ここに書評は書かないというポリシーがあったのですが、方針を変えてお送りします。私自身の領域とすべく鋭意開発中である「コンテンツマーケティング」に紐づくtipsを多く得られたので、前半で書評、後半で私個人のコンテンツマーケの考え方を示します。
先日この本の著者である中川淳一郎氏のお話を伺う機会がたまたまありました。後日、この「ウェブで儲ける人と損する人の法則」を購入して読んでみました。これが今の自分にとっては目から鱗でした。本当は紹介したくないのですが、多くの人が知った方が有益だと思い、ご紹介します。
Webウケする要素を活用した人に読まれる記事の作り方
中川氏は複数のニュースメディアの編集を手掛けており、手掛けた本数は累計数万本にもなるそうです。中川氏は「ネットユーザーに読まれるための記事」を考え尽くしており、実際に多くのPVを獲得する記事を量産しておられるようです。「ネット文脈」でウケる要素を本書で11個紹介されていらっしゃいますが、私が印象に残ったものをここに挙げます。
・話題にしたいものがある/突っ込みどころがあるもの
・B級感のあるもの
・非常に意見が鋭いもの
・TVで紹介されている/芸能人関係のもの
上記以外の要素として明記があったエロ/美人や時事性のあるものはウケるよなとは思っていました。上記の4つも薄々気づいていましたが、上記がウケる裏付けとなる事例が本書で紹介されており、一読を勧めます。
ここで私がお伝えしたいのは中川氏がいかに「ネット文脈」で読まれる記事の要素を普段からネットを見て算出しているかということです。ニュースや記事というのは切り口一つで大化けするものであり、上記の要素を組み込むことによって莫大なPVを稼ぐ記事に化けることもあります。タイトル一つでその数字は大きく変わり、まさに神は細部に宿るということを事例で実証されています。
私のような個人ブロガーやWebでモノを書く人にとっても 「より多くの人に読まれるためには」というマーケットイン感覚は非常に重要であり、上記の要素がそのまま適用できるため、私にとっては目から鱗でした。そしてこの要素は後述するコンテンツマーケにも大いに必要になります。
大手Webサイトがニュースメディアを自社で保有する理由
Yahooをはじめポータルサイトは上手くいっているか否かは別としてほとんどの場合はニュースサイトを持っています。この理由は中川氏曰く、「ニュースがPVを稼げるから」だそうです。ニュースで稼いだPVが各々のサイトの媒体価値を上げ、広告費を増やしているようです。
私個人はここまでニュースが媒体価値に寄与しているとは思わず、無意識にクリックしていました。上記の「webでウケる要素」が頭の片隅に入ってから、webのニュースに対する見方が180度変わりそうです。「何がウケるのか」という視点に。特に書き手の方であれば「なぜウケるのか」という視点を持ってニュースを見ることをお勧めします。
コンテンツマーケティングの定義
上記の項までが本書を読んでの感想や気になった点。本項からは本書の学びからの応用と、今まで温めてきたコンテンツマーケの考え方をご紹介。(中川氏は「コンテンツマーケ」という言葉を使用しておられませんので本書と直接な関係はございません。誤解なきように。)
コンテンツマーケを私はこう定義します。
コンテンツマーケティングとは、自社サービス(webサービスやモノを販売するメーカー)に有益なコンテンツを量産し、トラフィックを稼いだりCVRを高めたりするもの。
企画や切り口がコンテンツの起点となり、表現方法はサービス記事や写真、企業サービスに紐づいた生活感のあるつぶやきなどでしょう。(ハム係長あたりやスーモの「もふもふ」あたりが成功事例かと)この中でも私自身が「書くことが好き」ということから、自社サイト内に保有する専門的な記事によるコンテンツマーケの可能性を考えてみます。
従来のwebプロモーション手法とのチャネルミックス
従来のwebプロモーションといえば「SEO」「リスティング」「ソーシャルメディア」あたりがメインといえます。Webサイトでのユーザーの動きに各施策を当てはめると下記になるでしょう。
