現代国内スタートアップ「3つの罠」

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スローガン伊藤氏さんから「スタートアップの真実」というセミナーをやってみないか?という話をいただき、筆を取ってみた。

本ブログはタイトル通り「スタートアップに関する多くの記事を取り上げ、スタートアップを応援する」と明示しているが、今回の記事はその真逆ともいえるスタンスになるかもしれない。いや、「真の骨太スタートアップになって欲しい」というメッセージになるかもしれない。

特に今年になってから国内では「スタートアップ」と呼ばれる、起業してすぐのベンチャー起業が竹の子のように増えている。僕がまともにベンチャー業界に携わり出したのは2008年の終わり。リーマンショック後でマーケットは盛り下がり世界的にもIPO市場が死んでいた頃。

国内では2009半ばから「ソーシャルアプリ」でベンチャー界隈は勢いを少し取り戻し、今は「Facebook関連アプリ」などでマーケットは加熱している。プレイヤーもネット大手からの独立者や戦略コンサルから転じて参入、ひいては現役大学生など、今までよりも多くのプレイヤーによる熾烈な市場となってきている。「競合が多い」というよりは「皆で頑張ろう」的な雰囲気が、今の国内のスタートアップのムードとなっていて、それはそれで良いことだと僕は思う。

しかし、それゆえに皆が気づいている本質的な問題がありながらも「僕スタートアップなんだ、君もかい?時代はスタートアップだよね」的な仲良しこよしの空気が流れており、見たくないものは見ないようにしようというムードが流れているのも事実ではなかろうか。

そこで私が感じている、現代スタートアップの闇の部分を、「スタートアップの3つの罠」として本稿でお届けしたい。現代のスタートアップの多くは下記3つが当てはまり、「単なるファッションとしてのスタートアップ」が多いと言うことができるのではないだろうか。

■1:マーケットを過信し過ぎるという罠

一昔前だとSAPによるゲーム、今だとFB連携が元となるスマホアプリが多いか。スマホアプリが大多数ではあると思うが、同様の市場としてガラケーのコンテンツ市場がある。

何度も僕がツイートしているように、ガラケーコンテンツ市場は完全に狂っていたものであり「月額315円の解除のスイッチングコストが高かった」ため儲かっていただけであり、提供していた価値に対して明らかにプレミアムが乗っていた市場である、と考えている。この巧妙なからくりによってガラケーコンテンツ市場は盛り上がっていた。

スマホアプリはどうか。「無料アプリ」の存在により「有料」への誘導がしにくいという、ガラケーより課金しにくい土壌があること。そのわり未成熟市場なため広告費が割高であり、DL獲得あたりコストがペイしない場合がほとんどであること。広告費を掛けてDL数を伸ばしたものの、アプリのアクティブ率が低すぎてアプリ内課金しようとしても十分できないこと。

僕が上手くいくんじゃないか?と思っている具体例を上げると、今アジアで30万DL以上を誇るSnapee。日本国内では課金の文化がある「プリクラ」をベースとしたinstagramちっくなもので、無料でDL数を確保し、高アクティブ率を維持しつつ、プリクラの背景や画像の従量課金がしやすいと考える。これは「プリクラ」というものに対して今まで課金されてきたという文化から。

Snapeeが上記を折り込んでいたかはわかりませんが、ここまで上手くいくことは相当稀なことでありDL数伸びる⇒高アクティブ率⇒課金への誘導しやすさという3つの壁を越える要因があったからこそなせる業。

国内スタートアップにはSnapeeが爆発した要因を徹底的にリサーチして
自分たちのサービスにそれを落とし込み、再現可能性があるかを検証する必要があると思います。

どうしても「ゆるふわ」的なマーケットの考え方しかなくて、VCも昔は「市場規模の見込み」とか「同業他社の動き」とか気にして投資判断をしていましたが不況の反動からかデューデリが相当甘くなっていて、「ノリで良くね?」的なとこが増えてる。のではないかなー。という印象です。

▼スタートアップへの金言

マーケットニーズの読みだけでなく、DL/ユーザー数の伸び以降のストーリーも綿密に計算せよ。

■2:マネタイズのリアリティがなさ過ぎるという罠

マーケットの話に紐づきますが、現代のスタートアップにおいては禁句なのかと思われるほど、マネタイズについて言及することが避けられている気がします。希望的観測によるマーケットの読みに基づく希望的観測なマネタイズが大多数です。まだ具体的なマネタイズを語れるとこはマシです。

