マネーフォワードの現在の株価は割高なのか?

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前回のGameWithに続いて、ネット企業分析サロンの中身紹介第二弾です。

今回は、多くの読者が気になっているであろうマネーフォワードについて。

MF

ヤフーファイナンス
2018年11月期2Q決算説明資料

マネーフォワード:企業価値と業績

☆株式
時価総額:952億
株価:4,935円(2018/8/3)
PER:NA
PSR:21倍

☆業績実績(2017/11)
売上:29億(YonY+88%)
営業利益:-7.9億
当期利益:-8.4億

☆業績予想(2018/11)
売上:45億(YonY+55%)
営業利益:-6.6億
当期利益:NA

上記、決算資料より抜粋。

株価に対する梅木の見解

まず、まだ営業利益が出ていないかつSaaSなのでPSRでしばらく見るのが妥当。黒字転換したとしても、売上YonYが20%以上を確保できていればPSRで見ていき、利益フェーズに入ればPERを多少気にする感じだろうか。

SaaSの上場企業のPSRは10-15倍程度が多く、21倍はやや過熱感がある。

今期も予想売上YonYが+55%となっているが、この成長率ををいつまで高めに維持できるかがポイント。ここが鈍化すると株価も伸びづらいのでは。

☆参考:時価総額推移
公募:283億
初値:542億
その後ほぼ初値を割ることはなく
年初来高値:1,160億(株価で6,380円)
2018.8.3:952億

2017年9月のIPO後、VC比率が30%から2%に低下し、機関投資家比率が30%となったというスライドがある点は珍しい。こういったIRはわかりやすく、自分で調べてる手間が省けるので親切である。

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機関投資家が33%入っており、仮に安定株主比率が高いと、流動性が下がり、株価が高止まりしやすいのかもしれない。ここ数ヶ月の出来高は安定して10〜20万株前後となっている。VCリスクは上述の通りほぼなくなった。

クラウド会計会社で終わるか、さらなる進化があるか?

・市場
→家計簿よりはクラウド会計の伸び代があると思われる。だがそこに捉われず新規事業をたくさん仕込んでおり、事業資産をベースとしてどれだけ上手く新規事業を立ち上げられるかが今後最大のポイントと思える。

・事業資産
→PFMによる個人家計簿データと、MFクラウドによる中小企業会計データ。このデータをフックにした事業多角化が鍵。出発点は家計簿と会計ソフトだが、総合FinTech企業に進化する可能性あり。

・新規事業
→「MF KESSAI」でファクタリング開始(2018/5)とあるのが興味深い。事業資産である中小企業にニーズがあり、手数料でのマネタイズも可能に。

「マネーフォワードファイン」によるAI融資審査も開始。AI融資を謳うスタートアップをたまに見かけるが、ゼロから顧客を開拓するのと、マネーフォワードのようにすでに中小企業が顧客である状態からアップセルするのと、どちらが容易かは自明。

・KPI
→当面はMFクラウド有料企業社数が最大のKPIとなるが、ここは非開示。ウメキワークスで上場時想定では2万社前後と予想したが、直近は4万社強に伸びている可能性あり。YonY+89%なので2倍強になっていてもおかしくない。

 競合状況と懸念事項:PSR21倍をどう見るか

☆競合
→freeeの上場が噂されるが、新規事業の打ち手の数の多さや速さはマネーフォワードが上だと感じる。ド競合となるのはクラウド会計市場だが、はすマネーフォワードはその先を見据えた動きが多い気がする。シェア争いをしつつも、その先の動きが重要になる段階に来ていると思われる。

PMF(家計簿)ではZaimやマネーツリーが競合だが、マネーフォワードの課金ユーザー15万人に対抗できる規模ではないと思われる。筆者はマネーツリーを3年以上愛用している。

☆懸念事項

・株価
→PSR21倍を正当化するのは、売上成長率の高さが一番で、次にクラウド会計企業から総合FinTech企業へ進化するシナリオへの期待か。おそらく機関投資家は売上成長率の高さと、事業資産を武器にした次の展開に期待をしているののではないか。

だが、売上成長率が企業ガイダンスを下回るとピークアウトのリスクあり。

☆海外ベンチマーク:Intuit

米国には老舗ですがIntuitというクラウド会計サービスなどを運営する企業があります。私が4年前にマネーフォワードを取材した際にも、取材時に辻さんが名前を挙げていたので、おそらくベンチマークされているのではないかと思います

☆Intuit

売上:5,790億
営業利益:1,562億
営業利益率:26%
時価総額:$52.63B(5.84兆円)
PSR:10.08倍
PER:45倍
Yahoo Finance:リンク

6兆円近い時価総額がありますが、売上はマネーフォワードの通期予測の100倍以上あります。マネーフォワードのPSR21倍に対して、Intuitは10倍。

やはり、マネーフォワードの過熱感はファンダメンタル的には否めませんが、今後の展開をどう見るかがポイントなのと、Intuitの1/10くらいの規模は取れると考えるのも一つの見方です。

Intuitが日本進出する際は、マネーフォワードかfreeeを買収するシナリオがあるのか、独自に立ち向かってくるのかは興味深いですね。

あなたはマネーフォワードをどう捉えるか?

上記の見解を元に、現在の株価をどう考えるか。

売上も伸びるとPSRを20倍台を維持できるが、長期的には10倍台に収斂するものであり、指標としてPSRはPERよりボラティリティは低い。

しかし、すごく強気に考えると、短期的に株価が多少下落することはあれども、3-5年で時価総額3,000億に届くのはあり得るかもしれません。

MFクラウド的なSaaSは解約率低いでしょうから、先行投資をやめればいつでも利益を出せるし、ある程度の営業利益率には持っていけるはずです。

利益を出さずにどれだけ売上をスケールさせてシェアを高めたり、新規事業を立ち上げられるかがポイントに思えました。

現状の株価からは期待が先行していることが伺えますが、アマゾン並みの利益を出さないけどシェアや他領域の拡張のために投資し続ける姿勢を、株主が理解して支持すれば、今後も株価は伸びていく余地がありそうです。

おそらく、読者の中でも少なくない方が、現状のマネーフォワードの株価は実力値以上に高いと思われているかと思います。事実、ファンダメンタルを見れば割高です。

しかし、今後のクラウド会計市場およびその周辺領域の市場の成長と、その中でマネーフォワードが占めるプレゼンスを想像すると、中長期的には伸びしろがありそうに思えます。

短期で見るか、長期で見るかという時間軸によって、マネーフォワード への個人投資家の見解は異なってくるでしょう。

我々は世間話的に株価を語るとき、「高いね」「安いね」と前提条件を捉えず、その瞬間だけ切り取って語ってしまいがちです。その点は注意しなければなりません。

読者のみなさんはどうお考えでしょうか?ぜひtwitterやNewsPicksなどでご意見ください。このような議論を、ネット企業分析サロンでは行なっております。

ネット企業分析サロン



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