中期経営計画発表後の株価推移と目標数値達成見込み

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Umeki Salonで「株価を気にしない経営者はどうなのか」的なスレを立て、様々な上場企業経営者にコメントいただきました。

その中で大枠としては「中長期的な企業価値向上が重要である」というコンセンサスがあり、その考え方が実際に行動に反映されているかを検証すると

1.中期経営計画を発表しているか否か
2.その中期経営計画の達成率の検証

この2つを調査することに意義があると感じました。

さらに、中期経営計画の発表およびその後の株価推移や目標数値の達成見込みについて本稿で検証します。

調査対象企業:日本のインターネット上場企業117社

何かしらの形で中期経営計画の発表がある企業:23社

中期経営計画の発表率:約20%

セクター別
メディア:12/40社(30%)
コマース:4/16社(25%)
広告:4/19社(21%)
B2B&FinTech:3/25社(12%)
ゲーム:0/17社(0%)

注記1:「中期経営計画+社名」で検索して拾ったため、多少の抜け漏れがある点はご容赦いただきたい。

注記2:上場したばかりの企業も対象としており、それらの企業は「成長可能性に関する説明資料」が中期経営計画的な位置付けになっている場合もあると想定されるが、「成長可能性に関する説明資料」は今回調査対象外とした。

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中期経営計画発表時系列順:各社株価推移など

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大前提として「株価」に関しては、ここ1週間は相場全体が不調だったこともあり、おおよその参考までにという程度で捉えていただきたい。

数社、中期経営計画発表後に株式分割を実施した企業があり、それらの企業の中期経営計画発表時株価は、株式分割を考慮した価格とした。

「発表時株価」は中期経営計画発表日前後の株価を基本的には適用。

中期経営計画発表から1年未満の企業はあくまで参考値として見ていただきた。

みて取れる傾向をいくつか箇条書きで紹介すると

・中期経営計画発表時から現時点の株価が上昇している企業は12/23社。中期経営計画の発表自体とその後の株価に大きな相関は見られない

・中期経営計画発表時以降に最高値が2倍以上になった企業は8社(高い順に:PRTIMES、リクルート、じげん、メタップス、クラウドワークス、AppBank、デジタルガレージ、マクロミル)

・中期経営計画発表時の株価に対して、現在の株価が70%以下となった企業は7社(低い順に:ぐるなび、リブセンス、フリークアウト、ライフル、オークファン、カドカワ、楽天、)

・中期経営計画発表時の株価を、発表後にほぼ上回っていない企業:4社

中期経営計画発表時系列順:目標業績進捗率など

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注記:売上、営利の単位は億円

対象:中期経営計画発表から1年以上経っていて、目標の売上や営業利益を開示している企業13社

現時点営利達成率は、目標とする決算年度で掲げる営業利益に対して、直近の決算の実績ないしは今期の見込みでどれくらいまで達しているかの%を表しています。

目標とする決算年度は、一番遠い期日でも2021年3月度決算であり、現時点から3年後です。中期経営計画は3年か5年スパンで発表する企業が多くなっています。

傾向は下記の通り。

・目標とする営業利益に対して、進捗率が高いのはじげんとフルスピードの80%越え

・リブセンス、カドカワは2018年度が中期経営計画で目標を掲げた事業年度だったが、大幅な未達見込み

・目標期日までにまだ2-3年あるとはいえ、ぐるなびの進捗率13%、メタップス5.6%は、確実に未達になる可能性が高いと思われる

・中期経営計画発表から2年以上経つ7銘柄に関しては、目標に対する進捗率と、計画発表時からの現在の株価のアップダウンが比較的相関関係にある

・13社とN数は少ないため参考情報程度だが、ネット企業が掲げる中期経営計画の目標数値達成率は高く見積もって30-40%、低く見積もると20%程度と思われる。

・よって、中期経営計画に対する過信は禁物であり、その企業が今まで業績予想をきっちり守ってきたのか、大幅な乖離が何度かあったのかなどに注視する必要がある

CAGR(平均成長率)を中期経営計画で掲げた企業3社

上記の13社は「売上と営業利益両方、もしくはどちらか」を中期経営計画の目標数値として掲げましたが、これら以外の目標を掲げた企業が3社ありました。

リクルート:調整後EPSが3年CAGR一桁後半

デジタルガレージ:各部門の営業利益がCAGR15%以上

マクロミル:CAGRが10%以上

注記:CAGR=年平均成長率

こういった成長率で見た方が、闇雲にトップダウンで数字を置くよりも、現実的に達成できそうな気がします。

現にこの3社は株価も順調に伸びており、それが綺麗な右肩上がりのチャートを描いています。ボラティリティも低めです。

市場に対して適切な期待値コントロールをして、株価を地道に右肩上がりに持っていくためにも、この「CAGR(平均成長率)を軸とした中期経営計画の目標数値設定」を導入することを検討する余地はあるのではないでしょうか。

本誌が中期経営計画に期待する企業トップ3

独断と偏見で選ぶと、リクルート、じげん、スタートトゥデイの3社です。

リクルートは既に規模が大きいにも関わらず、中期経営計画発表後、2年強で株価も2.5倍。海外企業買収など、打ち手も積極的です。

じげんは今回の調査対象の中でも、トップ3には入る「中期経営計画への気合い」を資料から感じ、実際に営業利益達成率も2年を残して既に80%なので、達成確率は高いといえます。

無駄に高い数字を吹かせて、大幅な未達が乱発される中、きっちりと中期経営計画の目標数字を達成することは、大変立派です。

最後にスタートトゥデイですが、2018年4月に発表したばかりですが、売上や営業利益のみならず、「時価総額5兆円を10年以内に目指す」と、時価総額目標も発表。プライベートブランドへの期待も高まり、ここ数年株価が急激に上昇してきており、今後も市場から期待されると思われます。

以上です。

今回の調査から学んだ重要な点をまとめると下記の通り。

・中期経営計画の目標数値達成率は高く見積もって30-40%、低く見積もると20%程度という仮説を立てられた。

・中期経営計画の目標数値達成見込みが高い企業は株価が上がっており、大幅な未達に終わる雰囲気の企業は株価が下がっている(当然だが)。

・企業カルチャーによって、中期経営計画の目標数値の精度が異なるため、過去の業績達成率を見直す必要がある

・売上や営業利益目標ではなく、CAGR目標の企業の方が、株価も業績も安定的に伸びている。

他に中期経営計画に対して、ご意見ございましたら、twitterやNewsPicksなどでぜひお聞かせください。

付録
リンク有効な各社の中期経営計画(発表時系列順)

リブセンス:こちら
角川ドワンゴ:こちら
楽天:こちら
リクルート:こちら
じげん:こちら
ライフネット生命:こちら
マクロミル:こちら
フルスピード:こちら
ぐるなび:こちら
PR TIMES:こちら
アイスタイル:こちら
メタップス:こちら
オークファン:こちら
セレス:こちら
ライフル:こちら
デジタルガレージ:こちら
AppBank:こちら
Voyage:こちら
クラウドワークス:こちら
フリークアウト:こちら
スタートトゥデイ:こちら
ロコンド:こちら
オプト:こちら

ちなみに、上場企業の分析に関しては、下記の新サービス「ネット企業分析サロン」で取り組んでいきますので、ご興味のある方は覗いてみてください!

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