パブリッシャーとしてのメディア、2016年における次の3つのフェーズ

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久々に人気のないメディア論。

2014年から日本国内では「キュレーションメディア」なるものが登場してきました。本誌では「キュレーションアプリ」という定義で流通メディアとしてのグノシーやスマニューを取り上げ、コンテンツを出すパブリッシャーで引用中心の記事の作り方をするメディアを「キュレーションメディア」と定義し、MERYなどを扱ってきました。

グノシーやスマニューに関しては一部でアクティブが落ちている説があるものの、周囲の状況や東カレへのトラフィック状況を見ても、未だに多くのユーザーが使っていると思われます。私自身、東カレWEBというパブリッシャー側のメディアを運営していることもあり、パブリッシャー視点でのメディア論を日々考えており、今回はパブリッシャー視点中心の話を。いくつかのトレンドを考えてみました。

雑誌

1:アプリ中心のブランド化のフェーズへ

特にキュレーションメディアの黎明期においては、SEOドリブンかソーシャルドリブンかという派閥もあったほど、トラフィックを集めるために各メディアが得意とする流入元がありました。

そういうレイヤーでの戦いはもう終わりにさしかかってきていると感じており、キュレーションメディアに対してはGoogleがサイト指名で手動で順位を落としに行くという説も耳にしました(あくまで説ですが)。

後発のメディアは結構厳しい気がしていて、そのジャンルでターゲットユーザーに対して第一想起を取れるかの勝負に入ってきており、それはアプリ中心のブランド化だと思います。

検索やソーシャルでは「たまたま」目にしたけど、そのメディアを頻繁に見るようになり、ブックマークしたりアプリをダウンロードしたりして、日常的に訪問するようになれば勝ちです。

サンプル数はさほど多くないですが、アンケートとったらこんな感じでした。ぜひみなさん回答してみてください。

ReTripとFind Travelの差は意外でしたが、MERYは圧倒的ですね。

2:そのメディア「らしい」コンテンツ・イズ・キング

続いてはコンテンツレイヤー。コンテンツサイドからブランド力を強化するのに必須と言えるのが「そのメディアらしいコンテンツ」といえます。正直、この点はキュレーションメディアは相対的弱い。素人目には、MERYとLocariのコンテンツは、発行元を隠すと見分けがつかない人も多いでしょう。だからこそ楽勝しやすい領域だと捉え、東カレWEBでは最初から「東カレ臭の強さ」を押し出す戦略を取っていきました。

この「らしさ」というのは意外に奥が深く、没個性的な雑誌も腐る程あります。「with」と「more」の違いなんて、わかっていない読者も多そう。雑誌でいえば「VERY」とか、そのメディア「らしさ」があるところが強いと思います。

「らしさ」を追求するポイントとしては、ユーザーのペルソナをはっきりと描き、こういう読者に刺しに行くんだ!という明確な意図を持つことでしょうか。ファジーなターゲット設定からは「らしさ」は生まれない気がする

3:記事以外のコンテンツでマインドシェアを伸ばせ!

記事形式のメディアはどうしてもMAUやPVがKPIの主軸となりがちです。広告主にはわかりやすいため、そこの指標は追いかける一方で、記事以外のコンテンツ作成も先駆けて取り組んでいくと有利です。むしろ、記事だけ作っていれば良いという考え方は時代遅れ。分散型メディアの発想です。

今は大抵のメディアが運用していますが、Instagramアカウントの運用などは最たる例。Instagramの写真にリンクは埋め込めませんので、直接的にはInstagramを頑張ってもPVは増えません。しかし、Instagramで日々1,2秒でも良いのでそのメディアに触れる機会があれば、検索流入が増えるのではないかとか、間接的な効果が見込めます。

動画メディアの場合はKPIを「再生回数」においているのでは。自社メディアのみならず、コンテンツ提供先のメディア(antenna*など)での再生回数を追っているところが多そう。C ChannelとかMINEとかはそうなのではないかという推測。

ターゲットユーザーのマインドシェアを獲得できるなら、どんなコンテンツでも良いのです。コマースでもいいし、イベントでもいいし、ラジオでもいい。様々な打ち手がある中で、動画がトレンドっぽいからといって、無理に動画をやる必要はありません。そのメディアの読者が記事以外のコンテンツフォーマットであれば、何を受け入れるのか。記事以外で、そのメディアの世界観をユーザーに体験してもらうことが大事なのです。

MERYは紙の雑誌を出しましたし、iemoはリアル店舗を出すみたいですし、そういう動きなんだと思います。C Channelであればクリッパーとおっさんがデートできる権利を販売するとか、ユーザー体験の最大化とはそういうことであると思います。体験型コンテンツを提供できるメディアは強いはずだなと。

記事でPVを稼ぐのではなく、その上位概念にある「読者に何を伝えたいのか」をよく考えた上で、施策を打てるメディアのマインドシェアが高まっていき、最終的にはそこが勝つのではないかなと。

ターゲットユーザー1人あたりから稼げるARPUの最大化がポイントだと思います。仮に梅木雄平というメディアであれば、2016年の最大年間ARPUはサロンで4.8万、noteで3-4万くらいで、1人あたり8万円くらいのポテンシャルがあります。平均ARPUはもちろんもっと下がりますが。これはユーザー課金での例ですが、広告の場合は年間広告収入に対して年間ユニークアクティブユーザー数で割れば良いと思います。年商10億で100万UUの場合は年間平均ARPU1,000円です。

斜陽産業である雑誌は、「VERY」などのメガメディアを除けば、負けていく一方だと思います。紙雑誌もWEB最適化が上手くいけば、紙よりも高い利益率を実現しやすく、ビジネスとしては旨みがあると思います。東カレWEBは国内の雑誌初のWEBメディアでは現在「VOGUE」「ELLE ONLINE」に次ぐ3位の規模で、上半期でそれらを抜くことを指標としています。

PV規模というのはあくまで広告主向けの表面的な指標ですから、本質的ながらも顕在化しにくい「マインドシェア」を確実に取りに行く。ターゲットユーザー内での第一想起を狙うために全方位的なコンテンツで囲い込むということは、意識していきたいと思います。



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