自己顕示欲とメディアとの付き合い方

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昨今の報道を見て、「個人としてのメディアとの付き合い方」について考えさせられました。

ビジネス系メディア運営の端くれとして、過去に様々なインターネット業界の方を取材してきました。大抵は自分から取材させて欲しいといってアポを取りました。向こうから取材してくれというのはほとんど断りましたが。

ビジネスマン、特にスタートアップ経営者がビジネスメディアの取材を受けるときにどんなメリットがあるでしょうか。

1:自社サービスの認知向上
2:認知向上による採用力向上
3:「イケてる感」醸し出し資金調達力向上(これは幻想の場合も結構ある)

2が最も大きな理由である気がします。1はこういうビジネスメディアの読者にそのサービスのユーザーがいなければほとんど意味がないから。TheStartupに載ってユーザーが激増したというのはないでしょう。一方で、本誌に「回収不能」と書かれた案件は、資金調達活動においては軽微な影響があるかもしれませんが。

私がビジネスマンとして最も優秀だと感じるのは、なんとも皮肉ながら、取材を受けない人です。メディア露出によるデメリットをよくわかっていらっしゃる方というか。事業数値の公開により競合を刺激してしまう恐れもありますし、「あそこ案外儲かってるな」と思われて競合が増える可能性もあります。もちろん、戦略的に取材を受けて「競合と相当な差がある」と思わせて、競合のやる気を削ぐ手法もあり、それはそれで正しいと思います。

数は少ないのですが、たまにメディアの取材を私利私欲で受けているのだろうなと感じる機会がありました。マズローでいうと上から二番目の承認欲求でしょうか。そうした取材では「俺すごいだろ感」を感じるんですよね。ユーザーが云々という話はあまり出てきません。たしかにすごいのかもしれませんが、自己顕示欲丸出しというのはあまり品が良くないなと感じました。

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自己顕示欲は誰しもが少なからずあるものでしょう。謙虚さが美徳とされる日本においては、それはやや敬遠され、誹謗中傷の的になり得るリスクを孕んだものです。

残念ながら?というべきか、私かて自己顕示欲はありますし、平均よりはそれが強い方なのではないかと自覚したりします。しかし、それを自覚しておくことと、無自覚でメディアに露出し続けることは雲泥の差がある気がします。メディアを通して、特定の誰かの自己顕示欲に晒され続けた顔の見えない名無しの権兵衛たちは、いつか反乱を始める。というか最近その反乱を見かけた気がしました。

メディアに露出して自己顕示欲を撒き散らすのはやや有害な気がします。一言で言うと、ダサいです。一瞬の注目は集めるでしょうが、賞味期限が短い消費財のようなものになってしまう危険性が高い。一方で「いかにメディアに露出しないように根回しをする」という人種もおり、どちらのビジネスマン生命が長いかということはわりと一目瞭然ではないかなと。

本誌では最近滅多に取材をしなくなりました。よほど深堀りしたいテーマが見つかった時のみです。何かのリリース時のインタビューは他でやってくれと。インタビューすると、マイナスなことはやや書きにくくなりますし、フラットさに欠けたりするので、公開情報であるとか、インタビューではないランチとかで聞いた話(書くなよと言われてない奴)を盛り込むくらいが良いのかなと思ってきました。

すごいと言われたいのは理解できますが(私なんて最近身近にすらそういう存在がいないので寂しいものです。誰か身近な人、褒めてくれw)、行きすぎた自己顕示欲の誇示は時にかなり有害で、自らにブーメランとなって返ってくることを、事例を持ってして学習しました。

著名経営者であっても案外そこに無自覚な人は少なくないのではないでしょうか。



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