今までも国内ベンチャーが熱かった時代は、2000年前後のITバブル崩壊の時代と2006年頃のライブドアショック前など、僕がリアルタイムでは知らない時代がありますが、「赤字で上場」などは今までも多数あったはずですが「売上がない、売上が少ない会社」の上場というのは当然なかったはずです。

現代のスタートアップがどこをゴールにしているのかは、多くの場合は見ていてわかりません。ExitなのかIPOなのかGoing Concernなのか。
ゴールを設定して、そこに向かうためにはいつまでにどうマネタイズすればいいのか。これをきちんと説明できるスタートアップは少ないのではないでしょうか。「アプリを出して当てる=DL数が伸びる」が最終的なKPIになっていないでしょうか。

10/11年ではなく08/09年に創業している僕の周りの起業家たちと圧倒的に違うのがこの点です。08/09世代の起業家は手堅くマネタイズして足下を固める経営をしているように見えます。とても地味に見えますが、それが本来の正攻法だと思うのです。「マネタイズ」が軽視される背景に次項のファイナンスの要素が多分にあります。

▼スタートアップへの金言

最低でもサービスのマネタイズについて具体的に(いつ、誰からいくらか)語れるようになれ。

■3:ファイナンスに依存し過ぎるという罠

SeriesAのシードマネーの供給者が今までより増えた関係もあり、確実に起業する際の資金のハードルは従来より下がっている。しかし、「マーケット」と「マネタイズ」と大きく絡んでくるが、多くのスタートアップの場合、すぐにマネタイズできる事業じゃない場合が多い。(すぐにマネタイズできるのはSAPゲームくらいか。特にアプリ単体は厳しい)

SeriesAの資金でα版かβ版をローンチし、特にビジネスサイドのアクセルを踏みにいく際にもちろんまだマネタイズはできておらず、SeriesBの増資が必要になる。

上手くいけばSeriesBで1億円レベルの増資、もしくはSeriesBが約束されているスタートアップもあるでしょう。(1億以上SeriesBで調達した国内スタートアップ特集とか面白そう)ポストSeriesBでマネタイズ(赤字でもいいから売上)が見えなければ結構厳しいと思います。

SeriesBまでいければまだ全然いいのですが、SeriesBにいけずにキャッシュの流動性が枯渇して終了するところも多数出てくるでしょう。今はまだSeriesBに進みやすいご時勢だと思うので、とっととSeriesBに進むことがオススメですが、そもそもSeriesAの時点でマネタイズできていればSeriesBが不要になるところも出てくるはずです。マネタイズできていても大きく攻めたいからSeriesBという方が、VCから見ると建設的で投資判断のハードルが下がるかと思います。

要はマネタイズできていなくてファイナンスに依存すると、ファイナンスできない場合に流動性が枯渇してポックリいってしまうという当たり前のこと。当たり前のことなんですが、ほとんどの国内スタートアップはこの状況にあるでしょう。SeriesBなどのファイナンスを前提としない絵を描くか、SeriesB以降を考えていてもファイナンスできないときに備えてキャッシュリッチにしておくこと。可能であればSeriesBを早いうちに握っておき、実行した方がいいですね。

ファイナンスは時に飛び道具になりますが期待しすぎると火傷する。
ファイナンスはあくまでも戦略オプションの一つであり、ファイナンス前提の事業計画一本だと危ないので、早めのマネタイズを意識してファイナンス不要なサービス運営を目指しましょう。キャッシュの余裕がある中で建設的なSeriesBを実施するのが最高の絵ですね。(綺麗ごとで申し訳ないですが、本当にそう思うのです。『ファイナンス前提』の考え方は危険)

SeriesBが完了してもマネタイズの目処が立たなくて大変そうなとことかもありますね。マネタイズのストーリーを軽視した結果で、サステイナブルなサービスにはならないんじゃないかと思います。

▼スタートアップへの金言

ファイナンスに頼らずマネタイズして足下を固めることが
サービスのサステイナビリティに繋がるのではないか。

以上がスタートアップ界隈の多くの方々と接してきた肌感覚による僕の雑感です。「ここは違う!」などの反論など、お待ちしております♪



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