2019年1月の今だからこそ、市場サイクルを極める

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最近はnoteでのウメキワークスが主戦場となり、こちらの更新がめっきり減ってきました。気が向いたときに更新していきます。

正月早々ですが、2018年末あたりからマーケットの雲行きが怪しくなってきました。

私は色んな記事を書いてはきたものの、株式投資に関しては実際にプレイヤーとして参入したのはここ2年ほどで、様々な書籍を読んで、Kindleでマーカーを付けては、Googleスプレッドシートに書籍メモを蓄積してきました。

ちなみに、KindleはiPadで読む方が断然読みやすいので、まだKindle端末で読んでいる人がいたら、iPadで読むことをお勧めします。

話を戻すと、投資実績が短い私にとっては「市場サイクル」がグルグル回るという経験をプレイヤーとしてはまだしていません。新卒時にリーマン・ショックが起きましたので、その際の悲惨さは身を以って知っていますし、その際に所属した会社から裏切られたことが、自分のキャリア観(会社なんて絶対に信じてはいけない!)の醸成に大きな影響を与えました。

2019年、明らかにサイクルが変わりそうな気配があり、リセッション入りも噂される中で、特に投資家としてはどういったことを考えておくべきか。

それを学習する際に、非常に良い書籍がありました。「市場サイクルを極める」という本です。しかも、2018年11月と、つい最近の発売。

お値段もお高いながら、ボリュームが相当あるので、読了に6時間ほどかかりました。

本稿では、個人的に学びがあった箇所をいくつか紹介しますので、本稿を読んでからでも、この書籍を読む決断をするのは遅くないと思います。

読了に6時間かかる本を、3分程度の書評記事で読むかどうかの判断材料になるって良いですよね。私は時間があるので読んで良かったと感じますが、時間がないビジネスマンは無理して読まなくても良いかもしれません。

しかし、投資家、特に個人投資家は読んで損はないでしょう。6,000文字程度の記事になりましたが、参考になれば幸いです。

☆目次:記事の見出し

サイクルの見極めには「思慮深い投資家」が必要
底に「いつ達するのか」はわからない。じゃあいつ買うのか
リスクの正しい理解と、「人気」に注意
市場サイクルを見極めた上での「賢明な投資の定義」
あなたは優れた投資家か?4つのチェック項目

サイクルの見極めには「思慮深い投資家」が必要

大前提として、「市場にはサイクルがある」という話です。投資家なら理解できると思いますが、そんなことは頭ではわかっていても、その法則性に無感情に従えない場合が多いかと思います。

株価は「適正株価」でとどまることがほとんどありません。

サイクルには、極限から中心点へと戻り、そこを通過して反対の極限に向かう規則性がある。

引用元:P3369

鍵は、心理の振り子とバリュエーションのサイクルが今どの状態にあるのかを知ること。

そして、過度に楽観的な真理と、高すぎるバリュエーションを積極的に受け入れる姿勢から価格がピークに近い水準まで高騰しているときに、買わないこと。(場合によっては売る)

さらに、冷え込んだ心理とバリュエーションの低下でパニックに陥った投資家が、全般的に価格が低下しているにも関わらず売りに走り、掘り出し物を生み出しているときに、買うこと。

引用元:P3341

本書では「振り子」という表現で、投資家心理により企業の実態よりも株が熱することも冷めることもあると説きます。

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むしろ、適正株価でとどまることは、「振り子」という現象で考えると、一瞬のことです。非常に上手い比喩だなと感じました。

☆ブルマーケットの三段階プロセス

1.まず、並外れた洞察力に富んだ一握りの人が、状況が良くなると考える
2.次に、多くの投資家が実際に状況が良くなっていることに気づく
3.最後に、全ての人が状況が永遠に良くなり続けると思い込む

☆ベアマーケットの三段階プロセス

1.まず、思慮深い一握りの投資家が、強気相場の中にあってもそれがずっと続くとは限らないと認識する
2.次に、多くの投資家が状況が悪化していることに気づく
3.最後に、全ての人が状況が悪化の一途を辿ると思い込む

引用元:P3110、P3159

このプロセスを、ウォーレンバフェットは「最初が革新者、次が模倣者、最後が愚か者」と評したそうです。リターンを出すためには「愚か者」であってはならないわけです。

投資家はマーケット参加者と雑談することがあると思います。

それは実際の知人の場合もあるし、twitterやヤフーファイナンス掲示板を覗くこともあるでしょう。私は最近広瀬さんのMarket Hack Salonがお気に入りで、投資情報の参考にしています。

