コンテンツと賞味期限の相関性。ネットと相性の良い象限は?

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昔もこんな記事を書いたことがあるのですが。

メディアの寿命とコンテンツの賞味期限(2015.4.5 TheStartup)

この、コンテンツの賞味期限というもの。考えれば考えるほどに事業領域の選定と、そのサービス自体の賞味期限に非常に密接に関わっている重要なものであると感じてきました。

多少の漏れはありそうですが、コンテンツの主なジャンルを下記にプロット。

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次にざっくりではありますが、各ジャンルのインターネット上の主要プレイヤーをプロットしてみました。

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コンテンツのビジネスモデルの考え方として、1つのコンテンツからどれだけ収益を生み出すポテンシャルがあるかを見抜く必要があります。ポテンシャルを見抜く一つの重要な論点として、「賞味期限」が挙げられるでしょう。

漫画や音楽はホームランで十二分に利益回収できる

まず右上の象限から見ていきましょう。たとえば、サザエさんのような30年くらいやっているものは、毎年マイナーアップデートをすれば良い程度で(そのマイナーアップデートが時代に合っていないと炎上気味ですが)、制作コストに対して非常に収益性が高い。

こうした漫画や映画、ドラマはある程度の制作コストはかかり、制作難易度は決して低くありません。しかし、ホームランが出れば回収できるというモデルにあります。本誌でもお世話になっている「栽培マン」が登場するドラゴンボールも、アカツキのドッカンバトルというゲーム化で、鳥山先生も一部潤っているのではないでしょうか。

音楽のSpotifyや映像のNetflixも一部のヒットコンテンツは賞味期限が長く、それらをフックに会員を有料で囲う。コンテンツと賞味期限の観点で見ると、非常に良くできたビジネスモデルだと私は感じます。

賞味期限が長くて制作コスト低い、KURASHIRUに注目

次に右下に注目しましょう。賞味期限が長くて、制作コストが低い象限。利益率的には最も美味しそうな領域です。ジャンルが「外食」「内食」「インテリア」を挙げましたが、外食の食べログ、内食のクックパッドが雄ですね。賞味期限で見ると、レストランは比較的流行り廃りがあり、長く見積もってコンテンツ賞味期限は3-5年くらいかなと。5年以上前だと少し信頼性が落ちます。

一方の内食は、「2016年の肉じゃがトレンド」とかありませんし、割と普遍的な料理が多いでしょうから、最悪20年前のコンテンツでも十分ワークすると考えます。コンテンツ賞味期限が非常に長いのです。この領域を動画で攻略しようというのがKURASHIRUで、無料アプリランキングでもかなり上位にきており、今後の注目株です。

インテリアは外食よりは賞味期限長いと思うんですがね。iemoをプロットしましたが、そこまで劇的に強いサービスがまだ出ていない気がします。

アットコスメが単体でクックパッドに絶対勝てない理由

3つ目に左下を見てみましょう。ここは賞味期限が短く制作コストも安い象限。ファッションやコスメがそれに相当するのではないでしょうか。1つのコンテンツの寿命は、持って2年かと思います。よって、ここの領域で制作コストをリッチに投下するのは、減価償却的に甘みがありません。MERYのようにキュレーションで量を乱発するとか、アットコスメのようにCGMでやるのは戦術として適しています。

しかし、中長期でみると各々のコンテンツの賞味期限が相対的に短いため、事業価値自体は右上や右下の象限ほどグロースしないのではないかと思われます。アットコスメはそれ単体では食べログやクックパッドに一生勝てないと思います。それはコンテンツの賞味期限が短いという問題が大きいと思うのです。それに気づいているからこそ、アイスタイルは領域を拡張したり、垂直統合で小売に進出したりしているのでしょう。

ファッションもコスメ同様流行り廃りが激しいでしょうから、「2016年にキテる!ガウチョパンツ5選」とか作っても、2017年にはオワコン化している可能性が高く、1つのコンテンツからの収益性は右の象限と比較するとかなり下がるでしょう。だからこそ、M&Aでサクッと売り抜けるのに適しているのかもしれません。上場準備中らしいLocariを擁するwonder shakeにどのようなバリューが付くのか楽しみにしております。

経済記事はニュースもオピニオンも賞味期限短い

最後に左上の賞味期限短く制作難易度高い象限。ストレート経済ニュースの場合はコモディティなのでAI化も可能で、制作難易度低く左下になります。ログミーファイナンスとか、そこに位置しますね。

NewsPicksなどで深掘りする記事を仮に作ったとしても、大抵の経済ニュース記事は1-2年前のものを参照にすることはほとんどないでしょう。よほど真理的なモノ(カーネギー:「人を動かす」的な)でなければ、ほとんどの経済コンテンツは賞味期限が短いといえるだろう。

とはいえ日経新聞など新聞は数千万人単位での購読者を未だにまだ持っている。それはコンテンツの賞味期限を気にして、過去の新聞を再読することはなく、たとえ賞味期限が短くても、今旬な情報が欲しい。買ってでも読みたいという強いニーズの表れである。

ユーザーの習慣やニーズから見ると、新聞を筆頭とした経済コンテンツに課金ニーズはあるが、事業者側から見るとフローコンテンツを垂れ流し続けねばならず、コンテンツをストックしてもほぼ価値にならない。右下象限と比べると、自転車操業感が否めず、インターネットの特性を照らし合わせると、右下象限と比べるとあまり美味しくない気がしました。

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以上、各象限について考えてみましたが、記事タイトルの「どの象限がネットと相性が良いのか」という問いへの私なりの回答は

1位:右下(料理など)
2位:右上(漫画などIPモノか、動画音楽のサブスクリプション)
3位:左下(ファッションやコスメなど賞味期限短いコンテンツをCGMで)
4位:左上(気合入った経済記事)

です。「ネットとの相性の良さ」=賞味期限の長さとアーカイブ性でロングテールが効くこと、と言い換えられるでしょうか。

各象限とも一定程度の成功は納めるのでしょうが、アップサイドは上記の順位順なのではないかなと感じました。皆さんも、この記事に出てきたもしくは出てきていないコンテンツと賞味期限、それがネットと相性が良いか否か、ぜひ考えてみてください。

ちなみに、冒頭で紹介した、メディアの寿命とコンテンツの賞味期限という記事は1年半前の記事ですが、ギリギリ賞味期限内かなと感じました。あと1-2年は持たない気がします。



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