話題のスタートアップであるソーシャルランチが、2/1に新企画である「就活ランチ」をリリースする。
ソーシャルランチとはFacebook連携で友人とペアを組み、毎朝10時に「このペアとランチをしてはいかがでしょうか?」と提案され、ランチのお誘いを申請し、相手が了承すればマッチングが成立するというサービス。本誌でも過去にこのような記事でソーシャルランチを紹介している。
就活ランチとは学生のOB訪問を加速させるような企画であり、学生は約100社約20カテゴリーから希望する相手へランチの申請を出すことができる。従来とソーシャルランチのようにペアではなく、一人でも参加可能である。
この就活ランチがリリースされる一方で、類似サービスと思われる「ヒルカツ」も2/1にリリース予定となっている。確かな情報筋によるとヒルカツのサイトのクリエイティブ作成に関するある疑惑が浮上している。
その疑惑の真相に迫り、かつ「スタートアップのフォロワー戦略」について本稿で考察する。
▶徹底的なパクり疑惑のあるヒルカツ
ヒルカツのサービス内容自体がソーシャルランチの内容に酷似していることはサービスを見ればいうまでもないが、確かな情報筋によるとトップページの写真の撮影場所のカフェがソーシャルランチ大学版の写真の撮影場所のカフェと全く同じであり、出演モデルまでソーシャルランチの写真に出ているモデルに声を掛けていたという噂を耳にしており、この件が一部のスタートアップ界隈で話題になっている。
*実際のクリエイティブに同じモデルは起用されていない。
パクり自体は特に参入障壁が低いWeb業界においてはよくある話ではある。
しかし、ここまで徹底的にパクろうというところはあまり見たことがない。
(湯上がりお姉さんバナー以外は。。。)
メディアや業界内での噂によるレピュテーションリスクを鑑みるとあまりメリットはないように思えるが、ここまで徹底的なパクりに走った意味があるのだろうか。逆にここまでやるのはすごいな、、、と感心します。
▶競合の模倣は資本力がある大企業の戦略
競合の模倣はWeb業界以外でもある話ではあるが、特にスピードが速いWeb業界におけるフォロワーの模倣戦略について考えてみる。
■大企業とスタートアップでは後発者の戦略は異なる
Web業界の競合の壮絶な争いといえば共同クーポン購入のGrouponとポンパレがあったが、初期に巨大資本を投下してスケールしたGrouponに対して数ヶ月遅れでリクルートが本気を出しポンパレが猛烈な追い上げをみせ、2社の寡占状態であるという市場を創り出した。
このモデルのセンターピンは「取引高の最大化」であり、掲載企画を増やし広告出稿も増やすことでコンテンツと閲覧ユーザーのサイクルを肥大化のサイクルを回すことであり、後発で唯一追いついたポンパレは既存のリクルート事業とのシナジーと大企業ならではの資本力があったからこそフォロワーでも追いつけたといえる。
Grouponも国内では最初に参入したわけではないが、投下した資本量では独立系として先行者優位性があったといえる。
この事例のように資本力がある大企業が先行者であるスタートアップの戦略を模倣して、徐々にシェアを奪い肉薄していくという図は合理的な戦略といえるのですが、後発者がスタートアップで大した資本がない場合に機能する戦略ではないと思われる。*ちなみにCampfireの模倣サービスがすぐに潰れたという噂もある。
この事例は資本力に自信があるゆえに機能するフォロワー戦略の好例いえるであろう。
■今回の事例
ソーシャルランチとヒルカツのケースでいうと、ヒルカツはローンチ前にある程度大学生の囲い込みをしているようであるが一方でユーザー数を既に2万人強抱えているソーシャルランチの方が学生と社会人のマッチングでは分があるのではないか。
今回のいわゆる「ライトなOB訪問」 というサービスにおいて利用メリットがあるのは学生の方であり、学生ユーザーを集める方が難易度が低くOB訪問を受ける側である社会人のストックが多いソーシャルランチの方がマッチングの確度が高いのではないか。
学生ユーザーの獲得においてはソーシャルランチは今回の企画ではすごい時間割との業務提携がある模様であり、学生ユーザーの獲得という点でもヒルカツより優位性があるものと思われる。このモデルにおけるセンターピンは「マッチング数の最大化」となり囲い込んでいるユーザー数やマッチングレコメンドロジックが重要となる。
提供するサービス内容にほぼ変わりがないのであれば、後発のヒルカツは厳しいだろう。ソーシャルランチにはない機能や新たな軸で差別化していくのであろうか。
今回の事例に限らずレッドオーシャンになる市場に関しては、その事業者がセンターピンを捉えているのか本質的な価値提供を考えているのかは結果としてサービスのディティールに反映されてくるので、特に投資家はその点に注目すると見極めがしやすくなるかもしれない。
▶スタートアップのフォロワー戦略
ただし先行者がいる市場で戦うつもりのスタートアップは今回の事例のような「単なる模倣、しかもレビュテーションリスクの高い模倣」ではなく、先行者とは違った価値軸で戦うことをお勧めする。さらにはいかに先行者を巻き込み市場を拡大していく啓蒙活動をすることがスタートアップのフォロワー戦略としては適切なのではないだろうか。
同じ分野で協調して市場を拡大させる取り組みをしているスタートアップをいくつか知っている。真っ向勝負で全く同じことをやって先行者に追いつき追い越せるのは大企業の資本力あってのことであり、市場拡大のフェーズではむしろ真っ向勝負は後発参入企業にとってもマイナスとなり、資本力やアライアンス力の弱いスタートアップが取るべき戦略とはいえないであろう。
この「お手軽OB訪問&ミートアップ市場」は、就活の文脈では既に茶会人訪問、ミートアップ文脈ではcoffee meetingがローンチを控えている。Facebookの普及が進むことで実名をベースとしたミートアップ・サービスが活性化しており、とりわけライトなミートアップであるランチは需要が高いと思われ今後のこの市場の盛り上がりに注目が集まる。