日本の上場ネット企業162社の回転売買率ランキングと、株式市場から退出すべき企業15社

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最近、東証が上場基準を変更するという話が出てきています。

東証一部上場企業が増えすぎて、率直にいうと一部に居続けるにふさわしくない企業が増えすぎたため、整理しよう。みたいな試みだと思います。

今までの市場からの退場基準は比較的緩く見えたので、2019年3月現在は、少なくない草コインが東証一部にも多数眠っています。

時価総額が営業利益が東証一部上場時の基準ですが、その企業の株式がどれくらい売買されているかという「売買回転率」は一つの指標になるのではないかと感じ、調査しました。調査のきっかけになったのは、投資される経営、売買(売り買い)される経営という書籍の、下記の抜粋部分です。

2014年の東証の売買回転率(株式売買代金/時価総額)は133%。ニューヨークの42%やスイスは56%と比べるとかなり高い。この数値は深圳の619%や上海の458%は例外としても、ドイツの101%、ナスダックの71%と比較すると、先進国では高い数字。

時価総額に比べて売買代金があ多いということは流動性が高いという長所もあるのですが、短期で売買を繰り返す投資家が多いということでもある。

このデータを見ていく上で、前提条件がいくつかありますので、まず前提条件をご確認ください。

☆データ引用元
時価総額:2019/3/1時点
株価:2019/3/6時点
1日の平均売買高:iPhoneデフォルトの株アプリの「平均売買高」欄から取得(よって、期間が不明)
*ひょっとすると、このデータが株式分割を考慮されていない可能性がある。そこまでは時間の関係で調査し切れず
回転売買率:営業日数を年間250日と仮定して算出

☆注意事項
・上場したばかりの企業は上場直後は一般的に出来高が増えるので、回転売買率が高めに出やすい。年間を通すと、下がる場合が多いと思われる。青セルの企業は「2018年12月のIPO銘柄」とした。ゆえに、異常値と捉えてください
・高くても低くても良くない。東証平均が133%であることが、一つの基準となる。
・時価総額が高い企業は回転売買率が低め、時価総額が低い企業は回転売買倍率が高めに出やすい
・決してデイトレードというトレード手法を否定する記事ではございません

回転売買率のデータを見る際に、下世話なのですがわかりやすい喩えとしてはこんな感じです。

1.回転売買率が高い企業=モテるがワンナイトラブ(デイトレーダー)も多い
2.回転売買率が東証平均付近の企業=それなりにモテるし、彼氏(長期投資家)に比較的大切にされている
3.回転売買率が低い企業=モテない。例外として、上場しているけど市場に流通している株式比率が極端に低い。

投資される企業側の視点からは、2が一番良いかと思います。1だと個人投資家を中心に遊ばれてもいるわけですが、3だと遊ばれすらしないということで、個人的には3に入っている企業群は上場を維持する価値がないと思います。

それでは、この3群(を銘柄数多い事情もあり、4段落)に分けてランキングを見ていきましょう。

売買

かなり遊ばれている銘柄68社:アルベルトはビッチ!?

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まずはワンナイトラブ(デイトレード)が多いであろう、回転売買率500%を超える銘柄を並べました。回転売買率の高い順です。言い換えると、特に短期売買の個人投資家に人気がある銘柄とも言えます。32社もあります。

簡単にいうと、ZOZO株の最低単元100株は年間5.3回売買されている。という意味になります。

2018年12月IPO組(青セル)が5社入っていますが、それ以外を個別で多少見ていきましょう。

まず、アルベルトは2018/2/6の最安値1,200円から、2018/11/29に最高値16,730円と約10ヶ月でテンバガーどころか、約14倍に膨れ上がっています。直近では1万円を割っていますが、アルベルトに多くの個人投資家が群がり、アルベルト株は年間20回も売買されることとなりました。かなり異常な回転率です。

他銘柄を見ると、UUUM、シェアリングテクノロジー、鎌倉新書あたりも急激な株価上昇を見せており、売買高が急増と密接な関係があります。マネックスはコインチェック買収後に出来高が急増しましたが、最近は落ち着いています。

ZOZOはここ半年ほどかなり株価が下がりましたので、売った人がかなり多かったとも指摘できます。

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2018年12月に限らない2018年のIPO銘柄も比較的出てきます。

それなりに遊ばれている銘柄33社

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ここは180%〜300%の銘柄群です。これくらいの回転売買率になると、時価総額が大きな銘柄も増えてきます。

比較的大切にされていそうな銘柄:27社

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この群は東証平均133%というデータを見ると、その中央値に比較的近いと分類されます。

時価総額が大きめの場合、それなりに長期投資家比率が高く、安定していると言えるのではないでしょうか。時価総額1,000億超えの銘柄でいうと

ネクソン 15,849億 91.26%
楽天 12,681億  116.40%
エムスリー 12,039億 120.21%
カカクコム 4,500億 123.98%

この辺は株価のボラティリティが低いです。個人投資家観点からすると面白みがなく、機関投資家比率が高いかもしれません。ですが、投資を受ける企業視点で見ると適正な水準と言えるのではないでしょうか。

