こんにちは、Umekingです。
2013年6月3日に、オプトとセプテーニの業績と新規事業を比較してみたという記事を出していたのですが、約3年ぶりに比較してみるとかなり興味深いことになっていました。ぜひ上記記事と本記事を見比べながらご覧ください。
まずこれは、上記記事から抜粋した過去の業績です。
オプトの2014年は業績がよさそうに見えますが、ホットリンク株の売却益を計上が要因。本業の営業利益ベースでは2012年に両社はトントンでしたが、2013年からは差が開きつつあります。同様のインターネット広告代理事業が主軸ながら、2015年の営業利益率は2.5%と4.3%と開きが出つつある。
売上を見るとオプトは3年間ほぼ成長がないどころか、減収。セプテーニはここ二年ほどは前年比+20%程度のグロースを見せています。2013年と2016年の時価総額を比較すると、オプトは約50億減の198億、セプテーニは560億ほど増の724億。オプトの3倍以上の時価総額に。
両者の差はなぜこれほどまでに開いたのか。
オプト:中小企業向けマーケ支援の強化とか、微妙すぎる
<1:マーケティング支援事業>
代理店業の呼び方がIRによると「マーケティング支援」のようです。
利益は四半期連続の減収は免れていますが、売上に連動して減収気味。マージン率は20%弱。2014年5月に筆頭株主が電通からオプト創業者の鉢嶺氏関連会社に変わっており、この3年で体制変更がありました。電通からの商流って利益率悪そうですよね。
中期戦略に「中小・地方企業向け取扱い高ダントツNo.1へ」との方針がありますが、薄利そうな市場にフォーカスして、大丈夫かよと思いました。
サイバーエージェントの子会社のCyber Zなどは「一定額以上の取引額じゃないと取引しない」という、事実上大企業しか相手にしないという方針もある中で、中小・地方企業向けは空いている市場ではありますが、それは旨みがないから競合が手をつけていないだけです。本業の方針がイケてないので、今後も期待できないなと感じました。
<2:データベース事業>
2013年の記事に「オプトのデータベース事業のアップサイドにはやや懐疑的」と記載がありますが、2015年通期決算でこの事業はほぼ消えているように見えます。特に優位性のある事業には見えなかったんですよね。ビッグデータというバズワードに踊らされた感じでしょうか。
<3:投資事業>
2013年の記事に「今後は投資事業に注力か」と記載しましたが、その後オプトインキュベートやオプトベンチャーズなど、実際に投資事業が増えてきました。2014年のホットリンク株売却という成果もありますし、歴史的に見てもオプトはたまにM&AやIPOなどのEXITで売却益を得てきています。
直近の決算資料では、ラクスルやジモティーが有力な投資先として紹介されていました。ジモティーに関しては45%取得のM&A気味な感じですが。よって、今後も2,3年以内に売却益が積み上がる可能性が高いです。奇しくも、ホットリンクはビッグデータ関連銘柄で、ホットリンク株が2014年の業績を救いました。
<総括:今後の伸びしろはほぼない>
本業の方針がイケてないので、いくら投資事業の売却益でアドオンしても、中長期的な成長は望めず、伸びたところで110%程度の成長率ではないでしょうか。投資観点で見ると魅力はないですし、転職先としても成長市場に取り組んでいる感がないので、お勧めできません。
セプテーニ:最先端の商材を上手く売る術で成長か
時価総額定点観測「TS40」で7カ月連続株価の伸びを記録し「セプテーニなぜか元気」が定型句化しましたが、決算資料を読むと元気な理由がわかりました。
<1:ネットマーケティング事業>
まずは最新の2016年1Q決算資料を一部拝借して抜粋します。
まず、オプトとは異なり季節要因関係なく右肩上がりの成長。
