スタートアップに年収1,000万円を要求する、無邪気な栽培マン

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事件です。

東京○○区のスタートアップ企業○○社に、入社希望の男が社長面接のため来社。

大手企業に現在勤務していると話す男は、スタートアップで通用するスキルも持たずに、面接で「年収1,000万円以上欲しい」と主張。さらに、住宅手当の提供も要求した模様。

男の意図としては、現在勤務先の年収を担保せよという、いわゆる「現職考慮」を主張したに過ぎないと考えていると思われる。

一方の採用する立場であるスタートアップ社長の見解としては、役員クラスでもない現場の人間に入社時からいきなり1,000万円の給与というのは全く想定しないと思われる。

この手の双方の思惑が全く食い違っている「事件」は今回に限らず、港区、渋谷区に止まらず、五反田付近でも顕在化されていないだけで、発生していると想定される。

この手の「無邪気な栽培マン」による、「スキルもなしに年収1,000万円以上を転職時に要求する」という現象は、果たして罪に当たるのでしょうか。

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この無邪気な栽培マンには、まだまだ余罪がありそうです。

以上、スタートアップ採用の現場から、TheStartupがお送りしました。

スタートアップでの年収相場はもっと語られるべき

はい。こんな話が、スタートアップ経営者の知人から寄せられまして。

「俺の代わりに社会に訴えてくれ!」感を嗅ぎ取ったので、記事にしてみました。

この手のスタートアップへの転職問題というのは、本誌でも過去に度々扱ってきた記憶があります。

最近誰かのツイートで見て引用元が思い出せないのですが、「現職考慮などではなく、あなたは現在これくらいの価値だから、年収○○○万円を提示します。という方がイケてる」という話を見かけて、納得しました。

スタートアップの現場と、大企業出身の栽培マンの想定には大きな乖離があります。まず、そのことにすら思いが回らない程度の想像力しかない人は、スタートアップへの転職を志向すべきではないでしょう。

とはいえ、スタートアップとして採用する側は採用力がない場合も多々あるため、求職者の報酬水準を「現職考慮」で飲んでしまう例も少なくないかと思います。

スタートアップ企業の社員の年収問題は非常にセンシティブなトピックかと思います。

ゆえに、もっと様々な媒体やSNSで議論がなされて、相場観を形成していくことが大事かと思いますので、皆さんも是非この記事にコメントなどいただいて、積極的にご見解を示してください。

まず、スタートアップの立場としてはよほどスケールしている企業でない限りは、お金がありません。将来の取締役や執行役員候補でもないと、年収1,000万円以上を採用段階で提示することはほぼないと思われます。

例外としては、非常にスキルが高いエンジニアで、CTO候補じゃなくとも、エンジニアならあり得そうです。

インターネット企業からスタートアップへの転職で、役員候補でもない平社員スタートの人が年収1,000万円以上を希望することはないので、この問題は起きません。大抵のインターネット企業の平均年収はせいぜい数百万円後半だからです。

年収1,000万円以上を「現職考慮」として希望するのは、外資金融、外資コンサル、総合商社、銀行、メーカーなどに現在勤めている栽培マンかと思われます。

IBD出身でCFO待遇での転職ならまだしも、スタートアップのなけなしのお財布から、それ以外の人に年収1,000万円を払う価値を感じないですよね。

セールスにしても、モルスタ出身を1,000万円で1人雇うなら、楽天出身を500万円で2人雇って、できそうな方を給与アップさせていく。と考える経営者の方が多い気がします。

よって、「よほどの価値」がない限り、スタートアップへ入社する際に年収1,000万円以上を要求するのは、経営者視点で見ると「勘違い甚だしい」ということであり、知人の経営者が憤って私にメッセージを送ってきた気持ちも、よく理解できます。

栽培マンは是非「価値主義」についての記事を読んで、大いに反省してください。

価値主義を真に理解していますか?(TheStartup)

スタートアップに転職して平均年収2,000万円を得る確率

入社後に仕事がめちゃくちゃできれば給与アップの可能性もありますが、雇用されている立場であるので、決定権は雇用主側にあります。よって、給与アップを過度に期待するのはお門違いな話で、稼ぎたければ独立した方が良いですね。

相場的に、栽培マンとしてはスタートアップでは稼げてもせいぜい年収1,000万円ちょいです。

入社した企業が運良くIPOしてかつ経営者がストックオプションを配ってくれている人だと、行使したら1億程度入ってくることもあります。

しかし、「入社した企業がIPOする」確率は高くて10%程度。「かつ経営者がSOを従業員に配ってくれている企業」は40%程度と見積もると、「スタートアップに従業員として入って、SO行使で1億キャッシュインする確率」は3-4%程度です。

