「書きたいことを書けばいいんだ」
某メガメディア編集長は僕にこういった。
僕がこの「The Startup」を立ち上げた時に、既存勢力の「Tech Crunch」(以下TC)や「Tech Wave」をベンチマークして、駆逐してやろうと言っていたことがある。(小竹向原での某会合でTSの立ち上げは決まった)
立ち上げて半年。大した記事数でもないしプロモも何もしてないわりには
決して多くはないがマニアックな読者の方々が本ブログを読んでいただいており、嬉しいことにオフラインイベントで「読んでます!」的なことを言われることも増えた。
周りでも「ソーシャルウェブを拓く未来」や「Dont’t be lame」など
スタートアップ関連ネタも扱う面白い個人ブログも増えていき、一つ気づいたことがある。
既存のテック系メガメディアの影響力って薄れているんじゃないか?
個人ブロガーにパワーバランスが徐々に寄っていっているのではないか?
既に個人ブロガーたちはメガメディアを駆逐しているのではないか?
この考え方の根拠と背景になるものをご紹介する。
■1. KPIがPVから「ReTweet」や「Like」や(「Grow」?)のソーシャルバズへと移っている
今まではメディアの影響力の指標としては主にPVしか測れませんでした。テレビの視聴率とほとんど一緒ですね。しかしRTやLikeなど読者に反応をおこさせた回数が可視化できるようになり「その記事に対する興味関心や注目の度合い」がわかるようになりました。
記事を読んでRTやLikeする人のモチベーションは「良記事だったので他の人にも読んでもらいたい」というものが大多数でしょう。もちろん良かったからといってソーシャルメディア上でアクションしてくれる人の方が
まだまだ少数派でしょう。
PVベースではただ単に記事を読まれているだけで「読者にとってどれくらい価値があったか?」を測ることはできず、とりあえずPVが多くて読まれてはいるものの、惰性で読んでしまい、インパクトにかけて記憶に残っていない。時間の無駄だったかも。という経験は誰にでもあるはずです。サラリーマンがとりあえず日経読んどけといっているのと一緒です。
ソーシャルバズをKPIとした時、TCの方が明らかにPVは多いはずなのに
ソーシャルバズは個人ブロガーに負けているという記事が少なくないどころか頻発しているように見えます。
ソーシャルバズで記事が「回った」場合は記事単体に対するPVは一気に伸びますが、メディアとしての総合力では、歴史や記事数があるTCが日本のテック系メディアではトップでしょう。そのTCがなぜソーシャルバズをKPIとした時に個人ブロガーに駆逐されているのでしょうか?
■2. メガメディアと個人ブロガーの記事の質(エッジ)
メディア特に雑誌のような記事メディアの場合は、編集長の編集方針が全てであると思います。メガメディアは既にそれなりの読者を抱えており「それなりの読者数にウケる記事」を書かなくてはならないという強迫観念を持ってしまいがちになりいつのまにか新しいことに挑戦できなくなっているのかもしれません。大企業病ですね。
僕の持論としてはどんなメガメディアになっても「それなりの読者数へのウケ」を狙ってはダメだと思っています。今顕在化しているそれなりのニーズをなぞっていったのでは、無難なメディアとなり新鮮味がなく面白くないでしょう。
たしかに現代であればFacebookネタはそれなりの読者数へウケるでしょうが、TCではなぜかIBMの決算発表も記事になっています。今の日本のTCの読者層でIBMの決算に興味がある人はいるのでしょうか?この辺が「顕在ニーズをなぞっていたと思っていたら、そんなニーズはもうなかった」という例になるんじゃないかなと思います。
結論としてはメガメディアはメガであるゆえに、新鮮味がなくなっていき時代遅れなものになっていき、面白くなくなる性質があるのではないか。
というのが僕の仮説です。
一方の個人ブロガーはどうか。もちろんPVも読者もメガメディアほどはありません。自らの感性が全てです。何をテーマに書くかは全て自分で決めて良い。この自由度の高さこそが創造性の源泉であり「面白いと思われる」記事が量産される背景にあるのではないかと思います。
メディアの役割とは何でしょうか。僕は読者が読んで「タメになった」とか「面白かった」とか、そういうフィードバックをもらえることが個人としての「書きがい」を感じますし、それこそが本質だと思うのです。
「つまらない記事を量産して、人の時間を使わせてしまう」ことは罪なことだと思います。読者のほとんどはキュレーション力がまだ相当低いでしょうから、惰性でいつも読んでいるメディアは読んでしまう人が多いでしょう。「うーん、今日もなんかパッとしないな」そんな感想を抱きながらメガメディアを購読し続ける人は多いでしょう。
メガメディアにはメガメディアの「それなりの数の読者にウケるものを届ける」存在意義があると思いますが、同時に「つまらない記事を量産すると、人々の時間を浪費させて罪になる」
こともあります。
「テレビ、つまんねえ」とここ数年で特にテレビ批判が一般層ですらありましたが「TC、つまんねえ」とumeki界隈で最近よく聞くのはこの現象と同じ現象でしょう。
■3. 僕らは既にTech Crunchを駆逐している?
