顧客予算型など4つのプライシング・パターンの再考

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プライシングの話です。

1年前くらいに某講演会?でnoteを100円で売る人を厳しく糾弾したことがあるのですが、プライシングについてもう少し深堀りして書いておきたいなと。

大前提の話として、世の中の多くの人に「プライシング」の経験がありません。「決められたプライシング」の中で生きているだけで、「プライシングの決定権」はないのです。マーケティングの4Pの中でも「プライシング」は一番携わる人が少なく、ゆえに皆さん経験が乏しいのでしょう。

私も独立するまでプライシングの機会はあまりありませんでした。せいぜい、決められた広告商品を割引する程度です。まだ値が付いていないものを売る経験がなかったんですね。

独立すると自分を商品として売り込まなければいけませんから、月額いくらとか1時間いくらでミーティングを売ったりしていきました。

TheStartupの最初の広告販売もドキドキものでした。その時の経験は今でも覚えていますが、なんとなくの相場はあれども、相手が買いたいと思う価格で売れば、商売は成立するということです。相手が、買いたいと思う価格か。そこが、ポイントです。

プライシングのロジックというのはパターンがあります。

1.コスト積み上げ型
2.提供価値算出型
3.顧客予算型
4.フリーミアム型

コスト積み上げ型は文字通りで、原価50円のものを100円で売る。みたいなものです。小売業によく使われるでしょう。最もオーソドックスなプライシングです。他の3つはもう少し掘り下げましょう

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売価から逆算する価値提供算出型

提供価値算出型。これは少し頭を使う必要があります。相手に提供しうる価値から逆算して算出します。私が思うに、ブランド物などのプレミアム商品はここに入ります。そのモノを手に入れることによる、副次的な効果は何か。バーキンとCOACHの価格差はなんなのか。「入手困難なモノを手に入れた私=私も希少性が高い女に違いない」という承認欲求を買っているのではないか。

各メーカーはそのプレミアム価格を正当化するために、広告宣伝費を突っ込んだり、希少価値がいかに高いか見せかけるブランディングをする。コスト度外視で、売価から決めるアプローチを取る際に、提供価値算出型は良いかと。

個人向け月額は4,000円程度が最大予算か

顧客予算型。これ、はじめてネーミングしましたが、かなり重要な考え方かと思います。そのサービスを利用したり、モノを買うために、メインとなる顧客のお財布事情を勘案した上で、これくらいなら支払えるのではないかという、支払い可能な額を推測して、プライシングします。

このアプローチは、多くの月額課金サービスに当てはまると感じます。C向けでマスに課金させたければ、数百円。年収300万円の人もターゲットにする場合は、300円とか500円に設定する必要があります。100万人とかの規模感から、幅広く徴収する感じです。

マスまでいかなくとも、デーティングアプリは月4,000円とかすることもあります。これが1万円だと課金ユーザー数はかなり減ってしまうと思います。デーティングアプリに課金する男性ユーザーの下限年収を500万くらいと想定すると、月4,000円でライフタイム1年とすると年間約5万円で年収の1%。これが2%を越えてきたりすると、グッと課金ハードルが上がる。

法人向けサービスも同様です。私が提供している、ウメキワークスを個人向けの記事課金サービスと捉えるか、法人向けのデータベースサービスと捉えるかで、ユーザーにとっての課金価値はまったく異なります。前者で捉えると高いと感じ、後者で捉えると安いと感じるでしょう。

法人だと、自分で資金調達情報を調べなければならないところを、月3,000円で買って時間を節約できるという発想になります。そう考えると、自分で調べるより10分の1から30分の1ほどのコストダウンにはなります。しかしこれを月5万円で売ると、ガチなB2Bサービスとなってしまい、個人ユーザーからの課金は見込めなくなります。

私の感覚値ですが、個人向けサービスの場合、顧客予算から逆算すると4,000円程度までは月額払ってくれるユーザーが一定層います。Umeki Salonも月4,000円です。

