最近はインターネット業界以外に関心があり、気になるなと思ったプロダクトがいくつかありました。
一つは高級茶ボトリングの「ロイヤルブルーティー」、もう一つはBean to Barのチョコレート「ミニマル」です。
2つの共通項は「嗜好品のプレミアム市場」であり、「成熟市場ではなく今後急成長が見込まれる市場」であることです。
高級茶ボトリングのロイヤルブルーティー
高級茶ボトリングのロイヤルブルーティー。ワインボトルで5,000円〜2万円で販売する高級茶です。
最近引っ越してホームパーティーをする機会や、ホームパーティーに出向く機会があり、顔に似合わず(とよく言われます)お酒が飲めない私は、自分で飲む用かつおもてなし要素も兼ねて、こちらのお茶を仕入れました。
話のネタにもなるし、ワインなどが飲めない私にとっては、とても良い位置付けの商品。高級レストランだとワインペアリングがあるお店もありますが、その際に私のように飲めない人は辛いのですが、たまにお茶のペアリングがあり、その際にこちらのロイヤルブルーティーのお茶が使われていることがあります。
高級茶市場はやや斜陽なようなのですが、一番茶という希少な茶葉を用いた高級茶ボトリングは、ギフトとしても良いと思いますし、グローバルでもサードウェーブでコーヒーが少し飽きられている説もあり、需要が伸びそうなので、成長市場に対して、市場を拡張できるようなプロダクトで、素晴らしいのではないかと思いました。
下記の本を読んで、ブランドの思想や背景を学びましたが、1本30万円のお茶もあるようで、私が元来好きなプレミアム戦略の良い事例を学ばせてもらったなと感じました。極論、高価格で売れたという実績を作ることが、プレミアム戦略の1つの肝なのですよね。プレミアム戦略にご関心のある方は、読んでみると良いかと。Kindle本はないのですが。
プロダクトもブランディングも独創的なミニマル
Bean to Barの板チョコを提供するミニマル。以前から知っていて、一度買って食べたことがありましたが、最近こちらの山下社長とお会いする機会がありました。卒業年度は違いますが、同じ慶應出身で同い歳。
いろいろお伺いしたので詳細は書けませんが、高級チョコレートはバレンタイン時期などすでに消費市場がある中で、私の目から見ると「パッケージビジネス」なだけで、チョコレート自体の各社での差異はあまりわかりません。私がバカ舌なだけなのか。
ショコラティエエリカのミントチョコは独創性の高い商品で私も好きですが、ショコラドゥアッシュと、ジャンポールエヴァンとデルレイのチョコレートの差異はあまりわかりません。ボンボンショコラが可愛い的な感覚と、パッケージが可愛い的な感覚で消費されている印象で、真にプロダクトでの差別化ができない市場という印象があります。
現にバレンタインで本命チョコをもらっても、「どういうチョコレートなら本命感があるのか」が全然わかりません。多少女子力が高い私でもわからないので、世の多くの男性はわからないのではないでしょうか。
チョコレートの消費自体も伸びているらしく、高級チョコレート市場というのは今後伸びそうな市場だと感じています。ミニマルはプロダクトとしてのチョコレートの独創性もありますし、ブランディングも巧みなので、グローバルでもある程の勝算を見込めると思います。
直営店は富ヶ谷、銀座、白金高輪ですが、ECもあるので、ぜひ。パッケージも洒落ています。カカオ濃度の解説とかを聞きながら食べたのですが、楽しめました。自分が好きな味を探してみるのも、良い楽しみ方かなと。
なぜ嗜好品プレミアム市場に注目するのか
ロイヤルブルーティーとミニマルという2つの商品を紹介しましたが、これらに共通する「嗜好品プレミアム市場」に私が注目する背景を説明します。
大量生産大量消費時代が終わっていき、「モノを消費する理由」が必要な時代に入ってきています。その一つの解として「ストーリーテリング」的なモノに数年前から注目が集まっていますが、「ストーリーテリング」はあくまでも「手法」の話であり、それを伝えるプロダクトがないと元も子もありません。
ロイヤルブルーティーはお茶ですが、ペットボトルのお茶と比較検討して買うことはありません。むしろ、手土産としてミニマルのチョコレートの方がペットボトルのお茶よりも競合するでしょう。
お茶やチョコレートそれ自体はコンビニでも売っていて大量生産大量消費のコモディティー市場でもあります。その中でも、本当に良い上質なモノを作れれば、コモディティーから抜け出すことができ、プレミアムな価格も消費者から認められやすくなります。現に私はロイヤルブルーティーのお茶を「うわ、高いな」とは全く思いませんでした。むしろ、「手土産としてちょうどいいの見つけた!」という感覚。
モノが溢れていく時代では、オリジナリティのあるモノの価値が相対的に上がっていきます。その高級なお茶やチョコレートを味わうことを楽しむという使い方もありますが、「そういうモノを知っている私」という、セルフブランディングに取り込むという使い方もあります。
Q:安定の虎屋の羊羹と、ロイヤルブルーティー。手土産にどちらを持ってきた人をセンスが良いと思うでしょうか?
虎屋の羊羹を否定するのは気が引けますが、「虎屋の羊羹的なシチュエーション」であれば正解なのですが、大抵の人がすでに知っているプロダクトです。それよりもまだ相手が知らない可能性があるものを手土産としてお持ちしたほうが、相手の関心を引けるし、相手にとって新しい知識にもなるかもしれない。
よって、虎屋の羊羹を持ってきた人より、受け取る相手にとっては「この人はセンスが良い」と思われる確率は上がると思います。そこまで考えられる人と、何も考えずにとりあえず虎屋の羊羹の人を比べると、どちらが仕事ができる人なのかは、察しがつくと思います。「他人と一味違う手土産のラインナップ」を持つ人は、仕事ができそうだと思いませんか?
「センスが良い」の定義も人それぞれではあるのでしょうが、私は「TPOに添いつつも、相手が好きなモノや相手がまだ知らない可能性があるモノを紹介すること」とここでは解釈しました。
消費市場が成熟したという文脈の中では、単純なモノのみならず、差別化やストーリーが必要となり、その起点となる「質の高いプロダクト」の需要がやや顕在化してきていると感じます。
単に珍しいとか、ストーリーがあるというモノは化けの皮がいつか剥がれるので、まずは当然ながらプロダクトのレベルがずば抜けていることが、大切だと思います。
その点、ロイヤルブルーティーとミニマルは、とても良いケーススタディーではないかと思いました。お茶やチョコレート以外の、こういう今後成長しそうな嗜好品市場を探していきたいなと思います。
すでにブランド化されているでしょうが、塩とか山葵とか、そういう調味料市場も良さそうですね。
最近、港区女子に「花山椒食べたい」と言われて、花山椒のしゃぶしゃぶを食べに行きましたが、花山椒的な市場って「創出できる」気もします。上述の書籍には、どこかの富豪が白トリュフを33万ドルで落札したのをきっかけに、白トリュフ価格が高騰したという話が紹介されていました。
港区女子との花山椒からも、ビジネスは考えられるんですよ。
どんなオチな記事だよ。