「人気海外ドラマの法則21」からみる、魅力的な連ドラの6つの要素

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最近、東カレで小説編集の仕事も多いので読んでみた人気海外ドラマの法則21—どうして毎晩見続けてしまうのか?。東カレでの小説の作り方は巷の小説とは異なり、紆余曲折した結果、基本的には約ワンクールで曜日固定とし、ドラマ的な楽しみ方をさせる。というのが最も効果的だということに気づき、ドラマのような小説の設計を心掛けています。本書から気になった点をいくつか抜粋して紹介します。

webドラマのようなコンテンツって案外なくて、まだまだブルーオーシャンです。しかし、難易度が高いので参入障壁が高い。だからこそ、そこで走りきって「東京を感じられる面白いエンタメコンテンツを読むなら東カレ」というポジションを早期に確立できれば、それは高い競争優位になります。

ドラマ

1:ドラマの金脈を掘り当てろ

テーマ設定、メッセージ性とも言い換えられますが。

ありきたりな話ではなく、モラルを激しく問うとか、人として逃れられない葛藤を描くとか。

ベースとなるテーマのパターン自体はさほど多くないと思います。例えば「恋愛・結婚」とか「仕事」とか。そこに捻ったモノを掛け合わせることで、強いテーマやメッセージが生まれる。

優れたドラマにはパワフルな質問がある。という話も本書にはありましたが、質問=アジェンダ設定のようなもので、「はい!このテーマについてあなたはどう思いますか?」という問いが、看過できないほど刺さるテーマの質問というか。たとえば「34歳独身女性の皆様、結婚についてどう思いますか?」みたいな質問を、物語の中で手を替え品を替え問い続ける。

ドラマの登場人物は最終的には何かしらの答えを出すことが多いわけですが、登場人物の設定が自分に近ければ近いほど、類似解が出るかもしれないと思い、ついつい見続けてしまう。

なので、看過できないほど強いテーマ設定やメッセージ性が、そのまま金脈となるのではないか。というのが私の解釈です。

2:登場人物に感情移入できるか否かが不朽の名作の条件

言われてから案外盲点だったなと思った点。

ドラマに出てくる主人公や登場人物は必ずしも「いい奴」である必要はないが、「魅力がないと」ダメだとのこと。登場人物が魅力的であればあるほど、感情移入でき、結果的にそのドラマにハマります。

ドラマではなくノンフィクション?ですが、登場人物の描き方が上手いのが私が最近夜な夜な見ていたテラスハウスでした。最初は大して魅力的に見えない登場人物でも、その人物の様々な面を見ることによって、いつの間にかその登場人物に愛着が湧いています。

テクニカルな話としては、その人物の「お決まりのパターン」を作ってしまうと愛着を持たれやすいです。何度か繰り返すうちに「あ、いつものやつね」というような。東カレの人生ゲームの拓哉はミスチルの歌詞がよく脳内によぎりますし、テラスハウスでは最近死んでしまった今井洋介さんの「手をつなごう」という歌の下手さ加減は、幾多ものテラハ視聴者のツボを突いてきたはずです。本当に下手ですよね。あとは島袋聖南の「トレンディ」とかですね。テラハの手法はナレーションがそれを増幅させた効果は確実にありますが。

いかに愛されるキャラクターを作るか。模範的なキャラクターを描く必要はなく、その人の弱さを描き、それを乗り越えさせるというのが、一般的な「感情移入を生むため」の手法のようですね。

3:全てのドラマには勝ち負けがある

基本的のドラマはストーリーであるがゆえ、何かしらのテーマの物事が進んでいきます。勝利も敗北もない孤独なレースを描いてもさほど面白みがありません。本書曰く「全てのドラマには勝ち負けがある」とのことです。

その勝ち負けはわかりやすいものもあれば、わかりにくいものもあるでしょう。登場人物に勝ち負けをつけさせるには、逆境や前向きなゴールを与え、そこに向かっていく姿を描く。その過程を視聴者は楽しんでいくもの。

4:プロットとは「気づき」だ

何やら名言めいたセリフ。

プロットの意味を調べると「ストーリー上の重要な出来事のまとめ」であり、ストーリーの鍵となる部分といえます。ドラマでいえばそのシーンの中に「重要な出来事」や「疑問」を提起することを指す。

