今日もB Dash Camp2019Springのセッションをお届けします。
進化するD2Cそのビジネスの要点
スピーカー:(敬称略)
清川忠康(オーマイグラス)眼鏡
森雄一郎(FABRIC TOKYO)スーツなどビジネスウェア
野口卓也(バルクオム)メンズ化粧品
塚原健司(イチナナキログラム)韓国レディースアパレルモデレーター:
佐々木康裕(Takram)
ちょっと、QとAが連動していない話が少なくない気がしましたが、強引にまとめました。
D2C経営者は自らYouTuberやTiktokerをやっている?
Q.D2Cのコアバリューは何だと捉えているかD2CのKSFは何か
森:顧客に直接アプローチできるチャネルを多角的に持っている。世界観や顧客ベネフィットを直接伝える機会が多いのがコアバリューと思っている。
自社にデータを蓄積して商品企画やMDに活かしている。
野口:経営の手法の革新に近い。
清川:メディアの変遷と似ている。来店の半分以上は検索経由できている、メガネのオウンドメディアでUU40万ある。ネットだけでなく、店舗もやると返品率が半分くらいになった。
塚原:ひたすら数値を見て施策を打ってきた。
森:17kgはインスタが成長ドライバーなのか?
塚原:マーケティングで正しい方向を向いている人(梅木注釈:インスタでグロースさせようとしている人という意味だと思う)はいるが、徹底的なエグゼキューションが大事で、それが自社はできていると感じる。
Q:どんなKPIを見ているか
森:リピート率とリピート回数
清川:リピート率。眼鏡はリピートされない商材で、平均2-3年だが、顧客接点が多いので、他の眼鏡屋よりリピートが多い。最近はオウンドメディアの伸びが鈍化しているので、YouTubeでのユーザー獲得も始めている。
野口:当社もYouTubeを始めているが、最初から広告でのグロースを攻略してきた。その上で、公式アカウントに最近は力を入れるようになった。KPIでいうと、広告から流入してくるCVRだけ見ている。CVRを上げるためにLP改善を頑張っている。
塚本:KPIは毎月変わる。マーケティング施策によって変わる。僕はちなみにTikTokerです。
D2Cは上手くやれば営業利益率は15-25%出る
Q:投資家に理解してほしいD2Cスタートアップの特徴
森:最近少し変わってきたが、インターネットセクターのバリュエーションの交渉になり辛かった。ECだとあまり価格がつかない。市場の大きさをずっと説明してきた。ビジネスウェアはアパレルのトップ10の上位5社が扱っている。
売上成長の可能性が高く、若者に最適化されていない市場なので、そこにチャンスがある。ちゃんとやれば営業利益率は15-25%出るモデル。
野口:海外D2Cの成功事例を鵜呑みにするとミスリードを生みやすい。日米の社会文脈が異なるため。当社の製品は仕入れがボトルネックになることが多いので、借入も協力いただけると嬉しい。
清川:すべて内製化しているので、社員数が50-60人必要だった。成長過程で資金が必要で、合計5回調達した。リード投資家がずっとフォローオンしてくれたのがよかった。
塚原:最初にエンジェルから調達したが、その後はしていない。IPOを目指しており、今後大きな資金需要が出る時に頑張りたい。
Q:海外展開は考えているか
塚原:中国や韓国を攻めていきたい。
佐々木:米国D2Cは全然海外展開していないが、今回の登壇者たちは海外展開を見据えている。
清川:13ヵ国でやっていて、海外売上比率は15%くらい。香港や台湾が強い。海外は前払いなので、キャッシュフローが回りやすいという理由で始めた。海外はD2Cではなく普通に卸で売っている。日本の製品がそのまま売れるのは台湾だけ。最終的にはカスタマイズさせないと海外でのグロースば難しい。
野口:中国台湾に展開しているが、エゴでしかない。グローバルブランドを作りたいだけ。走りながら考えている。海外売上比率は10%程度。
森:まだ海外展開をしていない。オフラインはデータを登録するスポットという位置付けもあり、まだできていない。
ネット広告単価が高騰し、オフラインの方が獲得効率が良い
Q:店舗の役割をどう考えているか
野口:特に考えていない
森:検索クエリを精緻に見るようにして出店エリアを考えるようにしてから、上手くいった。最近出店した大阪店は初日から利益出ている。オフラインに行った方がCVRが上がるという仮説を持っているので、出店ペースを加速させていく予定。
佐々木:データが直接取れるのがD2Cの醍醐味ですね。成長するに従ってオンライン広告の効果が落ちて行く時に、オフラインに行くと(CPAが抑えられて)良い。
森:オンラインではCPCが最近高騰しているが、リアル店舗の家賃が下がったりしているので、オフラインの方が広告単価が下がっている印象がある。
塚原:ラフォーレ原宿に常設店を出店した。(韓国アパレルレディースは)圧倒的にオフライン比率が高いのでやっているが、オフラインもまだまだハックする余地がある。オンラインのデータを使って、どう並べると一番売れるのか。店舗がブランド構築のピースになるとか、いろいろとやれることがある。
Q:ユニコーンは出るのか
森:売上100億以上はないと難しいと思っている。PER40倍だと評価されている部類なので、成長率が高くないと(時価総額1,000億円に達するのは)難しいかもしれない。D2Cの先も考える必要がある。新しいビジネスモデルも作る必要がある。
塚原:来年には売上10倍にしたい。化粧品とかも手がけていきたい。
野口:バルクオムというメンズ化粧品のみでグローバルナンバーワンを作ると創業時から言ってきたので、それだけやる。グローバルナンバーワンになる過程にユニコーンくらいになっているイメージ。
森:営業利益率どれくらい出せるか
野口&塚原:20%
清川:20-30%取れるのではないか。
セッション内容は以上。下記は個人的感想です。
さほど特に目新しいと感じた話はなかったのですが、自分が思っていたよりも、データを直接取得できて蓄積できるという点が、PDCAをすごく回せるチームにとっては各数値が改善するので、グロースに複利的に効くのだろうなと思いました。
営業利益率が15-25%出るという話は、普通のECよりはバリューチェーン的に利益が出やすいのはわかるのですが、広告費を一定投下し続けてもその営業利益率を確保できるのか。という点は少し疑問に思いました。
D2Cの議論は、5-6年前にあったバーティカルコマースと似ていると感じますし、結果的にD2C自体がバーティカルコマースなわけですが、内製化したことにより、昔のバーティカルコマースよりは利益率を確保しやすい構造になっています。
バーティカルコマースで時価総額的には上場企業だとこんな感じです。
BUYMA(アパレル):600億
オイシックス(野菜):400億
ロコンド(靴):150億
ユニコーンになれるか?とかは、かなりどうでも良い質問に思えましたが(モデレートは全般的に雑に感じました)上記のバーティカルコマースよりは営業利益率は良くなるでしょうが、時価総額の観点でいうとどうでしょう。1,000億越えはなかなかハードルが高いと思います。
しかし、ロコンドを超えるくらいはできる気はしますね。個人的にはメンズ化粧品が一番利益を出しやすく、しかもブルーオーシャンなので伸び代がありそうに思えました。