Mary Meeker氏のプレゼンは「なぜ」注目を集めるのか?

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ネットセクターアナリストの「重鎮」Mary Meeker氏が最新のレポートを発表した。

Mary Meekerの最新プレゼン―モバイルのトレンドについて知っておくべき10章

現在はKPCBのパートナーである氏だが、2000年前後のネットバブル 時代からモルガンスタンレーのテクノロジーアナリストとしてネットセクターアナリストの第一人者として知られてきた。アナリスト系のノンフィクション小説で「チャイニーズウォールを破った例」としても取り上げられていたはず。

今回もいつも通りご多分に漏れず業界関係者は必読というべき出来に仕上がっていると思われますが(知る限りtwitter等でネガティブな批評はまず聞かない)なぜMary Meeker氏のレポートが秀逸と言われているのか
考察してまとめてみました。

1.ネットセクターのトレンドの全体感を押さえられる

今回は10章から成り立っていますが、大体のトレンドを網羅できる。56ページで現代トレンドのoverallが掴めると、年月が過ぎてからも「あの時代はどうだっけな?」と読み返すべき資料としては適切な分量で適切な情報を仕入れられる。全体感を押さえつつも分量的にtoo muchすぎない点が
人気を集めているものだと思われます。

2.歴史的な比較考察が上手い

今回のTCで取り上げられていた第一章のスライドは、ipod、iphone、ipadの4半期毎のpenetrationの推移でした。ネット業界は日が浅いとはいえ「確からしい説得力のあるプレゼン」の背景にはこうした過去の類似ケースとの比較というファクトがあります。

このスライドからは、日本でipadが広まっている実感は薄いとはいえ、私も米国では既にipadはスタンダードになりつつあるという話は聞いており
普及スピードもこの数字なら日本でのインフラ化も来年再来年あたりには現実的かもね。という風に私は読み取りました。

3.Global Research Reportとして機能している。

米国のメディアは米国のこと、日本のメディアは日本とせいぜい米国の追っかけくらいですが、いつもグローバル指標に関してはいずれかのスライドで触れてくるMeekerですが今回は各国別モバイルpenetrationや2004年と現代のtop ventureのmarket cap比較などGlobalでの推移を簡略に掴める点も人気かと思います。

簡単な比較ではありましたがp48の比較により「え、インデックスって昔そんなにmarket capあったの?」とか「BaiduやAlibabaの世界的なポジショニング、てかPricellneとかNetflixとかNeteaseとか全然わからないんですけど!」「yahooボロクソ言われているけど、yahoo Japanのプレゼンスは昔はかなり高かった」など、筆者(26歳社会人2年目)のような若造には知らないことばかりで、知的好奇心をそそられるし大変勉強になります。特に中国ベンチャーの情報などTC読んでるだけじゃ十分に仕入れられないので、良い勉強になりました。

4. 細分化されたネットセクターごとの業界での上位概念による考察が上手い。

コマースで言えばネットコマースではなく「リテール業界のネットコマース」コンテンツ業界ならネットコンテンツではなく 「コンテンツ業界のネットコンテンツ」広告でいえばネット広告ではなく「広告業界のネット広告」その文脈の中での考察が上手いと思います。

日本ではネットセクターアナリストはなぜかメディアセクターとの兼任も多いので、「広告業界全体からのネット広告」を扱うのはレポートを読む側も見慣れているはず。ですが小売りセクターやエンターテインメントセクターとの兼任はあまりいないんじゃないかな。それぞれのセグメントの業界動向を押さえるには上位概念の業界動向のうち「インターネット関連比率がどれくらい今後伸びるか?」が重要な指標になると思われます。

そうした観点からの考察がMeekerは上手い。今回のハイライトとなったP25の「ネット広告のポテンシャルはあと5兆円ある」という指摘も、広告業界のネットセクター以外との比較から導き出されたものです。

5.今回のレポートから読み取れるのは「モバイルの時代だね」ってこと

そもそもモバイル業界を中心にしたレポートなんで言うまでもないことですが各セグメントで(1章・8章端末、3章SNS、4章使用頻度、5章広告、6章コマース、7章課金、10章その他)グローバルに(2章、9章)モバイルが伸びてきますよって話。各セグメントの各業界の中でのインターネットの中でのモバイルの現状そして未来。そういうお話ですね。個人的にはJohn Dore提唱のコマース「SoLoMo」の概念がとても気になりますね。

以上の考察によりMary Meeker氏のレポートの強みは「ファクトベースによる全体感の提示」「各セグメントを切り出してセグメントをリ・エディットした中での考察」と読みました。特にセグメントのリ・エディトリアルによるKPIの再設定ってマーケティングセンスが 問われるところかなって個人的には思いました。



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