久々に時価総額500億円突破のじげん。M&AとPMIが凄そう

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じげんの第一次中期経営計画の資料がわかりやすいと、一部界隈で話題。ネット業界の人なら一度は読んだ方が良いです。最後にとても親切に「用語集」とかまで入っていますから。

ぶっちゃけ、じげんって何やってる会社かよくわからなかったじゃないですか。業界外の人に「何やってる会社なんですか?」って聞かれても、求人のア、アグリゲーションとか…って言っても「?」という顔をされるのがオチでした。転職EXなどのアグリゲーションメディアを中心に伸びてきたことはたしかなのですが。

決算資料や中期経営計画には「DB」「UU」「CVR」「ARPU(コンバージョンあたり単価)」にまでブレイクダウンして解説されていて、その点がかなりわかりやすかったですね。普通のサイトとアグリゲーションサイトの最大の違いは「DB」であり、提携によるDBの最大化がサイトの競争力を向上させます。

通常のメディアとアグリゲーションの違いはあれども、今後は求人と不動産を中心に頑張りたいということで、事業領域はリクルートやリブセンスと同様です。ちなみにじげんもリブセンスも通期売上高は50億円とほぼ同じなのですが、利益率がまったく異なります。その点は本稿の最後にコスト構造比較の紹介を入れます。

Umekingが個人的にじげんのここが凄いのではないか?と感じた点を、中期経営計画を抜粋しながら解説します。

1:サプライチェーンの垂直統合を意識

スクリーンショット 2016-05-17 10.55.42最近個人的な関心でもある「垂直統合」。サロンでも話題にしたところ、國光さんには「さほど重要ではない」と一蹴されましたがw そんなことありません。垂直統合化できた企業が利益率を上げて中長期的に繁栄していくと僕は考えています。この図でいうと、コンテンツが作れる川上のプレイヤーを買収したいと考えているのかもしれません。P12にはこうあります。

サプライチェーンの垂直統合:情報の再構築やユーザー集客への特化から、流通、コンテンツ生成までの機能を拡張して内製化し、新たな付加価値の創出を目指す。

上記のP11、よく読み返して欲しいのが、「ユーザーとの接点が多い再構築レイヤーからコンテンツ生成に進出できている企業は少ない」という話。NewsPicksがオリジナルコンテンツやってるみたいな話で、プラットフォーマーからパブリッシャーに寄っていく、プラティッシャーのことを指しているのかもしれません。それがニュースメディア業界ではなく、求人や不動産領域という話。

ただ、それってアグリゲーションのクライアントであるDBを内製するという話になるのかな。

2:M&AとPMIがすごい

スクリーンショット 2016-05-17 11.10.31上場来M&Aに積極的なじげん。一番大きい案件はリジョブの19.8億円でしたが、もう7件もやっているとは。これまた黄色文字で記載がありますが「割高なバリュエーションを回避!」w

買い手側としては割高なバリュエーションを回避するのは超重要です。被買収側は、「直近の株主が〜」とかいって、バリュエーションを上げる交渉をしてきますが、買い手側としては被買収側の既存株主のリターンなど知ったことではありません。その事業にどれくらいの価値があるのか、現時点でいくらなら買収価値があるのかをフラットに判断する必要があります。

割と当たり前な話ですが、増資の相場観と照らし合わせたり、既存株主のリターン確保を前提としたり、「前回ラウンドから売上2倍になってるからバリュエーションも2倍!」とかアホなことを言い出す輩もいます。

じげんは今のところそういったバブったスタートアップではなく、地味な企業をスタートアップほど割高ではないバリュエーションで取得して、その後PMIでゴリゴリ伸ばしているイメージがあります。比較的安価で取得して、バリューアップするという考え方は、一時期流行ったPEファンド的な手法と言えるでしょう(念のため補足すると、じげんはバリューアップ後に市場に売却するわけではないと思いますが)。

スクリーンショット 2016-05-17 11.34.21実際の売上高や営業利益ではなく指数なのですが、PMIで実績が出ていることは確かです。PMIを前提としたM&Aを仕掛けるのでしょうね。今後は企業買収のみならず事業買収もありそう。低価格での事業買収はイードがお得意とするパターンですね。被買収企業よりじげん社員の方がスペック高い場合が多いでしょうし、事業買収の方が良いのかもしれない。

じげんとリブセンス比較:リブセンスの人件費が約2倍

スクリーンショット 2016-05-17 12.13.52気になったのでコスト構造を調べました。売上総利益率ではリブセンスが上回るものの、人件費のインパクトが大きく、営業利益に差が出ているといえそうです。広告宣伝費もリブセンスは四半期で見ると圧縮傾向にありますが、人件費が膨らんでいます。

スクリーンショット 2016-05-17 12.12.462015年4Qが微減以外は増加トレンド。2015年3Qからはwaja買収で膨れている側面もあるのでしょうが。正社員と派遣・アルバイト比率は見つけられませんでしたが、全て合算すると448名とじげんの社員数の2倍強。そりゃ人件費も2倍近く掛かります。

正社員の平均年収でいうとリブセンスの方が高いというデータもググったら出てきましたが、推測するにジョブセンスとかでアルバイトをたくさん使っており、そういった人件費が重くなって利益が出にくい体質になってきているのだと思います。

比較した上でじげんの平均年収が決して安いわけではないとも感じました。じげんの方が人を増やさずにオペレーションを効率化することで、利益確保しやすい体制を整えているのかなと。主軸がアグリゲーションメディア(DB取ってくるのが肝)、一次メディア(求人情報を獲得するのが肝)という構造上の違いなのでしょうね。リブセンスもSEOが強かった時代はここまで人件費率が高くなかった気がするのですが。

以上です。今後のじげんの垂直統合を睨んだM&Aによる企業価値向上を楽しみにしております。じげんの中期経営計画の「Protostar」というネーミングには「?」と思ったよということは、界隈を代表して主張して終わりとさせていただきます。

ちなみに私も主にM&Aのバイサイドのアドバイザリーやっておりますので、売却案件ある方はお気軽にご一報ください。一報で、売却したいというセルサイド側のアドバイザリーをやる場合もございますので、そういったニーズがある方がいらっしゃれば、私のFacebook宛までご一報いただけますと幸いです。



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