レストラン情報を見る時、本誌の読者では食べログが多いであろう。残念ながら筆者の周りでぐるなびが話題になることはないし、使っている人も聞いたことがない。しかし、ぐるなびは月間10億PVを誇るサイトである。そのぐるなびは2015年1月現在時価総額約920億となっている。今回の上場企業決算分析では「ぐるなび」を取り上げる。
ぐるなびの主戦場をレストラン広告市場と見ると競合はカカクコムの「食べログ」、リクルートの「ホットペッパーグルメ」となる。ホットペッパーグルメの2015通期売上は本誌予測ではぐるなびとほぼ同等(2015年2Q累計売上が約161億円。ただし、フリーペーパーの売上も含む)である。ホットペッパーグルメとも凌ぎを削りつつ、食べログとも凌ぎを削る市場だ。
上記に重要指標をまとめたが、食べログはぐるなびの1.4倍のPVを有し、メディアパワーでは分がある。一方で売上はぐるなびの方が約3倍を確保している。ぐるなびの営業力の高さを物語るともいえるが、中長期的にはメディアパワーがある方に広告費が寄っていくはずだ。
現にサイトの使い勝手を鑑みてみよう。食べログはレーティングなどを元にユーザーのフックとなるコンテンツがあるが、ぐるなびは特にそういったわかりやすい指標はない。営業力を駆使した地方掲載に強い可能性はあるが、ユーザーに引きのない広告掲載メディアであるぐるなびに中長期的な優位性があるとは思えず、PVが伸び悩むことが想定される。
老舗のぐるなびの方が月額有料店舗数が多いが、食べログも追随する。ぐるなびの月間店舗ARPUは4.3万円となっており、決算説明資料によると店舗ページの充実により今後はこのAPRUを更に高めたい方針だ。一方の食べログのARPUは2,25万円とぐるなびの約半額である。
店舗側の視点に立つと、ぐるなびや食べログからの反響の電話やサイトを通した予約件数が増えればたしかに広告効果を実感するだろう。だが、客単価が高い店かチェーン店でもない限り、飲食店は極力広告費を支払いなくないはずである。同程度の広告効果であれば広告掲載料が低いメディアに広告費は収斂していくはずであり、メディアパワーに分がある食べログの方が広告費が安ければ中長期的にはぐるなびよりも食べログに広告出稿する飲食店が増えるはずである。
ぐるなび5.2万店に対して食べログ3.7万店の月額課金店舗数を有し、食べログの方がまだ拡大余地がある。食べログは2015年1月現在掲載店舗数約80万店となり、その5%近くが有料化。ぐるなびの掲載店舗数は見当たらないが、ぐるなび食べログの月額課金を併用する店舗もあるだろうが、どちらかのみを選べとなるとメディアパワーの成長性を鑑みて食べログが選ばれる可能性が高いと本誌では判断する。
ぐるなびは有料店舗ページを充実させて集客効果を高める施策を講じているが、メディア全体のPVが伸びない以上、まやかしに過ぎない施策であると言わざるを得ない。
最後に株価を見よう。ぐるなび単体で見ると業績は堅調に推移しており、ここ2年で株価は4.5倍となった。しかし、強力な競合である食べログの存在もあり、飲食店広告市場自体がさほど成長市場ではない点からも、食べログ、ホットペッパーとパイを奪い合うビジネスであることには違いない。
ぐるなびは老舗であり営業力に秀でるという特性はあるだろうが、食べログとのメディアパワーの差が1.4倍あり、今後もこれは開くだろうと本誌では推測する。メディアパワーに紐づき、広告費のシェアもぐるなびから食べログへとスイッチしていく可能性が高い。来期も前年比プラス成長は十分見込めるが、食べログと比較した際に魅力はない。
カカクコムの売上比率の36%が食べログであり、そこから推計する食べログの事業価値は1,379億円。すでにぐるなびより高い評価となっている。食べログは利益率の高いユーザー向け有料課金者数も50万人を突破し、今後も伸びていくであろうことから、営業利益率の差も開いていく。
メディア企業としてカカクコムはPER33倍、ぐるなびは約30倍とさほど開きはないが、ぐるなびの行く末を見ると若干過大評価されていると見受けられる。今後2-3年に渡って食べログ優位がより鮮明になり、ぐるなびの減収が減益が始まると、今の株価水準は当然維持できない。本誌ではぐるなびの現在の株価水準は過大評価されており、売りを推奨する。
追記:NewsPicksで様々なコメントをいただいている。そちらも目を通すと参考になるだろう。
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内容の参考:ネットの未来を予測するには歴史を学ぼう、動画分科会を始めてみた
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