君は投資契約で、ドラッグを飲んだかい?

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本誌読者の起業家の皆さんは資金調達を経験したり今後経験することがあるだろう。めぼしい投資家見つけて相思相愛に。投資委員会も通った。あとは投資契約を結んで着金を待つのみだ。ここまでくると起業家も資金調達活動に疲れて、投資契約によほど不利な文言がなければサインしてしまうという心理は想像に難くない。しかし、投資家のEXIT時の契約条項はよく確認しておくべきだ。

drag-along rights(強制売却権)という条項を入れてくるGCPもいるという情報を本誌ではキャッチした。まずはdrag along rightsという用語の意味を確認しよう。

強制売却権とは、一定割合(通常は過半数)の株式保有者が第三者に会社を売却することにつき賛同した場合、創業者や経営陣などの重要な普通株主は、この売却取引に賛同することを義務付けられる条項。しばしばdrag-along rightsなどと呼ばれる。

これは、投資家主導のEXITが講じられた場合に、経営陣や創業者等がこれに反対することを封じる条項ということができます。経営陣の提案するEXITについては、優先株主である投資家は、拒否権行使という形で自らの権利を守ることができるわけですが、これに加えて、投資家主導のEXITの提案を認めると共に、一定割合の持株割合を持つ投資家の共同提案である場合には、経営陣に拒否権が認められることなく、創業者等の株式を含めて強制EXITされてしまうことになります。

その意味では強力な権利であり、創業者としては、このような権利を投資家に与えてよいものかどうか、よく検討する必要がある。

引用元:Startup Innovatorsから要約

上記引用元では一定割合(通常過半数)という表記ですが、昨今の国内スタートアップ業界では20-30%程度のシェアでもdrag-along rightsが契約条項に入っている場合もあるようです。簡単にいうとこの条項は投資家のダウンサイドリスクを低減するためのもので、ダウンラウンドでEXITした場合でも投資元本を回収しやすいスキームとなっています。

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投資交渉の実務では「drag-along rights付けるぞオラ」というものではなく、複数の条件との兼ね合いのようです。僕も最近投資の仕事はしていますが、ソーシングのみなので契約周りはぶっちゃけ疎いんですよね。こんな項目が交渉条件として掛け合わさるようです。

1:バリュエーションの高低
2:drag-along rightsの有無
3:優先分配権の倍率設定

たとえば放出率を抑えたい起業家は高いバリュエーションで大きな額を調達したがる人が増えています。高いバリュエーションでの出資は投資家にとってはリスクが高い。その代わりダウンサイドリスクを低減するためにdrag-along rightsを入れさせてほしいとか優先分配権を入れて投資元本は回収しやすいスキームを組みたいと主張することもあります。

優先分配権とはダウンラウンドでのEXITとなった際に優先株を持つ投資家がまず投資元本を回収し、残額を元々の株式比率で分け合うというもののようです。下記にケーススタディーを。

The StartupがGCPから3億調達
Valuation:Post10億
GCP持分:30%

■ケース1:20億で売却する場合

前提条件:GCP投資ラウンドより企業価値は上がっている
優先分配権:GCPは2倍

1:GCPの回収分は30%なので6億(投資簿価の2倍)
2:The Startupの取り分は70%なので14億
3:最終的な取り分はGCPが6億、The Startupが14億

■ケース2:8億で売却、優先分配権2倍の場合

前提条件:GCP投資ラウンドより企業価値が下がっている
優先分配権:GCPは2倍

1:GCPがまず優先分配権2倍を行使して3億×2倍の6億を回収する
2:残額が2億円となる
3:残額を70%と30%で分ける
4:残額の取り分はGCPが0.6億、The Startupが1.4億
5:最終的な取り分はGCPが6.6億、The Startupが1.4億

■ケース3:8億で売却、優先分配権1倍の場合

前提条件:GCP投資ラウンドより企業価値が下がっている
優先分配権:GCPは1倍

1:GCPがまず優先分配権1倍を行使して3億を回収する
2:残額が5億円となる
3:残額を70%と30%で分ける
4:残額の取り分はGCPが1.5億、The Startupが3.5億
5:最終的な取り分はGCPが4.5億、The Startupが3.5億

単純化した例ではありますが、上記のケーススタディでは優先分配権2倍であればダウンラウンドでEXITした方がGCPが得するという話になっています。M&AでのEXIT時に投資簿価の何倍以下だと優先分配権2倍が発動されるとか細かい条件はきっとあるんだとは思いますが、理論上は上記のケースのようなことがあり得るわけです。

よって優先分配権を高めに設定しておけば、投資家はダウンラウンドでのEXITでも投資簿価以上の回収が可能になります。

実際に国内のスタートアップ投資の肌感覚としては10社投資して1社が上場、1-2社がM&Aで売却、1-2社が倒産、残りはリビングデッドというか高い成長性は見込めないが未だ頑張ってますよ的な感じではないでしょうか。

ゆえにdrag-along rightsや優先分配権を高めに設定しておいても、M&A自体がない限りは株式譲渡とかでしか投資家は回収できない。ファンドの満期が近づくと他の株主への譲渡か何かしらのM&Aで蹴りを付けたいという投資家心理は理解できます。

ドラッグとバリュエーションの高さはトレードオーフ!

ここ1-2年で国内では投資するプレイヤーも増えたこともあり、スタートアップ投資でのバリュエーションは過熱気味です。バリュエーションの高さを主張する代わりにドラッグを飲む(drag-along rightsにサインする)ことを受け入れる起業家もいるのでしょうが、僕ならボラティリティが高すぎてそこまでリスクを取りたくない。ドラッグは飲まない代わりにバリュエーションを抑えたい派です。

実際の投資契約の実務では人気銘柄であれば高いバリュエーションでもdrag- along rightsも付かず、優先株でも分配権は1倍とかさほどエグくない条件でのディールもあると思います。しかし、案件によってはGCPは優先分配権2倍を付けている場合もあり、それはけっこう起業家に取って不利な条件なのではないかという説が出回っております。

もちろん良識ある投資家はそういった条項も丁寧に説明してくれるでしょうし、契約など相対取引であるため、相互が納得すれば第三者が口を挟む問題ではありません。しかし起業家側の立場に立つと投資家より相対的に資金調達における交渉経験は少なく、他の投資家の選択肢もないという場合は交渉上立場は弱い。ちょっとキツそうな契約だけど、まあいいかという感じでサインしてしまいかねない。

drag-along rightsはそれ自体が起業家にとって絶対的にキツい条件というわけでもなく、契約条項次第では取締役会で合意が取れた場合にのみdrag-along rightsを発動できるなど、スタートアップ側への配慮がなされた場合もあるようです。

本誌をご覧の起業家の皆様におきましては、無駄に高いバリュエーションを通してドラッグを飲むのか、ドラッグを飲まない代わりにバリュエーションを抑えるのか。特にM&AでのEXITを睨む場合には熟考しておかないと、いざEXIT後の取り分が想定よりずっと少ないということがあり得るのでお気をつけください。

そしてGCPが優先分配権2倍の場合もあるというのは、どれだけ高いバリュエーションを許容しているか次第でもあるのですが、ちょっとエグめの契約のようにも思えます。他VCの投資契約でも優先分配権は2倍なのか、それが一般的なのか否かは、本誌では今後調査を進めます。あのVCの優先分配権は何倍だとかいう情報は、私までお送りいただけますと幸いです。契約条件がエグい投資家ランキングとかいう記事でもあると、起業家には有意義かもしれませんね。

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