端のテクノロジーで置き換えて需要を創造するか、今までにない市場の需要を創造するか。成功確度は既存市場の置き換えの方が圧倒的に高いと思います。これは「事業立ち上げ難易度の高低」ともいえます。既存市場の中でも立ち上げ難易度の高低は勿論ありますが、新規市場創造の方が概ね難易度高い。

ソーシャルゲームは家庭用ゲームソフト市場を、クラウドワークスは制作会社への外注市場を置き換えています。twitterは新規市場の創造といえ、「つぶやく」という市場はなかったように思えます。FacebookのようなSNSも「社交場」や「パーティー」市場を置き換えたとは言い難く、新規事業の創造といえる。新規市場創造の成功例はたしかに眩しいですが、その成功確率は針の穴に糸を通すようなもの。手堅く勝つには「既存市場の置き換え」に目を向けた方が良い。

■マーケット見極めの方程式

マーケットの魅力=(市場の大きさ+成長性)×事業立ち上げ難易度の低さ

*事業立ち上げ難易度の定義:既存市場の置き換え<新規市場の創造

注1:魅力的にみえるマーケットはレッドオーシャン化しやすい傾向も。
(例:Groupon市場は市場が大きく、事業立ち上げ難易度が低いため、レッドオーシャン化した)
注2:敢えて事業立ち上げ難易度の高いモデルを選び、ブルーオーシャンで戦う方が魅力的なマーケットと考える人もいる
注3:ごく稀にtwitterやFacebookのようなわけのわからない新規市場創造モノは出る

ユーザーニーズを見極める方程式

■1:サービスの利用頻度と利用再現性

そのサービスはどれくらいの頻度で利用されるのか。コマースであればその人の年間購入回数がどれくらい見込めるのか。5回なのか。1回なのか。コミュニケーションや情報投稿系サービスであればどれくらいの頻度で投稿したり閲覧されるか。これはMAUやDAUに置き換えられる。

コミュニケーションなどの利用頻度が高いサービスは「中毒性が高い」といえ、コマースや情報の非対称性を解消するサービスは利便性が高く「必要性の高い」サービスといえる。この辺はインフラとなるWebサービスは「中毒性」か「必要性」が高いという記事が参考になるであろう。利用頻度を高めたり、利用頻度がそこまで高くならない特性のサービスは高い利用再現性を狙う必要がある。最低限、どちらかを満たせないときつい。

■2:ターゲットボリュームとユーザー換金価値

上記の利用頻度と利用再現性を鑑みつつ、利用するターゲットとなるボリュームはどれくらいなのか。アパレル全般なのか。眼鏡だけなのか。眼鏡の場合、眼鏡を1年に1本買う人はどれくらいいるのか。靴を買う人よりも少ないだろう。そのサービスがあるからといって、1年に1本眼鏡を買っていた人が2本買うようになるだろうか。新規市場の創造に繋がるか。

ユーザー価値を経済に置き換えられる場合、ユーザー一人当たりがそのサービスに対していくらの価値をもたらすのか。コマースであれば平均購入単価、課金であればライフタイムバリュー。サービスがスケールした時にターゲットボリュームとユーザー換金価値をどれくらいと見込めるのか。「売上=単価×購入回数」の単純な式となる根拠。ここを回答できない起業家は少なくない。

よく「ユーザー数が伸びればok」という幻想を抱く起業家が多いが、そのサービスで実現し得るアップサイドのユーザー数とマネタイズという変数を厳密に考えていない人が多いように見受けられる。

■3:サービスの利用開始難易度の高低

どのサービスも苦戦している点と思われるが「認知」しても「利用」に至らないことがある。CGMでいえば「投稿と閲覧」、マッチングであれば「募集と応募」 。これらのアクションに対する特に初回のハードルを下げることが重要。マーケットニーズが高いサービスであっても、使い方がよくわからないとユーザーに即離脱されます。

簡単な会員登録やログイン、投稿フォーム。そのサービスの利用イメージが沸くLPや事例。興味はあるけど、使い始めてみるまでよくわからないというユーザーが利用してくれるにはどうすれば良いか。ユーザーニーズの話というよりかは、潜在ニーズを炙り出すオペレーション施策といえる補足的な話である。

■ユーザーニーズ見極めの方程式 

ユーザーニーズがある=「利用頻度が高い」か「利用再現性が高い」のどちらかを満たしている×ターゲットボリュームが比較的大きい×ユーザー換金価値が明確(高ければ高いほど良い) となる。(少し長いが)

以上です。今後は起業家と議論する時にはこのような観点を元に詰めまくりたいと思う。ちなみに僕は最初は新事業に対して疑心暗鬼にネガティブな質問を投げまくって、マーケットやユーザーニーズに光が見えたら膨らませる。という議論構成を無意識的に取っていたと今日自覚しました。ただし、これらの質問は大抵の投資家から聞かれることだと思うので、起業家はこれに対する受け答えを用意しておいて損はないと思う。

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