スマホ対応、ソーシャル関連の取り扱いに強みがあるという話は、実務ベースで耳にしています。2013年の記事時点でもFacebook運用に強みがあると記載がありますが、Facebookに限らず、グノシーなどのスマホインフィード広告や、LINEやInstagramの広告など、「最先端の商材」に早めに着手して、堅調に売上を伸ばしているのではないかと推測します。新しい広告メニューを試してみるなら、セプテーニに依頼してみるか。という流れが業界でもできつつあるのかもしれません。
この辺の商材ごとのセグメント紹介の記載が決算資料にあるのは、ブラックボックス化されているオプトとは大きな違いです。オプトはまだリスティング運用で消耗してるのかもしれません。
<2:マンガ事業はじわじわ伸びてる>
子会社のコミックスマートが提供するマンガアプリ「GANMA!」は図の通りPVとDL数共に伸びているようです。2016年1Qでは1.16億の売上。現時点では広告モデルのようですが、マンガは課金と相性が良さそう。
コンテンツはCGMで良い作品は連載化したりして、作家にも報酬が発生する仕組み。作家の商流は下記。
ちなみにDeNAのマンガボックスは2016年4月18日に1,000万DL突破のリリースを出していますね。1,200万DLあるcomico(NHN社)は年商100億超えている説もありますし、LINEマンガもありますし、マンガのプレイヤーは複数共存するモデルなのか、寡占が効くモデルなのか興味深いです。スマニューとグノシー、ジャンプとマガジンが共存するように、複数成り立つ領域ではあると思いますが、GANMA!は先行の3つのアプリほどのスケール感が出るのか。現時点では筆者には判断がつきません。
ちなみに、マンガゲットは買収してきたサービス。このように新規事業のエコシステムに取りこむことにより、PMIは上手くいってそうな印象を受けました。ただ、マンガゲットって買収前はもっと売上があった気がしないでもありません。実際どうなんだろうか。
<総括:セプテーニ、まだ伸びる。時価総額1,000億円狙える>
セプテーニは本業であるネットマーケティング事業が、最先端の商材をいち早く売り出すということで、オプトと差別化でき、顧客にも支持を得て、堅調な成長をしていると思われます。この傾向は当面続くと思われます。よって、業績が上方修正していく可能性もあるでしょうし、利益率も上がっていけば、時価総額1,000億円も見えてきます。決算資料を見て、投資判断としては「まだ伸びる。buyだ」と感じました。
先日、佐藤CEOと少しお話しする機会がありましたが、上場企業経営者ながら最先端の商材やスタートアップに対する感度が非常に高く、佐藤CEOの感性ゆえに、最先端の商材をいち早く売るという方針を実行に移せているのだなと感じました。僭越ながら、上場企業経営者ともなると、最先端の事例に実は疎いということが少なくありません。
事例としては、スナップチャットをダウンロードして試してみたインターネット系上場企業経営者はどれほどいるでしょうか。今時スナチャを試したことがないとか、インターネット業界で経営している立場としては、ヤバイと思いますよ。そういった点では、佐藤CEOはスナチャをやっているような方だと感じました。(もしやったことがなければ、申し訳ありませんw)
マンガの新規事業が当たるに越したことはないですが、既存のネットマーケティング事業の堅調な伸びを見るだけでも、まだ伸びしろがあると思います。広告代理営業の人を採用するなら、オプトよりセプテーニの方が今は市場価値が高そうですね。私が採用する立場なら、そう考えます。
結局は本業の自力で差がついていく
オプトとセプテーニの比較。PLインパクトが一番大きい本業の差が、結果として業績や株価の差に現れるということを、再認識しました。
二本目の柱の戦略は、オプトは投資、セプテーニは新規事業(特にマンガ)という違いがあります。短期的な利益はオプトの方が上がりそうですが、上場企業における投資事業での売却益狙いは本業が不調の時のリスクヘッジのようなもので、そこに頼ってはいけないと思います。
この二社の戦略を鑑みると、本業を伸ばしつつ、新規事業も立ち上げつつ、投資でキャピタルゲインも得るサイバーエージェントの手広さを再認識。海外事業とM&Aも上手くやれると、理想ではありますが。
以上、Umekingがお送りしました。