メディアは急成長させてはいけない?ジワジワくるが正解。

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年初は人気のないメディア論からです。(最近WordPressで記事書くのが億劫で、noteのほうが楽でいい気すらしてきた)

昨年のWELQ問題には後乗りしないと決め込んでいたので、そちら関連については他メディアと別論点じゃなければ記事を書く必要がないと感じていたので、その辺の問題は割愛しますが。

一連の流れを見て、ふと感じたのは「メディアの時間軸」の論点でした。

インターネットサービスを爆速で成長させる起業家がいる一方で、やはりメディア的なサービスって、爆速成長とは相容れない部分があり、それは「時間」なのではないかと思います。

メディア本来の性質として、時間を経ること(厳密に言えば、1人のユーザーが複数回接点を持ち、複数回の満足を重ねること)で信頼を積み重ね、メディアとして認知されていくのではないかと思います。

SEOでPVを積み重ねることは、たまたま検索で流入してきているにすぎず、ユーザーはそのメディアに指名できているわけではなく、「そのメディア」を信用ないしはその記事を楽しみにしている、とはいえない状況ではないかと思います。

厳密にいうと、メディアがメディアたる所以は、指名買いの読者がどれだけいるか。それは偶然の検索流入で積み上げた数百万MAUのことではありません。

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会員制メディアであれば会員数であったり(ユーザーがそのメディアの会員になるというアクションを起こしているので、信頼性あるデータになる)、非会員メディアであればトップページのPV(検索流入で来た記事単位ではなく)だったり、Facebookページ(金で買えるので信ぴょう性低いけど)の会員数だったり、個人メディアであればfeedlyなどのRSSの登録者数であったり(重複しないですしね)。

その辺の数字が、そのメディアの影響力を示す、「正しい指標」なのではないかと思います。謎のMAUやPVでお化粧しても、一時的な広告主のウケは良いかもしれませんが、広告効果が悪ければ継続受注できません。

謎のMAUやPVと関係ない指標なのが、ユーザー課金。サロンやnote、NewsPicksのような課金人数は嘘偽りようがありません。

短期間で不自然なくらいに急成長したように見えるメディアは、その中身を細分化して考える必要があります。MAUやPVばかりアピールしているのは、SEO集客の可能性が高く、上述の指名買い比率が低いと思われます。もちろん、アプリ化とかで転換できるので、MERY非公開の際には、実際に悲しんだユーザーの声を多数目にしたのでしょう。iemo非公開を悲しんだ様子はあまり目にしませんでしたが。

逆に課金の数字がしっかり伸びているというのは立派なことで、NewsPicksあたりはそうなのではないかと思います。おそらく2016年12月時点では有料会員数3万人くらいいそうです(2016年9月の3Q決算では2.6万人)初速が鈍く、爆速成長ではないといえますが、これくらいの時間軸で伸びていくのが、妥当ではないかと思います。

このNewsPicksの課金の伸びは、上述したユーザー体験の「何度かそのメディアの記事を読み、何度か満足する」の結果、メディアへの信頼性が高まり、課金へ至る。というユーザーサイクルに合致しています。私自身が取り組んできた、サロンやnoteなどの月額サービスも同様の傾向にあります。

いきなり最初から売れませんが、メディアと読者の間での信頼(読者にとっての満足)を積み重ねることで、ジワジワくるのです。ジワるのが正解だと思う。せっかちな起業家には、少し理解できないかもしれませんが。

ただ単に時間をかければ良いわけではなく、ユーザーがそのメディアに指名買いで再訪するようなコンテンツを出し続けるべきで、検索流入目当てのコンテンツを作っても、謎のPVやMAUは伸びますが、そこから指名買いに転換する率は限りなく低いのではないでしょうか。

メディアとコンテンツの関係は、コンテンツ・イズ・キングでコンテンツが主であるべきだと思っています。キュレーションメディアは、ある種コンテンツ(中身)が不在で受け皿のメディアを膨張させただけとも言える気がします。

私は自分の特性としてそういうことはできなかったので、TheStartupではリリースコピペ記事をやらなかったし、東京カレンダーでもよく妄想と言われますが(特定されない程度に脚色はしていますが、ライター陣がある程度取材して作っています)オリジナルコンテンツに最初から力を入れてきたんですね。

キュレーションのような中身のないメディアが淘汰される時期に備えて、最初から逆張りをしました。ここまでひどい惨状になるとは思っていませんでしたが。

新興メディアが2-3年で信頼を得るのは相当に難しいんですよ。しかし、一度一定以上の認知を得たメディアのライフタイムは長いです。スタートアップ業界でも、スタートアップ企業の盛者必衰は激しいですが、「国内のスタートアップメディア」は私の知る限りは、TechCrunch、TheBrdigeが今は主流で、Venture NowやTech Waveが死んでいき、最近はpediaという新興が出てきていますが、新規参入プレイヤーは少ないんです。メディアは一定の地位を気づけば、その後の残存者利益の期間は長い。

時間を買うという意味で、名前があるメディアを買収して、ターンアラウンドするのはアリだと思います。私が買収したわけではないですが、東京カレンダーWEBは典型的なターンアラウンド銘柄です。14年続いていたニッチで名前あるメディアを、webで再生する。私が似たようなメディアを新規で立ち上げるよりも、使えるリソースが豊富だし、ブランド力があるので、立ち上がりやすいと判断して、着手した案件。

最後にまとめると、キュレーションメディアバブルは昨今の騒動で一旦崩壊したとみて良いでしょう。本誌でも新しいビジネスモデルとして2014年頃にはたびたび紹介してきましたが、M&Aの小粒EXIT以上にはならない領域なのかなと。

メディアは元来の性質的に、初期フェーズや中途半端な規模では儲かりにくく、ティッピングポイントを越えた後は非常に高い収益性が見込めると思います。ただ、MERY以外のキュレーションメディアは「いずれも中途半端な規模」であり、ティッピングポイントを越えることはもうないでしょう。

手軽に始められて、アドセンスなどで初期のマネタイズも多少できるということで始めた人が多いと思いますが、メディアはそんなに甘くありません。オンラインメディアの新規参入が2017年は減るでしょうし、動画メディアに世間の注目はシフトするでしょう。

テキストでも動画でも、本質は同じで、月間1億再生とかは意味がありません。あくまで真のユーザー数。アプリDAUなどをしっかり見ていくことが大事で、営業上有利な数字(再生回数やDL数)を公表する企業は多いですが、競合に知られたくない本当にコアな数字(DAUなど)はだいたい非開示ですよね。

AbemaTVほど資金量あれば別なのと、動画はSEO関係ないので少し話が違うでしょうが、テキストメディアの時代はSEOで見せかけの数字を作る意味がないことに皆が気づいたということと、動画に主戦場が移っていくというダブルパンチで、2017年は厳しくなるのではないかと感じています。



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