SEOやリスティングは以前「サイトへの流入」を稼ぐために必要なものです。厳密にいえばSEOとリスティングは補完関係にあり、SEOで拾えないワードをリスティングで拾うというのが理想的な運用かと思います。流入施策としては依然重要であることに変わりはないでしょう。
ソーシャルメディアに関していえば、あくまでコンテンツありき。先端的なFBページ運用企業は自社の強みを活かしたコンテンツを作成してソーシャルメディアに流しています。良質なコンテンツだけがあってもそれを拡げるツールがなければ意味がないですし、中途半端なコンテンツでソーシャルメディアを運用してもROIは低い。ソーシャルメディアと良質なコンテンツは表裏一体といえるでしょう。
CVRを上げ、かつロングテール性のある記事コンテンツ
記事コンテンツの話を具体的にしましょう。上記の図の通り、記事自体がソーシャルメディア上でバズり、PVを確保することで対象サービスに対する流入が増えて「認知」が上がります。それだけでなくアーカイブされた記事を読むことによって、そのサービスについてより「興味」が沸き、サービスを使ってみるか(購入するか)「検討」し、ついには「行動」に移るようになります。
「興味」「検討」「行動」はSEOやリスティングでは補完できません。こうしたCVRを上げるコンテンツへの日常的なコンタクトポイントとして、ソーシャルメディアが機能すると私は思っています。「従来のSEO的なbotで大量生産するバックリンクコンテンツ記事」ではなく、「ユーザーのCVRを上げうる良質なコンテンツ記事」が重要です。良質なコンテンツ記事はトラフィックを集めれば、そのままSEOにも寄与します。
私の周りの良識ある方々は記事コンテンツマーケティングの重要性に気づき、既に実践されていたり導入を検討されている方もいらっしゃいます。 私自身は昔所属した会社でこういうコンテンツを作成し、PVへの寄与も去ることながら、このコンテンツがアクション要因になったという声を聞いています。何よりもアーカイブして数年使えるというストック性がボディーブローのように効いていおり、リスティングなどと比較するとロングテールでの時間性を考慮した上でのROIは相当に高いでしょう。
コンテンツマーケに「1PVは1PVの価値」は適用可能か?
中川氏の書に「内容が悪かろうが良かろうが1PVは1PV」という考え方が紹介されており、広告費を稼ぐことが目的であるニュースメディアにおいては正しい考え方であると思います。
記事コンテンツマーケティングにはこの法則は適用できないかなと。最初の流入となるのは「記事タイトル」が肝となるため、記事タイトルは当然トラフィックを稼げるように配慮すべきです。一旦記事にランディングした後は、いかにターゲットにとって役立つ内容を提供して、読んでもらえるかが重要。その運用の際には直帰率や滞在時間がKPIになるはずです。
広告費が支えるニュースメディアは「1PVは1PV」ですが、サービス利用者購入者の潜在層が閲覧する記事コンテンツマーケでは「1PVは1PV以上の価値を生み出しうる」のではないか。 というのが私の仮説です。とにかく記事コンテンツは質を追求する方針がいいのではと思った次第です。
*中川氏は記事コンテンツマーケについては触れてないため、批判ではございません。悪しからず。ちなみに中川氏は現実世界では「うんこ食べるの」とは仰りません。悪しからず。
質×流入数=コンテンツマーケROI最大化
質の高い記事を量産するのが私の記事コンテンツマーケの考え方のベースですが、その上で中川氏の「Web文脈でウケる要素」を活かした「人に読まれる記事の作り方」ができるとROIは高まります。潜在ターゲットの心理を動かすのが記事コンテンツマーケですが、その前の流入数を稼ぐこともそもそも重要です。記事の作り方の視点が大変参考になりました。PVを取りに行くトラップの張り方などは特に秀逸でした。
本書は私にとっては実務的に非常に役立ちましたので、私と同じようなwebで物を書く人にはぜひ一読して頂きたいですね。「ウェブで儲ける人と損する人の法則」、全力でお勧めです。中川さん、貴重なナレッジをありがとうございました。
私が今後挑戦していきたい分野ですので、ご興味がある方はぜひご連絡下さい。企画から執筆まで一気通貫して手掛けたいです。