マーケットのサイクルが変わるプロセスを認識する際に、「誰を思慮深い投資家」とするか自分の中で定義しておくと良いと思います。

案外、思慮深い投資家だと思っていた人が、そうでもなかった場合もあります。過去の雑談の中から、「この人は思慮深そうである」という見極めをしていきます。雑談の中から、相場に対する自分なりの考え方を深めていくことが重要です。

私は残念ながら、まだまだ投資プレイヤーとしては思慮深いとは言えません。プレイはせずに企業分析だけしていた方が、感情が入らないので、客観的な評価ができていた気がします。

底に「いつ達するのか」はわからない。じゃあいつ買うのか

投資初心者にありがちな考え方として、市場サイクルの存在は理解していて「暴落した時に底で買えばいい」というものがあります。

理論上は当然そうですが、「底がいつなのか」を事前に予測することは可能なのでしょうか。多くの場合、不可能です。

いつ底に達したのかを知る方法などない。その時点を過ぎてからでなければ、底に達したと認識することはできない。 回復が始まる前の日というのが底の定義だからである。したがって、当然のように事後でなければ認識できない。

欲しい資産を最大限買うことができるのは、だいたいにおいて相場が下落している時だ。ナイフを掴もうとしない市場参加者が傍観している間に、降伏した売り手から買うのである。

だが、ひとたび相場が底に達して下げ止まると、当然のように売り手はほとんどいなくなる。そして、その後の反騰の時期には買い手が優勢となる。売り物は枯渇し、買い志望者は競争の激化に直面するのである。

引用元:P3824より中略して掲載

そして、これが回答。

底値に狙いを定めるのが間違いだというのなら、一体いつ買えば良いのか。答えは単純明快。価格が本質的価値を下回った時である。

おそらく、株価が下落している際に冷静にバリュエーションして本質的価値を算出している人はさほど多くないのではないか。

例えば、ファンダメンタルの先行きにさほど不安がなく、ネット企業のメディアセクター銘柄でPER20倍以下というのは「本質的価値」を下回っていると言えるのではないか。PER20倍切ればGO!という感じ。

上昇局面ではグロース投資の考え方が生きるが、下落局面ではバリュー投資の考え方が生きる。「本質的価値を下回る」は言い換えると「割安」な銘柄だ。

ただし、「本質的価値」の算出が難しい場合もあります。

例えば、SaaSのバリュエーションはいくらなら安いと言えるのか?PSR10倍とかが一つの指標ではありますが、PSRはPERほどは本質的な価値を表しているとは言いにくいのではないでしょうか。実際に、SaaS銘柄は下落局面では非常に弱いというデータを最近見かけました。サイクルが戻れば、力強く回復していましたが。

上場株の場合、株価に惑わされずに「本質的価値」をきちんと自分の中でバリュエーションできるか。その水準を下回れば、リスクが限定的で潜在リターンが大きい銘柄を買うことができる。こんな言葉もありました。

事態が好転すると判断するのにふさわしいタイミングがある。相場が低迷し、周りの誰もがただ同然の価格で資産を売り叩いている時がそうだ。

相場が過去最高の水準にあるときに、過去に一度も実現していない都合の良い理屈に飛びつこうとするのは危険である。だが、人はこうした過ちを犯してきたのであり、それはまた繰り返されるのだ。

引用元:P4654

リスクの正しい理解と、「人気」に注意

市場サイクルを理解する際に、最もセットで語られる言葉が「リスク」なのではないかと本書を読んで感じました。

「リスクとは何か」という質問が、学生時代のリーマン・ブラザーズの筆記試験にあったことを思い出します。

リスク(つまり、将来の動向に関する不確実性、そして悪い結果が生じる可能性)は投資を難しくする最大の要因。 従って、リスクを理解し、評価し、これに対処する能力が、優れた投資家のしるしであり、投資を成功させるうえで必要不可欠な条件の一つ。

引用元:P1639

投資リスクの最大の源は、リスクはないという思い込み。リスクに寛容な姿勢が広がること(あるいはリスクをとる投資家が強い心地よさを感じるようになること)は、その後の相場下落を示唆する有力な前触れ。

この点に気づき、そして慎重になることが非常に重要な時に、実際に気づくことはまずない。引用元:P1806

リスクというのは一般的には「何か危険なこと」と捉えられていると思います。しかし、株式市場において、多くの投資家が「リスク」と感じていることはなんでしょうか?

