起業家が資金調達時で悩むポイントの一つに挙げられるのが、第三者割当で放出する株式比率。様々な考え方があると思いますが、こちらもサロンで議題にしたので、参考までに。
まず既に上場している主要なインターネット企業の代表取締役もしくは創業者の持株比率を調べました。結論、持株比率と業績(時価総額)はあまり連動性がないように見えます。
注1:全て敬称略。時価総額はおおよそ。
注2:楽天はクリムゾンと三木谷夫妻の合計
注3:%「-」の表記は1%以下
ではまずサロン内で持株比率こだわらない派のコメントを編集してご紹介します。コメントしている人は全て経営者ですね。
・持ち株比率にこだわり過ぎて事業をスケールさせられなかったり、競合に負けたら本末転倒。一番重要なのは事業を成功させること。そのために必要な資金を集めるのが資本ファイナンス。
・上場時に経営者の持ち分比率が低いと云々というのは、びびり過ぎ。経営者は持ち分シェアで支配権を維持するんじゃなくて、経営者としての実力で維持できるように頑張るべきかと。とはいえ、上場時に経営陣で40-60%くらい(社長が35-40%くらい)あると、その後のことも考えるといいんじゃないかと思う。
・気持ちよく周りの人にもリターンがあって欲しいので、最初の現株からかなり株主多くしています。
・上場後に創業社長が過半数以上持っていると留保金課税があり、過半数持っているからと言って良いとは限らない。
上場時に経営陣で40-60%くらいというのは一つ目安になるなと思いました。現に直近の上場企業は上記で紹介した3社中4社は40%以上持っていますし、老舗インターネット企業も未だに40%以上を保有しているところが6社あります。
次は保有比率はちょっと気にしているぜ派の意見です。
・上場時に創業者が34%持っていないと、市場に評価されないと聞いたことがあるから気をつけている。
・かつて関わった会社で創業社長の持分が10数%まで低下し、残りをファンドに抑えられ乗っ取られた経験がある。ゆえに、過半は維持しなければと思っていたことがある。
【サロン内のコメントを追記】
・持株比率が高くても勝てるビジネスもあれば、資本を削らないと勝てないビジネスもある。それを見極めてどういう戦いをするかだと思います。基本はビジネス構造と競合環境できまるかなと。経営陣の持株比率が薄まっている企業のほとんどが競合環境が厳しいはず。
「34%持っていないと市場から評価されない」に対しては「そんなことないだろ」とい突っ込みもサロン内ではありました。追記したコメントが個人的には刺さったのですが、競争が激しい市場では負けないために大型調達して空中戦で凌ぎを削る必要もあるでしょう。一方でじげんのように資本もあまりかからないビジネスもある。強い競合がいないため、前のめりに資本投下しなくても勝てる市場もあり、そういう場合は持株比率にこだわった方がいいのではないか。という指摘もありました。
多くの場合は起業する際に創業者ないしは共同創業者で株式を持ち合い、その後第三者割当で一定の割合を放出していくのが一般的なエクイティの資本政策です。少ないラウンド数(例えばアーリーとシリーズAだけ)で上場までいければ上場時に60-80%程度の株式を経営陣で持っていることができるでしょう。
現に直近上場銘柄であるじげんとリブセンスはほとんど外部株主から資金調達をしていません。していても個人投資家から若干というレベル。両社とも資金調達を必要としない事業モデルだったという点もありますが、表には加えなかったイグニスも同様にほぼ経営陣のみと銀行借入で上場までいっていることもあり、未上場時に投資家から資金調達していない企業の上場も珍しくはありません。
表の中で昨今のスタートアップの一般的なサンプルに近しいのはフリークアウトになるでしょう。*VOYAGEはポラリスというPEファンド案件であり、あまり一般的な事例ではなさそうです。
■フリークアウト資本政策
2011.12 シード :0.12億円(個人投資家など)
2012.2 シリーズA:3.5億円(ジャフコ、GMOVP)
2013.3 シリーズB:5億円(YJ)上場時経営陣持分:60%強
累計調達金額:約8.62億円?参考記事:画像探しには定評がある丸山ブログ
丸山ブログによると、シリーズAの際の時価総額が約30億円と、けっこう評価高かったんですね。シリーズBでは約100億円付いており、上場時は500億円くらいまで一時期いきましたが、現在は212億円です。未上場で100億のバリュエーションが付くことの是非というのは、出口から逆算して別途記事にすると良いかもしれません。
個人的には昨今の国内のスタートアップ業界では投資プレイヤーが増え投資需要に対して供給が追いついていないことから、一部の人気銘柄のバリュエーションが高騰し、それをマルチプルにおいて自分たちもメルカリが200億なら200億のバリュエーションで調達できるだろと勘違いする起業家が増えてきている状況な気がします。スーパーサイヤ人の資金調達を自らに当てはめないことをお勧め致します。(あくまで例であり、実際のメルカリの企業価値は知りません)
下手にバリュエーションを上げると次のラウンドや出口で苦しむので、シリーズAとかでは無難なバリュエーションでそれほど放出する株式比率も気にしないで市況が良いうちに調達しておくのがいいのではないかと思います。アイディアレベルだけで足下の事業数値が付いてきていないのに高いバリュエーションで調達すると、その後事業が伸びないと必ずダウンラウンドでの調達を余儀なくされます。
上場を見据えてシリーズCくらいまで仮にやったとして、40%程度の持分を創業者が維持できるような資本政策の設計を初期段階から考えるか。上場時に持分20%切ってもガンガン調達して事業がスケールする機会を逃さないようにすべきか。
一部の人からは、持分比率が少ない起業家は評価されないという説も聞きますが、持分比率が低いと企業経営の安定性はたしかに下がるかもしれませんが、それよりもアグレッシブに攻めにいく方が企業も大きく成長するし、結果的に株主にとっても創業者にとっても良く、利害関係者の利益が最大化されるのではないかと思います。
起業家であれば誰しもが一度は悩む話だとは思う持株比率。皆さんはどう思われますか?上場時に過半数を維持できる設計の資本政策を組むべきか、持分は気にせずガンガン調達していくべきか。
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