一方で時価総額300億以下で、この群に入っている企業は、比較的人気がない銘柄であり、どちらかというと適正ではなく非モテ銘柄と言えます。

非モテ銘柄35社:時価総額1兆超えなら50-100%は適正か

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最後となった企業群。回転売買率100%で、最低単元数である100株が年間に1回売買されるという意味なので、この銘柄群は平均年間売買回数が1回以下になります。

とはいえ、ここに入っているから全てダメというわけではありません。時価総額の高い企業は、ここの数字が低めに出がちです。よって、リクルート(57.91%)、LINE(73.96%)、ヤフー(84.15%)この辺はさほど問題ではない気がします。

この群の特徴としてはGMO子会社が4社出てきます。子会社上場なので、そもそも浮動株比率が低いため、出来高が少なく売買回転率が下がっています。株式市場観点では、GMOグループの親子上場の意義はあるようには思えません。

それ以外の特筆すべき点としては、ウォンテッドリーはそもそも上場時の公募売出し比率が相当低いので、市場に流通している株式数が少ないので、回転売買率が低い。

デジガレ、ラクス、オープンドア、イトクロ、ファンコミ、バリューコマースあたりは時価総額500億以上ないしはそのポテンシャルがあるため、東証基準と比較すると低めですが、市場から退場すべきというほどの水準ではないと思います。

株式市場から退出すべき企業15社:首位は、ほぼ日

TheStartupとしては下記15社が「株式市場から退出すべき企業」であると考えます。

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今度は「回転売買率が低い順」に並べました。非モテ銘柄35社の項目で、「こういう条件は除外すべき」という企業は除き、回転売買率60%以下の企業に絞りました。

銘柄を見ると、特に市場にいてもいなくても多くの投資家は困らないというか、気にもしない企業ばかりだと思います。言い換えると、業界再編対象として、TOB可能性がある企業群です(GMOグループ除く)

この15社のほとんどが、1日の売買代金が1億円に満たない。

断トツトップとなったほぼ日は出来高ゼロの日も珍しくありません。

出来高がゼロの日が少なくない企業が、上場している意味ってあるのでしょうか?強い違和感を覚えます。

あとは指摘したGMOグループが3社ランクイン。GMOグループは今回調査対象で8社でしたが、回転売買率トップはGMO本体の206%、次はGMOPGの198%でした。この水準であれば、特に遊ばれているわけでもなく賢明な気がします(いや、GMOPGの場合は、親会社がそれなりに保有しているので、それなりに出来高は多い部類に入る)GMOグループの親子上場の意義は感じませんね。

それ以外の14社を分類しましょう。

☆老舗オワコン企業
エムティーアイ、ガイアックス、ザッパラス、インタースペース

☆新興オワコン企業
ジーニー(2017年12月上場)
イオレ(2017年12月上場)
クックビズ(2017年11月上場)
シルバーエッグ(2016年9月上場)
デファクトスタンダード(2016年8月上場)
ホープ(2016年6月上場)
富士山マガジン(2015年7月上場)

特に新興オワコンの方は、IPOから1年弱しか経っていなくても、回転売買率が低いというのは、相当厳しいです。年度別IPO銘柄に限定してこの調査をすると、さらにこれらの企業群がいかにオワコンかを証明できそうですが、今回はここまでとしておきます。

ちなみに、ジーニーはIPO時から1年で株価が1/4程度になりました。

これら15社は、非モテ35社を通り越して、もはや株式市場から存在を無視されている銘柄と言っても過言ではありません。売買されないわけですから。

売買されすぎるアルベルトのようなビッチ銘柄も、それはそれで問題なわけですが、全く誰からも相手にされない方が株式市場に商品として並び続ける観点で言うと、非常に問題です。

以上です。

繰り返し強調しますが、回転売買率が低い企業を「市場から退出すべき」としましたが、回転売買率が高すぎてもそれはそれで良くないと思われます。個人投資家やヘッジファンドのおもちゃになっているわけです。

上場企業経営者の視点では個人投資家は完全に排除できないし、排除する必要もないのでしょうが、安定株主となる機関投資家比率を高めて、適正な回転売買率(東証水準でいうと平均値の133%からバッファを持って、100〜200%とか)を維持するのが最適かと思います。

ナスダック平均の71%を鑑みると、70-100%の間に抑えるというのが、最適な数値という見方もできるかもしれません。

それでいうと今回は非モテ群に分類しましたが、LINE、ラクス、デジガレあたりが70-100%の水準のそれなりに時価総額が大きな企業であり、最適な売買回転率と言えるかもしれません。

ややマニアックなランキングでしたが、単純に時価総額が大きい低いというよりも、その企業の株式が市場でどれだけ売買されているかという観点は、その企業が株式市場に居続ける意味があるかという問いに対して、有用な一つのサンプルになると思えました。

*強めに注記:iPhoneの株アプリの「平均出来高」が株式分割を考慮していない場合、数字が間違っている場合があります。本稿はあくまで大まか傾向としてご参考までに。

最近はTheStartupはあまり更新しておりませんので、ウメキワークスのご愛顧を、何卒宜しくお願い致します。

☆本稿の参考文献



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