「優れたシーンには変化がある」という本書での話もあり、起承転結がしっかりしている。とか、伏線を張るとか、情報を伏せておいて意外だが納得できる明かし方をするとか。

毎回何かしら気づきを視聴者に与えるシーンや話が欲しい。それが強い物語を作る要素になりますね。「毎週あったほうがいい」というのがテレビドラマと映画の違いかな。

5:描けるか?スイートスポット

本書ではスイートスポットの定義は下記の通り。

毎週のドラマが生きる場所。ジャンルやトーン、テーマ、メインの葛藤と、提起するクエスチョン・ミステリーが交差するスポット。

元の意味としては「テニスのラケットの真ん中で、球を芯でとらえて最大のパワーが出せる部分」のことであり、私はビジネスの世界では簡単にいうと「自分の力が最も出せる場所。それは何かと何かの組み合わせである場合が多い」と解釈している。

例えば、私は「スタートアップ業界のメディア」を運営しており人より多く情報が入ってくるという立場にいて、スタートアップのファイナンス事情に通じているので、「スタートアップ投資の仲介」というファイナンス業で優位に立てる(厳密にいうと投資プレイヤーではないので立場が異なるが、この「スタートアップ投資の仲介業」は前提条件としてスタートアップに詳しくないと成り立たず、それは5年におけるTheStartupの運営がそれを担保している。

ドラマの話に戻ると、スイートスポットというのは後付けではあるが、振り返るとそのドラマを象徴するようなシーンである気がする。名作には誰しもが思い出せる感慨深い名シーンがある。それは単に絵が綺麗だから、とかではなく、そのドラマが描くテーマや葛藤がクロスしたシーンだから。やまとなでしこの、結婚したはずの桜子が結婚式の翌日になぜか開店前の魚春にいるシーンとか、「極上の結婚」というテーマに「桜子の葛藤」の答えが出た場面とも読み取れ、記憶している人は多いのではないか。ああいうのが、スイートスポットである。

このスイートスポットを描き出すのは、生易しいものではない。スイートスポットを全然生み出せない駄作もあるであろう。そのドラマの根幹を晒し出すシーン。いきなりそのシーンが出てくるのも違うし、いくつもの伏線の結果、そのシーンの効果を最大化したりもしている。

むしろ、強いスイートスポットがあったドラマこそが、勝てたドラマとすら言えるのかもしれない。それほど大切なシーンである。

6:続きが見たくなる「クリフハンガー」を仕掛けろ

「クリフハンガー」は耳慣れない言葉ですが、要は続きが見たい!と思われるような終わらせ方とか、TVCMの前に入れるようなやつです。テラハでいうと「バタン!」ってドアが閉まるやつ。

特に毎週やるドラマではこれは重要で、クリフハンガーの強弱如何で次週の数字が決まってしまうかもしれません。そんなクリフハンガーの典型パターンとしてはこの辺ですかね。

・驚き新展開
・彷徨う恋心
・秘密の発覚
・人生の出来事(結婚離婚妊娠など)
・人生の出来事思うようにいかない局面

登場人物の内面の動きから、自然に派生したクリフハンガーが最も効果的である。との解説も本書ではありました。その点、ドラマよりノンフィクションのテラハ的なものの方が、生々しくて引き込まれやすいんでしょうね。

以上です。この6つは毎週放送されるTVドラマ制作に留意する点なんでしょうね。私も今後多くのドラマ小説的なモノを東カレで監修していきますので、大変参考になりました。きっと東カレで今後ご縁がある方には、この記事とこの本を読んで参考にしてくれということでしょう。

しかし、ドラマ小説を描く力は本当に「センスだな」と思いますね。編集で多少ブラッシュアップできるもの、ベースが全然ダメだと使い物になりません。私は最初の大枠の筋書きをするのと、元の素材をどう見せれば輝けるかをチューニングする程度に過ぎません。

長い本ですが、各章についているプロデューサーインタービューなど読み飛ばしてよいので(私は読んでいません)ぜひ物語制作に携わる方には、一度ご覧いただきたいですね。

はっきりいって、メディア運営やるなる「連載モノ」「小説モノ」をやったほうが中長期でのROIは高いですよ。ハードルは高いですが、そのメディアならではの記事を制作した方が、スマニューで読んでもグノシーで読んでも、きちんと元ソースのメディアを「認知」されるのです。

そしてそういったコンテンツを生み出せるないしは、生み出せる体制を作れる編集者の価値が来年は急騰すると思いますし、そういった人材が実際に喉から手が出るほどほしいですね。本稿はそんな編集者になる気概のある方へ向けた、一助となれると幸いです。

良いストーリーは、不思議なくらいの読者が細かいディティールを覚えているものです。それだけその人に強いインパクト、ユーザー体験を提供できたことの裏返しなのでしょうね。



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