例えば、「人気銘柄に乗り遅れる」というのがあるかと思います。皆さんの記憶も新しい、2017年12月の仮想通貨バブルです。その後知り合った普段株式投資もせず、はじめて仮想通貨を買った女性は「リップル」を持っているケースが非常に多かったです。「リップル騰がってるよ!」という人気だけで買われた例ですね。私も若干買ってしまいました…

人々が価格のいかんに関わらず進んで投資しているときは、どう見ても冷静沈着な分析ではなく、感情や人気に基づいて行動しているのが常である。

引用元:3222

投資家に人気の高い資産を警戒すべきである。むしろ、不人気こそが買い手の友。

引用元:4485

人気が出てしまった市場に後から参入するのは「最初の賢明な人」の行為ではない。むしろ、「最後の愚か者」の行為に近い。

引用元:4561

人々が「感情や人気に基づいて」行動するというのは、仮想通貨バブルで皆さん体感があるはずです。

これらを組み合わせると、株式市場では「人気の高い銘柄ほどリスクが高い」とも言えるでしょう。人気銘柄ほど、リターン確保の安全圏が狭まり、下落リスクの方が高く、期待値的にリスク高まってしまいます。

市場サイクルを見極めた上での「賢明な投資の定義」

こういった投資が、サイクルを踏まえた上での「賢明な投資だ」という言及について、いくつかまとめました。

素晴らしい投資成果は質の高い資産を買うことではなく、契約条件が妥当であり、価格が安くて潜在リターンが大きく、リスクが限定的な資産を買うことによって達成される。

このような条件は、信用市場があまり熱狂的な状態ではなく、どちらかというとサイクルの厳しい局面に位置しているときに整いやすい。 おそらく信用市場の扉がぴしゃりと閉ざされた局面にあるときに、他のどんな状態にある場合よりも、掘り出し物は手に入りやすくなる。

引用元:P2211

賢明な投資の方法は一つしかない、投資対象の価値を算出し、それ以下の価格で買う。価値を数値化し、割安な価格で買うことにこだわらなければ、賢明な投資はできない。 価格と価値の関係性以外の概念に基づく投資行動は、全て合理性を欠いている。

引用元:3209

一番お買い得な掘り出し物は、たいていの場合、発見されていない、あるいは見下されているものの中から見つかる。

引用元:4362

本書全体を通して、というか市場サイクルの考え方に沿って捉えると、「底値に近い価格で買って、高値に近い価格で売る」のがリターンの最大化になりますし、実際にそうです。

これは、言葉を変えると、上昇局面ではグロース株の考え方が適用でき、下落局面ではバリュー株の考え方が適用できます。

あなたは優れた投資家か?4つのチェック項目

「優れた投資家シリーズ」として、本書で述べられた「優れた投資家は〜」的な話をまとめます。あなたは優れた投資家か?というチェック項目としても有用でしょう。

優れた投資家とは、箱の中にどのようなくじがあるのか、ひいては、そのくじ引きに参加する価値があるのかどうかを感知することに秀でた人である。 言い換えると、優れた投資家は(その他の人々と同じく)将来、何が起きるのかを正確に知っているわけではないが、将来の趨勢(すうせい)を人並み以上に理解している。

引用元:264

優れた投資家は、落ち着きがあり、理性的で分析力に長け、客観的で感情に振り回されない。だから、投資のファンダメンタルズと投資環境の分析に基づいて行動する。 投資対象となりうる資産一つひとつの本質的価値を推計する。

そして、価格が現在の本質的価値を下回っている資産と、将来に本質的価値が上昇する可能性のある資産を買う。 どちらも現在の価格で買うことで、利益が生じると見込めれる資産である。

引用元:1478

優れた投資家は行き過ぎた心理状態に同調せず、従って、こうした振り子の動きには従わない。私が知る卓越した投資家の大多数は、もともと感情に振り回されることのないタイプの人物だ。 こうした性質がその成功をもたらしてきた重大な一因だと私は思っている。

引用元:1515

つねに正しいのは自分で、市場が間違っているなどと思ってはならない。そして、際限もなく、また事実と根拠を見直すことのないままに保有し続けたり、買い増したりしてはならない。そのように振る舞うのは思い上がり。

引用元:4377

「振り子に従わない」というのは、言うは易し行うは難しで、「落ちてくるナイフを掴むな!」という考え方と、逆張り的な発想は矛盾します。

落ちてくるナイフを地面スレスレで掴めば、非常に美味しい未来が待っていることもある。しかし、そんな急スピードで落ちてくるナイフなど、心理的にそうそう掴めないw

本書を読んで、自分なりの気をつけたいなとか、実践に移したいなという点は主に上記でした。投資本は、読み流すよりも、その書籍から学んだ投資手法を1つか2つでもいいので、実戦してみることが良いと思います。

投資初心者には多少難しい書籍かもしれませんが、市場サイクルというマクロトレンドの考え方を養うには大いに参考になるかと思います。



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