年収500万の人にとっては、年収1%分で学びを得る。日経新聞も月4,000円くらいで、かなりの購読数ですから、ビジネスマンが知識を得るために月4,000円というのは、妥当な価格でもあると思います。日経新聞が月8,000円だと、半分以上の購読者が「高い」と感じて解約するのではないでしょうか。それも、年収が低い層から解約していくでしょう。

あくまで収益最大化のためのフリーミアム

最後にフリーミアム型。今更説明するまでもないでしょうが、あるモノを無料提供する代わりに、他のモノで課金する手法です。私でいうと、TheStartupは無料記事ですが、サロンやnoteで課金するというフリーミアムを取っています。

少しフリーミアムについて踏み込むと、「プレミアム」を最大化するために「フリー」が存在する。要は、収益最大化のために、意図的に無料のモノをばら撒いているといえます。

最近の例えで言うと、ウメキワークスでは2月発表のIPOが多かったので、IPO記事を入れまくりましたが、マクロミルネットマーケティング(Omiai)の2社の記事は、TheStartupで無料公開し、ウメキワークスへの導線とすること狙いました。

ここ最近のウメキワークスの購読者数の伸びを見ると、2月のワークス内での記事本数の多さ、口コミが増えたことも要因として挙げられますが、このフリーミアムがワークしたことも十分考えられます。

noteを100円で売ることと、プライシングの掛け算

この記事、最初つけたタイトルは「noteを100円で売ることがアホな理由」でした。ちょっと煽りすぎで品がよくないなと思い、変えました。

プライシングの例として、noteを取り上げます。

実際のプライシングは、上記4つの組み合わせであることも多いです。いくつか組み合わせた上で、より多くの利益を生み出すための、スイートスポットとなる価格を考えます。何パターンかでトライアルしてみても良いでしょう。

いきなりnoteをはじめて100円で記事を売るというのは、私からすると一番アホな発想です。利益を最小化するプライシングとすらいえるでしょう。100円にするくらいなら、無料記事にしてより多くの人に読まれた方がいいのです。下手すると、そこにアドセンスを貼っておいた方が儲かるでしょう。

広告収入>100円の課金での販売収入

となる場合が多いことが想定されます。たとえば、1万PVの記事だとして広告単価0.2円であれば2,000円です。これを100円の記事で売ると、20人に課金させないと難しいのです。無料だからこそ1万PVのリーチがあったわけで、有料記事はリーチがぐっと減ります。1,000PV(クリックなだけで、課金はしていない)としましょう。そこから2%のコンバージョンを獲得しないと2,000円にはなりません。noteで記事を販売したことがある人ならわかるでしょうが、noteのCVR、甘くないんですよw

そもそもその人の文章は日頃から読める機会があったのか?ぽっと出の人がいきなり課金記事を売って売れると思うなんて、そんなにインターネットは甘くありません。無料記事で一定の支持を得た経験がある人しか、課金記事は売れないというのが現実でしょう。

支持=PVとは限らず、ユーザーにどれだけ定性的に深く刺したか、でCVRは全然変動します。twitterフォロワー数が私の10倍以上いるイケダさんのサロン(150人くらい?)より、Umeki Salon(450人)の方が未だに会員数が3倍いるのは、定性的に深く刺さったかの違いともいえます。単純計算で、リーチに対するCVRは30倍の差です。

私のサロンやnoteが売れるのは、特定ユーザーに明確な提供価値があり、顧客予算型の価格設定をし、TheStartupで長年無料記事を読んできてくださった方が課金してくださるので、フリーミアムが機能しているという、3つの掛け算で成り立っています。一つ一つの最適解を見つけるのも大変なので、それが3つ掛け合わさると、簡単に模倣されず、競争優位性を築けます。

読者の皆さんにもわかりやすく、私の例でお話ししましたが、意思決定者ほど価格設定に悩む機会もあると思います。その際に、こういうパターンの掛け算でスイートスポットを探すということがヒントになればいいなと思って、書いてみました。

上記のパターン以外のプライシングについても、ご意見ある方いらっしゃればぜひお聞かせください。

ということで、ウメキワークスもよろしくです。



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