最近、事業も人も、カテゴライズできぬモノに価値を感じ始めている。
カテゴライズできぬモノは意味不明とも言い換えられる。
大抵の場合その意味不明さは、複数領域の顔があることに起因する。
企業にはコングロマリット・ディスカウントという言葉があるが、特に時価総額1,000億未満の企業においては、(複数領域を手がけることによる)意味不明さがむしろ実態価値よりも評価され、プレミアムが乗っている現象が少なくないように思える。そう、メタップスみたいに。
このような「意味不明プレミアム現象」が起きるのは、それを評価するものが「自分には理解できぬ何かがあるのではないか」と勝手に思い込み、過大評価しがちになるからではないか。
これは恋愛も同じで、ミステリアスで様々な顔を持つ捉えどころのない存在になぜか惹かれることに近しい。
意味不明「プレミアム」はその対象者からすると、実態価値よりも高く見せることができるという点では、様々な交渉ごとを有利に運びやすくなるが、自らがプレミアムを演出できているかに自覚的か否かでその賞味期限は変動しうる。
スタートアップ市場では今なら「動画」「AI」はプレミアムが付きやすい。恋愛市場であれば「女子アナ」プレミアムはあるだろう。
購買者がその「プレミアム」に惹かれているのか、「実態価値」に惹かれているのかを、売り手はよく注視する必要がある。買い手によって期待値が異なるから。
「意味不明プレミアム」はやや皮肉めいた表現でもあるが、それ以外の「単純な存在」との価値の乖離は今後ますます大きくなるだろう。「単純な存在」はナンバーワンプロダクトでなければ、生存確率がどんどん低下し、相対的な価値は下がっていく。
単純な存在の対義語は簡単にいうと複雑な存在。様々な顔を持つ例を、紹介していこう。
複数領域手がけられるプレイヤーが最強になる?
FacebookはFacebook以外にもInstagramやオキュラスなどを買収し、コミュケーション領域を幅広くカバーしようとしている。Amazonはただの本屋から月額を徴収してエンタメを提供するようになったり、AWSという高利益事業も手がける。Googleも検索エンジン事業のみならず、自動運転などにも乗り出す。Appleがコンピューター領域からスマホという最初は意味不明と思われたものを始めたことは今更指摘するまでもない。
日本でいうとソフトバンクは通信キャリアであり投資会社である。個人でいうと高城剛は映像クリエイター、ドローン事業関係、メルマガ発行者など。木村新司はグノシー大株主、Anypay代表取締役、スタートアップへのエンジェル投資家などの顔を持つ。
かつては単一領域に特化したほうが良いという説も耳にしたが、よほどのナンバーワンプロダクトを保有する米国のBIG4ですらそれに胡座をかかずに複数領域の展開を進める。しかも、スマホやVRなど、初期は本当に理解されない意味不明なものに参入してきた。
複数領域の事業を手がけることによる副産物もある。
ペンとアップルを合わせると、アッポーペンになって爆発的ヒットが生まれたように、アナロジー思考がブレイクスルーのヒントになる。複数領域に通じていることでコネクティング・ドッツを誘発しやすくなり、当該領域の素人目戦からの発想で、思わぬ価値を生み出すことができる。
明確な軸を持った上で、少し未来を見据えた複数領域を手がけていくと、意味不明プレミアムを演出しやすくなりつつも、価値のベースはあるので、少しプレミアムがついたとしても、後から実態価値が追いついていくはず。
意味不明プレミアムの見極め方と実態価値算定
昨今の「意味不明プレミアム」がついたスタートアップの最たる例としては、未上場で時価総額5,000億のMRデバイス提供予定のMagicleapではないだろうか。Magicleapの世界観が実現すれば本当にすごいと思うのだが、プロダクトがない現時点ではプレミアム込みの価格と言わざるを得ない。
