曲を“売らず”に大ヒット曲に?「ヒットの崩壊」に見る新ヒットの法則

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話題になっている気がする、「ヒットの崩壊」を読みました。個人的な学びは下記。

・2015年、音楽業界が長い低迷期を脱し、前年比+成長を遂げた(たしか+3.2%)
・グローバルでは音楽配信がCD販売を上回った
・音楽配信でもDLよりストリーミングが上回った
・音楽販売市場は衰退したが、ライブ市場は大きく成長した
・無料DLの音楽がヒットチャート上位になる事例が出てきた

この「ヒットの崩壊」はプロモーション手法がおもしろく、私は普通にKindleで買って読みましたが、cakesでも連載中なんですよね。そちらはcakesを課金するか、毎週追っていれば無料で読める。このアプローチ自体が、最新の音楽プロモーション手法と似せているのかなとも感じました。

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要約すると日本音楽史の売上やトレンドの変遷を追っている作品と読めますが、ここ30年くらいの変遷を多角的に考える示唆に富んだ論考でした。

中でも90年代の「ミリオン連発」時代のヒットの法則は、TVCMやドラマタイアップが付けば、一気にブレイクするというシンプルなものであり、TVと音楽の蜜月時代を説明されています。現代においてはこの手法が通じなくなり、AKB48のヒットはゲリラ戦というか、ソーシャルメディア時代に適したヒットのさせ方であるという解説もあり、時代に沿った、プロモーション手法や戦術論が重要なのだなと改めて感じました。

音楽番組のフェス化現象など、無意識下で「最近長い番組増えたなあ」と思っていたけれど、ライブ市場の盛り上がりと意図的に連動させていたんだな、とか気づかなかったことに気づけました。

唯一無二の「ヒットの法則」は存在しない。数年ごとに可変

本書の題名は「ヒットの崩壊」ですが、本書でも触れている通り、ヒット自体がなくなったわけではなく、いわゆる「90年代の音楽的なヒット」が崩壊しただけ。

ブロックバスターにも触れていましたが、インターネット時代によって「ロングテール」が長くなった一方、拡散力が増したため、PPAPのような「モンスターヘッド」がより大きくなっているという指摘もありました。

ここまでは本書の内容を多少紹介しましたが、この話、コンテンツやメディア業界ならどこでも当てはまるというか、まさに我々スタートアップ業界(その言い方如何なものかというツッコミもあるでしょうが)でも、特にC向けサービスは構造が一緒なんですよね。

・プロダクトが良いことは前提
・時代によってヒットのための法則≒戦術が異なる(ネット業界のC向けサービスの場合5年周期くらいで変動しそう)
・ヒットの戦術をいち早くハックする=法則の方程式を見つける

まず「既存のヒットの法則が通じなくなりつつある」ことにいち早く気づくこと。具体的には「ピークアウトのタイミング」を見極められているか否か。その後、新たなヒットの戦術をハックし、いち早くそちらへ参入すること。スマホシフトが成功した企業や、スマホで既存市場を切り崩したプレイヤーは、勝っています。

音楽業界では「無料で音楽を売る」戦術がヒットしている?

話を戻して本書の事例だと、音楽をCD販売もDL販売もせず、ストリーミング配信のみして、ビルボードか何かのチャートの上位に入ったという例がありました。これはインターネットの他業界に例えると、ソーシャルゲームが無料で遊べて、後で課金させるというモデルに近しいと感じました。

音楽の場合、無料(厳密にはストリーミング配信であり、再生回数に応じてアーティストは収益を得られる)で音楽をばら撒き、露出を上げた結果、ライブで回収するというモデルでしょうか。上手いフリーミアムモデルだなと感じました。音楽をタダで売る、という発想が普通はないですし、かなりの反発が業界?からあったようですが。

曲やアプリなどのプロダクトのクオリティが良いことが大前提ですが「良いモノは黙っていれも売れる」ことはあれども、必ずしもそうではなく、「ヒットの法則」を見極めて、効果的なプロモーションを打つことは、ビジネスの成功率を高めるためには不可欠な施策・思考です。

この書籍には、コンテンツやメディア関係の人にとっては、ヒントになる話が転がっている気がします。



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