「The Startup」を始めた頃。いやその前の僕の嬉しい体験として「今回の記事、Tech Crunchより面白かったよ」と言われたことがある。スタートアップやテック系の個人ブロガーだと皆一度は言われたことがあるかもしれない。この一言には本質が詰まっている。
メガメディアの背景にはメディア特有の「経営の苦しさ」もあり、良質なブロガーのリクルーティングに苦しんでいるという背景がある。独白してしまうと僕も自分で少し営業したからか、Tech Crunchでのライターデビューの話がつい最近あった。何本か軽く記事も書いてみたし、ネタも提供してみたが全てボツだった。
仮に記事が載っても、報酬はとても生活できるレベルのものではない。TCが持っているのはPVと読者だけであり、TCのPVと読者に縛られて記事の自由度が狭まり、しかも対価としての報酬はもよろしくはない。
僕もいきがっているとはいえ普通の人間である。TCにいい記事を載せれば今までよりソーシャルバズも稼げて、自己ブランディングにはなる。そんなせせこましい計算をしていた。さらに腹の内を明かすと、TCで名を売って 、TCが自分の記事に依存する状態にしてから、独立して読者を自分個人に引っ張る。
「打倒TC」とLoops TVで連呼しておきながらの、TCライターデビュー計画の裏側にはそんな思惑もあった。我ながらかなり大胆な戦略である。
僕は現代を取り巻く環境と「メガメディアで記事を書くこと」のトレードオフを考え「このメガメディアに記事は寄稿しない」というジャッジを下した。単純にTCの編集方針に沿った記事は僕には書けないということだ。あくまでもumekismである。
遠回りに見えるかもしれないが、自分の限りあるリソースを最適化するには(そもそも私はフリーランスではなくザ・サラリーマンです)今まで通りTSを週に1本書くというのがベストなのです。
そして構造的にメガメディアはもうもたない。個人ブロガーがメガメディアよりも「質のいい記事」で読者を魅了していき、メガメディアを駆逐するのも遠くない未来のことである。いや既に駆逐しているのではないか。
「The Startup、Tech Crunchより全然記事の質が良くて面白いよね」
この時点で既に駆逐していたのかもしれない。
今回の僕のジャッジのように、今後「PVと読者数」だけでは 「自由度」をトレードオフしてしまうと、良質なブロガーをメガメディアはリクルーティングできないであろう。唯一の解になりそうなものは「相当な報酬でリクルーティングすること」であるが利益構造上それも難しいであろう。
■4. 今回の記事の最大のメッセージ:「俺たちがメインストリームだ」
自分自身のことであったので自らの例を引き合いに出しましたが、僕より良い記事を書いている個人ブロガーは(きっと)たくさんいます。そんな中で本記事での考察を経た上で下記のメッセージを送りたいと思います。
個人ブロガーたちよ、メガメディアに媚を売らず、今まで通り地道に質のいい記事を書こうぜ。自由度を失わない方が本当に書きたいことを書ける。きっと誰かが見ててくれるから。
メガメディアが機能不全に陥るのは時間の問題かもしれないから。個人ブロガーたちが強力な連携を組めばメガメディアにきっと勝てるぜ。いや、勝とう。俺たちがメインストリームになるんだ。
ということで個人ブロガーの方々、お会いしましょう!徒党を組んでメガメディアを駆逐しようではないですか!
既に駆逐していたかもしれないTech Crunchに対して「打倒Tech Crunch」と連呼しているLopps TVに出演時のumekidayoの動画と共にお別れ致しましょう。*01:50:00くらいから登場しています。*01:58:00くらいで「打倒Tech Crunchの連呼」が始まりますw
ペンは剣より強し。
僕は母校のこの理念が好きだ。