しかも、その行使までに5-8年かかるわけで、その間の年収を仮に800万円とかだとすると、(800万円×8+1億円)/8=年収2,000万円ちょいです。

一般社員として、スタートアップに転職して年収2,000万円を達成する確率は3-4%です。

給与的な期待値でいうと、外資金融の場合は転職しない方が懸命でしょう。

しかし、メガバンクとかは仕事自体がなくなっていっているので、転職しないと食えない可能性がどんどん高まっています。

スタートアップ社員、う○きくんの事例

最後に具体的なイメージを持ってもらうために、事例紹介をしましょう。

社会人3年目のう○きくんは、スタートアップ企業ジ○ティに入社することになりました。

う○きくんの年収は「前職考慮」ということで、456万円でした。

他の社員も前職考慮で年収が決まっている場合が多いと、入社後に耳にしました。

ところが、明らかに仕事で価値を出していない、アクセンチ○アから転職してきたおっさんがいました。

う○きくんは当初は価値を出すべく頑張っていましたが、元アクセンチ○アの年収が900万円くらいらしいと聞きました。

明らかに元アクセンチ○アよりは成果を出している自信がありました。もはや、元アクセンチ○アはスタートアップなのに窓際族にしか思えなかったのです。

そこでう○きくんは社長に直談判しました。「私の給与を上げるか、元アクセンチ○アの給与を下げてください」と。

社長は「年俸制だからそれはできない」と言いました。

それだけがきっかけではありませんが、う○きくんはやる気をなくしました。

う○きくんは入社後半年で退社しましたが、元アクセンチ○アはう○きくんの1ヶ月前に退社しました。

社長の年収も「現職考慮」で当初は1,000万円強と風の噂で聞きました。

スタートアップ企業ジ○ティは、そろそろ上場するのではないか?という噂もあります。SOがどれくらい付与されているのか、楽しみです。

う○きくんは退社後は、当時の年収の15倍以上を稼ぐ年もあったようです。

「現職考慮」と「給与情報の秘匿」を疑ってかかるべし

なかなか興味深い事例ではありませんか?

これはどこまでが本当の話なのか…w

このケーススタディーを振り返ると、独立してからいくつかの過ちがあったことに気づきました。

まず、う○きくんは年俸制なのに、更新タイミングではない時期に年俸アップを主張している点です。

これは、経営者からするとあり得ないなと感じます。しかも、立ち上げ期で会社も儲かっているわけではありません。資金調達で奔走していて、苦しい時期です。

この教訓から、う○きくんは独立後に下手に顧客と年間契約などは結ばず、半年契約などにして、価格改定をできる機会を設けるようになったそうです。

う○きくんの主張はお門違いだったわけですが、心情的には窓際族の元アクセンチ○アより給与が低いのは耐えられないという気持ちは今でもよくわかります。

これは、企業側の「現職考慮」の年収で雇ったという点に問題があったと感じます。

本来的には、誰がいくらもらっているかなど、社員同士は知りませんが、風の噂で耳に入ったりはするものです。

よって、給与格差はどれだけ企業側が秘匿しているつもりでも、情報が社員に漏れるものと思って設計した方が、良いのではないかと思います。「給与情報は漏れないはずだ」と思っている経営者がいたら、それはそれで傲慢な考えではないかと思います。

経営者側は、求職者側の過去の経験などのもとづいた期待値を元に、給与を決定する場合が多いため、年収設定が「現職考慮」になりがちである点は致し方ないかと思います。

しかし、本当に「それだけ」で良いのでしょうか。

30代の大企業勤務の方は現職年収1,000万円超えも珍しくないでしょう。しかし、彼らを経営者視点で労働力としてみた時に、必ずしも価値が高いわけではありません。

もちろん、大企業出身の方でも自ら仕事を作れるとか、何かしらのスペシャリティがあって、スタートアップに参画してすぐに価値を発揮できる方もいます。

しかし、総合職系栽培マンがスタートアップで発揮できる価値など、大抵の場合はたかが知れています。

33才三井物産社員年収1,200万円と26才楽天社員600万円なら、事業内容にもよりますが、後者の方がパフォーマンスが良い場合も多々あるのです。

よって、20代にとってはまだ求職者側も転職価値があるし、採用側も低コストで良いので、お互いにメリットがあります。

しかし、30代の年収1,000万円栽培マンはねえ…

経営者側からすると「かなり扱いにくい存在」であることには、間違いないのではないでしょうか。よほどのスペシャリティがあれば別ですよ!

大した価値がない、扱いにくい人材が「御社に転職するなら現職考慮で年収1,000万円希望です。あ、住宅手当も現職では月10万円ありますので、5万円は最低でも欲しい」と譲歩してます感満載で言われると、経営者は殺意を覚えるレベルでしょうねw

今回の「事件」に対して、みなさんどうお考えでしょうか?

ちなみに、このような栽培マン思考を正すことを啓蒙するために、下記の「脱栽培マンサロン」を展開していますw

栽培マンは単純に「スタートアップの給与テーブルの相場を知らないだけ」で、転職全般に「前職考慮」が通じる、と勘違いしてしまっている場合もあるだろうと思い、悪意を持って「無邪気な栽培マン」とタイトルでは称しておきました。

ちなみに自営業だと年収は自分で決めるものなので、年収の悩みがない世界ですよ。



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