オンラインマーケティングの手法としてSEOからコンテンツマーケティングに転換が起こる(正確にいうとSEOのみならずコンテンツという選択肢が出てきた)と言われてきましたが、徐々にですがその市場概況が明らかになってきました。RTBの次はコンテンツマーケティングがアドテクのトレンドとなるでしょう。そんな市場概況と今後の課題を整理しました。
コンテンツマーケティング市場の整理:分業化
バリューチェーンとそれに付随する主要プレイヤーを挙げると現状ではこういった感じでしょうか。イノーバはコンテンツ制作会社ですが、セールスフォースなどから2.2億円の資金調達を実施してCloud CMOというオウンドメディア構築から効果検証までできるパッケージツールの提供を開始しています。後述しますが、イノーバは見せ方が上手い企業ですね。
コンテンツマーケティング市場は「コンテンツ(記事)を作り」「コンテンツを流通させ」「効果検証して次に活かす」という「Plan⇒Do⇒Check」のバリューチェーンに分解できます。1つのバリューチェーンに特化したサービスを提供する企業もあれば、サムライトのようにコンテンツ制作からアドネットワークまで提供を試みる企業もある。
市場概要はおぼろげながら見えてきたものの、まだまだ課題の多い市場ではあります。その課題を再確認し、どうすれば解決に近づけるかを本稿では考えていきましょう。
課題①:コンテンツ制作のクオリティの担保と企業の傲慢
まず起点となるコンテンツ制作。ここはいわばメーカーの役割を果たします。企業は社内にコンテンツ制作できる人材を抱えていません。コンテンツ制作担当を採用するか、外注するしかなくなります。そこでオウンドメディア企画運用代行としてサムライトやイノーバのようなプレイヤーが国内では存在します。
コンテンツ制作には2つの課題があります。
■コンテンツ制作の課題
1:質の高いコンテンツを作れる人材(ライター)不足
2:企業側は自社に都合の良いコンテンツを求める(結果つまらないコンテンツが量産される)
まず、ライターの供給量が不足しています。厳密にはこんな構造かなと。
■ライターの階層別供給量
①高単価で質の高い記事を製作できるライター:一握り
②中間層:ほぼ不在。
③数百円でクラウドソーシングで量産するライター:大多数
イノーバがライター1,000名登録というリリースを出していますが、これは③がほとんどであると思われます。ちなみに僕が市場調査がてら登録したら「梅木さんに発注できる仕事は…ほとんどないです」とメールをいただいてしまいましたw
ただ供給量が少ない①を使えば企業にとって高いROIを実現できるとは限らず、③でいかに効果を上げるかという点が肝になります。現にキュレーションメディアは③でそれなりのクオリティの記事を量産しているところもあります。①のレイヤーの層を増やして高単価で受注するのも重要ですが、低単価で一定品質以上の記事を量産できる体制を作るのが現実的な落としどころで、③の記事品質を伴った量産体制を敷けるかがポイントです。
2つ目の課題は企業側の問題です。企業は本誌のような個人メディアと異なり、「この記事を見たこんな人が嫌な気持ちになったらどうしよう!あわわわわ!」とか考えてしまうのです。この点について僕のようなコンテンツパブリッシャー側にとっては異様なまでに敏感で、企業の要望を鵜呑みにしていると何とも面白みのないコンテンツが出来上がってしまいます。
ポジショントーク的な記事を出す必要はないですが、従来の広告がほぼ自分たちの思い通りになっていたのでそういった文化が染み付いているのか、コンテンツに対してもリスクを極限まで回避する傾向が一部見受けられます。この点はコンテンツ制作企業がクライアントを啓蒙していくしかないのでしょうか。文化を変える作業なので、かなり根深く厄介だなと思います。
課題②:ネイティブアドネットワークの普及速度
ネイティブアドネットワークの普及速度とコンテンツマーケティングの浸透速度が比例すると見ています。ネイティブアドネットワークとは記事自体を同一フォーマットで様々なメディアに出稿できる広告メニューです(と僕は解釈していますが間違っていたらすいません)。
まずサムライトが運営するネイティブアドタイムスの記事をご一読下さい。
【国内12媒体】そうだったのか!ここからここまでネイティブ広告【決定版】
この中でコンテンツマーケティングに適しているのは①インフィード型と③レコメンドウィジェット型の2つだと僕は捉えています。
ここ最近までは企業がコンテンツを作ってもそのコンテンツがオウンドメディアにあればオウンドメディアへ誘導するしかありませんでした。しかし、記事単位での広告出稿が可能になると、いわば「勝負コンテンツ」を様々なメディアを通して流通させることができ、コンテンツを通した認知向上の機会が増えます。
インフィード型でグノシーなどのトラフィックのあるメディアに出稿するのもアリですし、outbrainやサムライトが提供するレコメンドウィジェット型(関連記事表示)に出稿して、記事と関連性の高いコンテンツに触れた読者にリーチするのもアリです。
この領域の課題はインフィード型の導入は進んでいきそうですが、関連記事型の導入速度が遅そうな点でしょうか。関連記事型アドネットワークが機能するには、露出側となるメディアの囲い込みがまず重要で、ある程度のinpression数が確保できないと、出稿してもボリュームが小さい。
日本国内の主にビジネス系メディアの合算PVってそんなに多くないはずで、日経を除くと月間10億PVもあるんだろうかという規模感かなと。各メディアが全て導入して、CTR1%CPC50円と想定しても月間流通5億円の広告市場。逆算すると関連記事型の広告市場はどれくらいあるのか、もう少し精度を詰めて考えてみるべきかと思いますので、この辺はサムライト柴田さんに聞いておきます。むしろ柴田さん、ネイティブアドタイムスでそういう記事出してくださいw
課題③:効果検証ができる人材を内製すべきか否か
最後のバリューチェーンは効果検証の段階。イノーバはシステム提供を開始したばかりなので中身は知りませんが、この領域は米国のHubSpotが強いとされています。HubSpotには遠くないIPO説も出ているようです。
しかしHubSpotのようなツールは私も拝見したことがありますが、使いこなす難易度が高く、相当リテラシーの高い運用担当がいないと難しいのではないかと思います。効果検証の運用では①代理店がコンサルティングしながら運用の一部を代行する②リテラシーの高い運用担当者を内部育成するか採用する、の二択となるでしょう。
ここの運用リテラシーはコンテンツ制作者ほど人手不足ではないかと思いますが、リスティングやSEOで高スキルの運用担当者をコンバートするイメージでしょうか。今回紹介するバリューチェーンの中では最も解決難易度は低いかもしれませんが、一定以上のハードルはあるなと。
以上、現在僕が考え得る国内コンテンツマーケティング市場概況でした。各種ツッコミは大歓迎でございます。早く関連記事型ネイティブアドネットワークを入れて本誌の収益性もささやかながら上げたいです。
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