4本目です。さきほどの「The Startup Best 5 Article」にも入れましたが、7月に現代国内スタートアップ「3つの罠」という記事を書いており、これの続編のような話ですね。
「マーケットを過信し過ぎ」「マネタイズのリアリティがなさすぎ」「ファイナンスに依存し過ぎ」を危険な罠として挙げているわけですが、半年前から最近にかけてこの辺がさらに助長されている印象を受けます。
スタートアップが盛り上がっていること自体は良いと思うのですが、持続可能性が低いモデルのスタートアップが盛り上がることにはかねてから疑問を持っています。事業の継続可能性が著しく低いからです。この辺りの問題意識については、先日のソーシャルメディアウィーク(リンク先はライブ動画です)での講演資料をこちらにupしますので、ご参照下さい。
*資料に出てくる人物資料に他意はございません。
要はマネタイズちゃんと考えろ、という単純な話をコミカルにお届けしただけなんですが。
■本当にマネタイズの匂いを感じないサービスが多い
Facebookやtwitter、最近ではPinterestのように「ユーザーが集まってからマネタイズを考えればいい」という発想がとても多いです。しかしここはシリコンバレーではなく日本です。そう、ジャパン。決してシリコンバレーの真似をする必要はないというか、エコシステムが違うので真似をしない方が賢明かと思います。億単位で出資してくれて、長年待ってくれる投資家など日本には少ないでしょう。ファンドの期限によって急かされるリスクもあります。
いっそソーシャルゲームなどの方がマネタイズが明確で潔さを感じます。とはいえ持続可能性があるとはあまり思えず、勝ちSAPと負けSAPの差がさらについていき、一部のSAPだけが生き残る構造に成るでしょう。
なので中途半端にソーシャルゲームに参入するよりも、他の事業で堅実にマネタイズできるモデルを模索する企業が今後生き残るでしょう。
■バブルの定義:価値がないものに相応しくない価値がつくこと
前回この手の記事を書いたとき見かけた論点の一つが「これはバブルか否か」という話です。「本来、価値がないものに対して、相応しくない価値がつくことが多いこと」をバブルであると私は定義します。
この定義に乗っ取って「現状がバブルか否か?」を考えると、バブルであるといえるでしょう。なぜなら大した価値を生み出すと思えないサービスが資金を調達できているからです。これはサービスの質云々よりも投資家の市場環境にかなり左右されており、今はスタートアップというバズワードに対してお金をかけやすい環境にあるため、バブルが生じているといえるでしょう。
このようにバブルは供給サイドの論理によるところが大きく、資金供給が多いため、 大したことのサービスにも結果的に資金が流入してしまうことになります。ちなみに私がVCをやっていて2008年頃はリーマンショック後でVC業界の流動性も枯渇していき、2009年にはVCは死んだといわれ、国内でも自己破産したVCがあったことを覚えています。
今は投資家がスタートアップに寛容な環境にありますが、マーケットの状況如何で投資家はいつ手のひらを返すかわかりません。不況になると一気に手のひらを返し投資を渋り出すところが多いのは銀行の融資とさほど変わらないでしょう。
本当は不況時に投資した方がValuationも下がりやすいですし、不況下で生き残るベンチャーはポテンシャルが高いため、不況時は良い投資環境なのですが、会社組織での投資は難しいでしょうが、個人投資家やファンドなどにとっては絶好のチャンスです。 と、バブルに関する蛇足が長くなりましたね。
■乱立するインキュベーションプログラム。重要なのはそこじゃない。
私の定義では国内スタートアップは明らかなバブルです。永続的なバブルはあり得ませんので、いつバブルは弾けるのか?言うまでもなく投資家のスタートアップ熱が冷めた頃が潮時であり、もう長くはないでしょう。
インキュベーションプログラムが乱立していますが、業界の課題はインキュベーションステージではなく、いわゆるシリーズBクラスのステージでのプロの投資家の数が足りていないことです。以前この件に関してはTech Waveのこの記事で言及しており、この意見に反するように増えているのはインキュベーションプログラムばかりです。
インキュベーションプログラムは少額で始められてそれなりのリターンを得られる可能性があると感じ、投資家が手を付けやすい分野なのでしょう。しかしいつの時代も優秀な人材は一定の層と限られており、そこそこの人材をインキュベートするよりも、優秀な人材を一気に引き上げるような支援が必要なのではないかと思います。そこそこの人材10人に投資するなら、イケてるやつ1人に投資した方がホームランにはなりやすいはずです。ヒット狙いなら別ですが。
今後の国内のスタートアップ環境は、インキュベーションプログラムが創り出したイマイチなサービスが蔓延し、次の資金調達ができず、オワタ。という状況になっていき、どこか跳ねるとこがなければ熱は次第に冷めていくでしょう。昨年のノボットのようなディールが今年は出るのかが一つの投資家の熱の触れ幅を決める指針となるでしょう。