不動産領域はスタートアップが崩し切れていない、最後の大きな市場とも言われています。2014年3月14日にフジスタートアップベンチャーズがSUVACOと資本業務提携を発表し(フジの出資額は非公開ですが、数千万円単位と予測)、フジメディアホールディングス傘下の株式会社扶桑社と「リノべりす」という新サービスを始めるという記者発表を見てきました。
今朝ベンチャーナウを見たところ、モバイルインターネットキャピタルとフジで合計1.2億の出資のようですね。何気に便利ですよね。ベンチャーナウ。不動産領域全体から個別銘柄や今後可能性のある市場を本稿で考察します。
賃貸・売買市場:脱ポータル&ダイレクトマッチングの流れ
まずは賃貸・売買市場。賃貸物件を探す時はまずSUUMOやHOME’Sを見るというのが一般的な流れ。しかし仲介会社が登録して掲載するため、掲載物件の被りも多く、成約した物件が掲載されたままであることもあり、ユーザー視点では物件を探しやすいとは言い難いですね。
SUUMO:掲載課金
HOME’S:月額掲載可金+問い合わせ課金(参考)
参考までにHOME’Sを運営するネクストの不動産事業のIR情報を貼っておきましょう。(2014年3月期第3四半期決算説明資料より抜粋)
この非効率性の打破を期待されているのがスタートアップ業界ではietty。不動産屋の営業マンが条件に合わせて物件を提案してくれるスタイル。このもふもふしたやつ、着ぐるみまであるらしいですよ。
賃貸は脱ポータルの流れが加速するでしょう。Winなのはポータルだけで、明らかにユーザーの利便性悪い。掲載物件数が増えれば増えるほど事業者は儲かるが、ユーザーの利便性は下がるんじゃないかな。
iettyのようなコンシェルジュ型サービスは一気にはスケールしないでしょうが、じわじわ来そう。不動産って賃貸でも高い買い物である割には、(高級賃貸でも)営業マンの質が平均して低い。離職率が高いからとか理由はありそうですが、ディーラーくらいには営業マンの質を引き上げた方が良い。
売買市場はまだオンライン上で巨大サービスが存在せず、海外ではCraigslistで売買されることもあるとか。不動産売買は仲介業者が買い手と売り手両方から仲介手数料を抜くモデルなので、商売的には美味しい。今後は消費税増税の観点からも高額商材のC2C需要が見込まれ、不動産売買のC2Cはアリですよね。インキュベイトキャンプでもビジネスプランがありました。立ち上げ難易度は高いでしょうが、社会的必要性の高い事業領域だと思います。
新築戸立て・リノベーション市場:情報の非対称性が強い
賃貸・売買と少し勝手が違いそうなのがリノベーション市場。リノベーションの場合、物件の選定。新築戸立てでもそうですが、建築士やリフォーム業者に発注するという作業が発生する。しかし、誰に発注すればいいかわからない。その市場を埋めにいくのがSUVACOのようなプレイヤーになりそう。
情報量は限られますが、リノベーション会社のポートフォリオをPinterestライクに眺めて集められ、イメージを沸かせながら発注先を選ぶ。新築やリノベーションだと数千万円単位の金額が動き、その数%が建築士に入る。その中から手数料を取る成果報酬モデル。
新築物件やリフォームはほとんどのユーザーにとっては人生で1、2回程度の買い物であるがゆえ、情報の非対称性が強い。これは結婚式市場と似ている。検討タイミングが人生の数ヶ月程度ですが、検討時は意思決定に結構な情報量を必要とする場合も多いと思います。その際のファーストチョイスとなるサイトになり、ユーザーと建築士がSUVACO上でマッチングすればマッチング数は少なくても売上はしっかり立ちますよね。
■SUVACOのビジネスモデル仮説
新築住宅施行料総額:5,000万円
内デザイナーフィー:500万円
SUVACO手数料 :50万円
年間200人決まれば年商1億。ちなみに年間の新築施行物件数は80万件で、過去30年間で7割の物件がリフォーム・リノベーションしているらしいことから算出すると、ざっくりと年間のリフォーム・リノベーション件数は40万件くらいあるのでは。リノベーション市場自体、2020年までに現状の7兆円規模から倍増する説もあるそうです。海外に比べて日本は新築施行数が以上で、リノベーション比率が低すぎるらしい。
リフォームの定義:主にトイレ風呂などの修繕を意味する
リノベーションの定義:間取りなどもガラッと変える
メディア事業なので如何にサイト認知を上げるかが重要。今回発表のあったリノベりすは日本唯一のリノベーション専門誌である扶桑社の雑誌リライフプラスのコンテンツを活かしたメディア事業。既存のコンテンツを活かしたメディア立ち上げは良い事業シナジーですよね。SUVACOは新築寄りでリノべりすはリノベーション寄りという棲み分けらしい。
SUVACOはメディア事業なので時間がかかると思いますが、成約単価が高いことから売上が立ちやすく、市場もけっこう大きいので数十億単位で売上が上がりそうな事業ですね。投資で張るには手堅く合理的だと思う。
インテリア市場:メディアコマースに勝機?
最後に不動産の周辺分野といえるインテリア市場。自分たちで在庫を持つのではなく、メディア的な展開からアフィリエイトで収益を立てるビジネスモデルが主流。例えばリクルートのタブルームはECサイトに見えなくもないですが、リンク先は他サイトなのでアフィリエイトです。
NAVERまとめ風な記事を中心にメディアコマース的な展開をしているスタートアップがiemo。気に入った商品をクリップして、遷移先で購入できる場合もある(という感じだと思う)
SUVACO同様、引越前後にインテリアは揃えることが多いと思うので、閲覧のLTVは長くないと思いますが、ピンポイントで需要はありそう。
以上、ざっくり不動産領域3つの市場を見てみました。不動産は成約額が大きいので、マッチング市場に相当な潜在需要があると見ます。立ち上げ難易度は相当高いんでしょうが。C2C売買市場はアリですよね。この市場のプレイヤーが出てくることに期待。
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