意味不明プレミアムが割高か否かを見極めるには、その企業や経営者、人材の過去実績から、「実現力があるか否か」を見極めると良い。いくら面白そうな意味不明なことを言っていても、井口さんに投資するまともな投資家はいないが、木村さんは過去実績が明確なので、多少意味不明と思われたとしても、資金調達は容易であろう。
個人の例として、「女子アナ・プレミアム」を掘り下げてみよう。
普段テレビで見かけることからも、相手が「メディア・マジック」にかかり、実態価値以上に勝手に感じてしまうことがある。しかしながら、彼女たちは数万倍の倍率を勝ち抜いた知性と美貌を有し、更に日々テレビの前で人前にさらされる仕事をしていて美意識が高いことからも、相当に高い「実態価値」を保有している。
一見、プレミアムがついているように見えるが、逆説的に考えると「実態価値」との乖離はほぼなく、実態価値が高いがゆえに女子アナという狭き椅子に座っているのである。「女子アナ・プレミアム」と「スタートアップ・プレミアム」は構造が異なるのだ。
よって、スタートアップに不当に高いバリュエーション(実態価値からの相当な乖離)はあるが、「女子アナ」はプロダクトの性質上、バリュエーションの乖離はさほどないというのが、私の仮説である。スタートアップに例えると、プレIPOラウンドくらいの質は担保された状態といえる。
「割高感」を感じて女子アナ市場での戦いにひよる男もいるが、その高いバリュエーションに見合ったものを提供しよう(自分自身がそれに足り得る人物か、もし足りなければ+αで何か埋めるのか)という心構えがあるか否かが、大切である。何を言っているんだ俺は。
複数領域ではなく単独としての意味不明さ
上記では「意味不明さは複数領域手がけることで醸成されやすい」という旨の話をしましたが、複数領域手がけることは必須条件ではありません。単独としての意味不明さというのももちろん存在します。複数領域手がけている人の方が、意味不明さを演出しやすいというだけです。
意味不明な存在=オンリーワン人材=複数領域の掛け算で生まれる、という方程式が一つ成り立ちます。この記事で言っていることと同じです。
それでは複数領域掛け算していないのに、意味不明とは一体なんなのか。こういう存在にこそ最も今関心がありますし、プレミアムも付きやすいのではないかと感じます。
複数領域手がけていると単一カテゴリーにカテゴライズされにくく、オンリーワン人材に近づけるのはロジック的に容易に理解できますが、ごく稀に単体領域なのに意味不明な人材がいます。
私は美術には非常に疎いですが、楽園のカンヴァスという本を読んだ限りにおいては、「ルソー」とかはそういう存在といえます。現代においては、ある意味「イケダハヤト」はそうなのかもしれません。
イケダハヤトと梅木雄平を比較すると、単体としての意味不明さがイケダハヤトであり、複数領域としての意味不明さが梅木雄平といえます。
私は主に様々なB2Bのキャッシュポイントを創出し、一見イケダさんと同じようにサロンとnoteをやっている人にも見えるのですが、東京カレンダーであったり、M&Aアドバイザリーであったりという複数の顔を有しています。我々2人を同じ生物だと見做すのは、表面的にしか物事を捉えられていない証拠であり、栽培マンの踏み絵としては良いでしょう。
複数領域手がけるがゆえの意味不明さは理解されやすいですが、単体領域での意味不明さ、イノベーションは理解されにくく、芸術家も死後に評価が高まる人が少なくないと聞きます。
複数領域手がける人よりも、単体での意味不明さを創出できる人の方が、希少価値が高いと私は思っており、羨ましくもあります。
意味不明さ=普通ではない、ということで、これはビジネスマンや芸術家に限らず、恋愛でも時折そういう存在を見かけます。単体とし意味不明な女性。そういう人は大抵なんらかの領域の芸術を嗜んでいる方な気がします。意味不明さの創出と芸術は密接な関係があるというのが、私の仮説です。
ふう、なんとかまとまった。1回同じテーマで記事書いたんですが、ゼロから書き換えましたw