「空気のつくり方」次第で利益率は大きく変動する

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B Dash Campのレポートではないのですが、セッションを聞いていた横浜DeNAベイスターズ元代表取締役池田純氏の書籍が良かったのでご紹介と、そこから考えたことを。

本誌読者ならぜひ読んでほしい「空気のつくり方」。私はkindleで読みました。

詳細は書籍をご覧になっていただきたいですが、ざっくりいうとDeNAがベイスターズを買収してから池田氏が社長に就任し、赤字幅が大きかった球団の売上を相当伸ばし、2016年黒字見込みのところまでV字回復させたという話です。

その過程で、利益が出るような空気に社内をしていくこととか、ベイスターズの売上を伸ばすために、例えばビールを内製して「ベイスターズラガー」を作ってみるとか、ハマスタをTOBするとか、そういう施策を考え実行していく中で、空気を醸成していくことの大切さについて、触れられていました。

よくよく考えてみると、明確に意識していないだけで、ほとんどのビジネスにおいて「空気づくり」の巧拙が、ビジネスの結果、特に利益率に反映されているのではないかと感じました。

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例えば、普通のハンバーガーなら500円でも高いと思いますが、「ちょっといけてる高級バーガー」は1,000円でも売れるわけです。しかし、それぞれの原価率は同じとは限りません。仮に原価率が同じであっても、高価格帯商品の方が利幅は確保できます。

回転寿司と銀座の鮨は価格が10倍だとしても味は10倍も変わるでしょうか?しかし、「銀座の鮨という空気」に金を払う客は一定層いるものです。(実際に私はそうです)

こうした「仮に少し高くても売れる空気づくり」は、言い換えるとプレミアム戦略といえそうです。プレミアム≒空気、といっても差し支えないでしょう。この空気づくりこそが、ブランディングに他なりません。そして人が欲しがるものや、機能以上に情緒的価値を感じるものをつくることができれば、ユーザーは喜んでそこにお金を払ってくださり、それがビジネスとしての利益率を押し上げるのだと思います。

Umeki Salonかて「空気を売っている」ようなものです。私が日々トピックを投下したり、場合によっては特定の層の会員のみに出会いの場を設定しますが、原価はゼロです。もちろん情報価値を感じていただけている場合もあるでしょうが、Umeki Salonに属していること自体に価値を感じてもらえれば、それは言い換えると空気を売っていることなのです。

ちなみに、秋元康さんは問題になったブランジスタのゲーム「神の手」でAKB48総選挙当日のステージ上の夢と希望を閉じ込めた「場空缶」を、計3万缶売り出した、というのでバッシングされていましたが、さすがにそれはユーザーを舐めすぎたのだと思います。

今まで様々な空気を売ってきて成功されてきた秋元さんですが、直接「空気」を売ってはダメなのでしょう。何か建前があって、結果的にその空気が売れている、くらいの塩梅がユーザー満足度を最大化しやすいのだと思います。

例えば、イベント。東カレで「独身男女のみんな!ぼっちクリスマス、寂しいでしょ?そんなあなたに出会えるイベントを用意しました!」といっても、応募はこないでしょう。来たとしても、イケてる人の応募は限りなく少ないでしょう。出会いを全面的に押し出したイベントに行かなければならないほど、自分が異性に困っているなどとは思われたくないからです。

しかしそれが「東カレ読者と交流できる、大人の社交場」と打ち出すとどうでしょうか。出会いを強く訴求しているわけではないですが、「イケてる人と出会えるかもしれないフレーバー」がほのかに漂うかと思います。

空気を売るとは、この違いなのです。この空気の違いに敏感であり、より売れる空気を嗅ぎ分け、醸成できる人が、有能なマーケターでしょう。

特に日本人向けの場合は、直接的な訴求ではなく間接的な訴求の方がCVRが上がるかと思います。そういう国民性です。「俺の家来ないか」よりも「うちにキルフェボンのケーキあるけど、一緒に食べない?」という方が同じ男性の家に行くという行為でも、女性の心理は全然違うらしいと聞きます。受け取る相手にとって刺さる言葉や施策を考えられるかが、マーケターとして基礎的な素養ですよね。

こうした空気に過敏であるか、空気を作れるかで、享受できる利益が全然違います。「空気」自体をあまり強く意識したことがなかったのですが、「空気のつくり方」を読んだことにより、空気ドリブンの視点を持つことができるようになり、マーケティングの引き出しが自分の中に一つ増えた気がしました。

マーケターのみならず、ビジネスマンならばすべての人が読んでみた方が良い本だと思います。読みやすいですし、オススメです。



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