客は、美味しいストーリーを食べたがる。仮にその肉が、本当は不味くても

Pocket


以前から、外食で食べる肉って、そんなに好きじゃなかったんです。グルメ系の仕事をしている立場柄、「ここが不味い」とは表立っては書けないのですが、「明らかに胃もたれする焼肉屋」とかあるんですよね。

昨日、僕が好きで一人でも行く京都の某ステーキ屋さんに一人でランチを食べに行ったのですが、お話を聞くと、ビタミンBを除いた肉を牧場で飼育して売っている肉が最近多く、そういう肉に限って、美味しくないし、値段と比例しない。むしろ、無駄な霜降りが多い肉の方が高くなっている。とのこと。熟成肉ブームも同様で、不味い肉なのに熟成がキテる!とか言って売っちゃってると。

「メディアがそういうこと書くから、そのストーリーを客が信じて食べちゃうんだよねー。」

と言われ。僕、東◯カレンダーのものですって、言えなかったですよ。恥ずかしくなっちゃって。

外食で肉食うと胃もたれすることから。「焼肉かねこ」はもたれないんだけど(だからリピートしているのですが)、高級ステーキ屋もしっくりこない。自分がさほど肉が好きじゃないだけかなと思っていたのですが、京都のこの店のステーキは大好きなんですよね。

それって、今までうまい肉を食べていたわけではなくて、マーケティングされた肉を食べていたからであって、マーケティングされた肉の不味さを舌では気づいていたものの、「あの店、不味くないですか?」などと答え合わせする機会もあまりなく、「うーん、自分だけあまり美味しくないと感じていたのかも」と無意識に思ってしまっていたというか。

weak

僕自身の舌がどうかは置いておいて、一般消費者の誰もが「美味い不味い」を認識できるものではなく、あくまで「その人が食べてきたものの中での相対的な美味いか不味いか」をみんな言っているだけなんですよね。

なので、ストーリーさえ上手くて、美味そうに見せることができれば、さほど美味しくないものだって、ユーザーは勝手に美味しいと思ってしまう。(もしくは「こんなに流行っているものを不味いというだなんて、自分空気読めない奴と思われるから、そんなこと言えない)

近年の東京グルメなんて、美味いと言われているストーリーを読み、それが美味いかを確認するために、食べに行く。ストーリーで美味いはずと思い込んでしまうことや、金額が高いことによるサンクコストバイアスが働き、「美味いはず」と思い込んでしまうこともあると思う。

食の趣味など非常に個人的なものではあるはずなのですが、メディアが消費者に害悪を及ぼしている(ただ単にマーケティング上手な店に加担してしまっている)こともあるという点に気づき、少なからぬショックを受けました。

一方で、マーケティングする側の視点に立つと、プロダクトがイマイチでも、ストーリーが上手ければ、初速はある程度売れるんですよね。それが数年売れ続けるか否かは、結局はプロダクトの実力に回帰していくと思いますが。

グルメでいえば「あの『すし匠』出身の新店!」というストーリーがあれば、ある程度初速は客がつくはず。その新店が本当に美味いかどうかは、ストーリーとは関係なかったりもします。あくまで自分の好みと合うか否かというだけであることも、もちろんあります。

スタートアップでいえば「あの木村新司氏が新アプリを発表!」というストーリーがあれば、それだけで一定のDL数は得られます。paymoが仮にクソなプロダクトであったとしても、です(時流的に例として使わせていただきましたが、もちろんpaymoがクソなプロダクトと言っているわけでも、思っているわけでもございません)

そういった意味でも、ストーリーとはマーケティング上非常に重要で、まずはユーザーに「美味しそうなストーリー」を提供することは、マーケターとしては必須のスキルともいえます。東◯カレで連載企画のディレクションをする際も「最初の1-2行のリード文で、読みたいと思わせることができるか」は重視している点です。

美味しいストーリーを自分は作れているか。(プロダクト磨きは大前提として)
そしてストーリーは美味しくても、実は不味いプロダクトを、自分は消費者として日頃食べていないだろうか。

その二つに注視して、日常生活を送ると、案外気づきが多いと思う。



Pocket

コメントを投稿する

「客は、美味しいストーリーを食べたがる。仮にその肉が、本当は不味くても」に対してのコメントをどうぞ!