栽培マンでもわかる?メタップス佐藤氏「未来に先回りする思考法」解説

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公募時のvaluationロジックは未だに業界では懐疑的な声が多く、予想通りの?公募割れしたメタップスですが、CEO佐藤さんの考え方は抑えておくべきで2015年8月発売の「未来に先回りする思考法」は本誌読者であれば必読です。むしろThe Startupとか読んでる暇あればこの本を読んでください。

とはいえ、佐藤さんの考え方や話は抽象度が高く、筆者を中心とした栽培マン層は理解できない人も多いのではないでしょうか。

そこで、本書から抑えた方が良いと感じた名言(厳密にいうと、本文を直接抜粋したのみならず、多少加工)をいくつかピックアップして解説します。
メタップス

1:思考編 原理から考えよ。自分の認識は間違っている

未来は変えられない。未来の到来を少しだけ早めることはできる。

社会の効率がだんだんと良い方に向かっていくのであれば、それは一本の軸を左から右へと進んでいくような変化であり、あまり多様性が生じる余地はありません。

起業家あるあるとして「俺が!この手で!!未来を変えてやる!!!」というのがありますが、佐藤さんから言わせると「未来がどう変わっているかはすでに決まっていて、その未来の到来を少しだけ早めることしか起業家にはできない」とのことです。

まず自分自身の認識すらも誤っている可能性を常に考慮に入れた上で意思決定をする必要があります。ひとたび動き出せば、新しい情報が手に入り、「認識」は随時アップデートされていきます。

常に原理から考える思考法を身につけていることが大切。原理から考えるためには、そのシステムがそもそもどんな「必要性」を満たすために生まれたかを、その歴史をふまえて考える必要があります。現在の景色だけを見て議論しても仕方ない。

(Androidが流行っていない時期にAndroid OS上での事業への)一歩をなぜ踏み出せたかというと、自分の認識を信用していなかったからです。今の自分の狭い視野によってつくられた認識のほうが「間違っている」と考えていました。

自分の判断を信用してはならない。原理に従った意思決定を。

メタップスはAndroidでの収益化支援事業を東南アジアから始めたという経緯がありますが、参入当時はiPhoneのシェアが圧倒的で、Android市場にかなり懐疑的な視線が向けられていた時期でした。

佐藤さん自身も「こんなポンコツなAndroid端末で事業なんてできるのか?」と悩んだようですが、iOSとAndroid OSの競争を過去のAppleとMicrosoftの競争に当てはめて考え、Androidのシェアが伸びてくることを「原理的にそうなる」と予測した上で参入し、その後売上を伸ばしました。

自分で考えて判断するのではなく、過去に学び「あるべき姿は何か」といった「原理からするとこうなる」と世界を予測した上で、先回りした判断を下して行動できるプレイヤーが勝つ。そこに私情や自らの見解は不要であり、「未来を線として考えるとこういう世界になるはず」という思考法が重要であるとの話でした。

「佐藤さんの思考編」から我々栽培マンが学べることとしては

①:自分の認識が間違っているという可能性を常に念頭に置くこと
②:原理から逆算して世界がどうなっていくかに思考を巡らせること
③:自分の手で変えられる未来などなく、未来を変えるスピードを速めているだけだと思うこと

この辺を押さえておくと良いと思います。①ができていない起業家は多くて「こんなものあったらいいな」で事業を始める起業家が典型例です。

2:行動編 諦める前にサンプル数をこなせ

物事がうまくいかない場合、パターンを認識するために必要な試行回数が足りていない場合がほとんどです。サンプルが必要だと頭ではわかりながらも、感情的な理由から十分な数が集まる前にあきらめてしまう。目標の達成を阻んでいるのです。

一回一回の成否に一喜一憂せずに、パターンと確率が認識できるまで「実験」だと割りきって量をこなすことが重要です。

これは普通のことを言っている感じではありますが、「感情的な理由から十分なサンプル数が集まる前にあきらめてしまう」という話は全くその通りです。この点、藤沢所長の恋愛工学でも「実験」と割り切り、ザオラルメールを10通送るとかそういう数をこなすことの重要性は説かれています。

後述する投資編の中にもある話ですが、原理から逆算して導き出した仮説が万人に受け入れられるわけもなく、むしろ否定されることの方が多いはずです。否定が多いと感情的な理由から行動量に支障が出てしまいがちだと思うので、いくら否定されても「実験」と割り切り、数をこなすことは重要。

3:投資編 将来を予測することは誰にもできない

(Y Combinatorの)グレアムは「将来を正確に予想することは誰にもできない」という前提に立ち、自分も例外扱いしませんでした。グレアムは自分でも認識できない可能性に投資することでリターンを得ているのです。

最後に投資論を。グレアムが謙虚というか、自分でも認識できない可能性に投資するという考え方はVC業界のみなさんは頭かの片隅に叩き込んでおくべき思考法だと思います。シードステージならなおさらで、目を瞑って10社に投資しても1社くらい当たるという話があるくらいです。昨今ではそのような不確実性の高い投資をするVCが、手堅い投資をするPE業よりも世界的にはリターンが出ているようです。

リアルタイムの状況を見ると自分も含めて誰もがそうは思えないのだけれど、原理を突き詰めていくと必ずそうなるだろうという未来にこそ、投資をする必要があります。あなた自身がそう感じられないということは、競合もまたそう感じられていないはずです。

自分も他人もうまくいくと考えていた事業は失敗し、自分も含め全員が半信半疑である事業は成功しました。

自分すら半信半疑なアイデアは他人にとってはまったく理解不能ですから、他人との競争に巻き込まれずにマイペースに進めることができます。

自分でも成功確率が五分五分というタイミングが、本当の意味でのチャンスです。

思考編にある通り「自分の感覚ではなく、原理を信じる」べきで、自分もまだ信じられないんだけどな。くらいな方が、競合も全然少ないので好都合で勝ちやすいと。

ここで気をつけなければならないのは「ただ単に誰もやってないからいけるんじゃね?」と考えるのではなく「原理に沿うとあるべき未来はこうなのだが、まだ周りが気づいていなかったり、半信半疑だったりする」という方向に掛けるということです。

2015年現代でいえば、ビットコインとかがそういう市場ではないかと思います。海外の動きを見る限りでは、かなり資金が集まっているので、もう参入するタイミングとしては遅すぎるかと思いますが。

気になる点を簡単にまとめてみると以上です。

ぜひ本誌読者はこの書評で満足せず(するわけないか)The Startupを読む暇があるくらいなら、本書を読みましょう。



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