またしばらく更新から日が空いたうちに、32歳になりました。記事本数は減りそうですが、今後も強力な1記事を放っていけるよう、しぶとくやっていきます。
ところでスタートアップ業界の皆さん、10億以上調達している企業は大丈夫だとか、思っていないでしょうか?シリコンバレーではユニコーン企業のリストラも吹き荒れるという説も耳にしますし、Fab.comのような末路もあります。
投資家の目線に立てば、10億以上のエクイティでの調達に成功しているところが全て良いEXITができていれば、そんなイージーゲームはありません。10億以上の資金調達ラウンドは、日本国内ではレイターステージかつ上場前のファイナルラウンドになることも少なくないでしょう。
そんな状況からか、10億以上調達している企業にジョインすれば「勝ち船に乗った」気でいるような栽培マンも少なくはないのではないでしょうか。
レイターステージから上場まで漕ぎ付ける確率は4割程度ではないかと某投資家のコメントもあり、TheStartup独自調査と判断により、2013年以降にエクイティでの資金調達額が10億を超えていると思われるスタートアップ46社を調査対象とし、実際のEXIT成績や今後のEXIT予測をお届けする。
EXIT済み案件:6社(上場5社M&A1社)
2013年以降での累計資金調達額10億を超えるスタートアップでなんらかのEXITとなった案件は6社のみ。上場銘柄は、株主によっては売らずに保有し続けている企業はあり、gumiのような案件の場合、LINEなどは未だに投資時から簿価割れのままで、換金できていないという点ではEXITし切れていないわけですが。アカツキは一時期800億越えの時価総額も付け、Aimingなども上場していることから、ゲームセクターの大型資金調達の上場確率は比較的高いかもしれません。
上場4社に対して、最近楽天に買収されたフリルも仲間入り。買収額は非公開ですが、二桁億円後半と推定。ラストラウンドのvaluationが83億であり普通株であったことから、そのラウンドで入ったJAFCO、コロプラ、クックパッドにリターンがあったのかは判断しにくい。あって1.1倍程度。創業者以外では、アーリーで張ったデジガレには大きなリターンがあったでしょうが。
10億以上調達案件の上場確率は50%?
まずこれが、EXIT済6社+未EXIT案件41社予測の合計。「簿価割れ」はファイナルラウンドで投資した投資家の投資時簿価が割れるという予想を記しました。「回収不能」な可能性もあるのですが、「簿価割れ」の方がリアリティあるなと。(追記:すいません、下の表では「回収不能」表記になってしまっていますが、「簿価割れ」のニュアンスで捉えていただけますと幸いです。NA=判断保留、となっています)
累計調達額順に並べるとこんな感じの41社の顔ぶれ。
累計調達額やvaluation(ほとんど登記簿情報から掛け算したもの)はざっくりです。ジーニーとロコンドは謄本を見ただけでは調達額がよくわかりませんでした…。valuationは関心の高い企業のみ謄本から取得。謄本取得を試みたものの、エラーになった企業はNGと表記。
こちらがジャンル別の予測です。下記で詳細をブレイクダウンします。
コンプスされるジャンルの上場の難しさ
最初に、すでに類似企業が上場やM&Aされているジャンルをご紹介。
上の方にジャンル別にコンプス企業を記載しましたが、先に類似企業の上場やM&Aがある場合は、そこの時価総額を当然参考にされます。
まずECであれば理想はスタートトゥデイと比較されることでしょうが、バーティカルコマースではオイシックスくらいと比較されるのが関の山ではないかと思います。(もちろん、利益が出ていれば評価されるでしょうが)。ラクスルは何か只者ならぬ雰囲気を醸し出しているので、すでに250億近いvaluationでも上場予測。
ロコンドはロケットインターネット時代の資本政策がどうリセットされたかわかりませんが、現状のvaluationは63億程度度(最後に楽天が3億出資)と案外釣り上がっていませんでした。公募100億くらいでの上場はありえそう。ごちクルはどう仕上げてくるかに注目しています。それ以外は、マーケット狭そうなので、厳しいと判断。
続いてはC2C。メルカリの独走が続きますが、フリルが現時点でメルカリの時価総額ざっくり1,000億の1/10以下と思われる価格でM&A。規模が違うので、余り参考にはされないと思いますが。(フリルの買収価格算定時に、メルカリは参考にされたでしょうが)百戦錬磨、あきっぱといったシェアリング銘柄のアップサイドはどうか。あきっぱは東洋経済で2016末に100億で上場と書いてしまったんですが…。さすがに今年はないかな。
続いてメディア。スマートニュースは完全にグノシーをコンプスされますよね。グノシーが200億弱の時価総額で、スマニューは500億程度。インテリ層?が思ってるほど、スマニューとグノシーのアクティブユーザー数の違いはないと思います。スマニューの方がグノシーより売上が伸びるというロジックも見当たらず、こんなに時価総額上がって、どうするのかなと。「判断保留」判定しました。
動画はどこか勝つだろうという、勝つならCGMかなということで、C Channel。RettyはグルメCGMで食べログの何分の1か取ればいけるので、上場判定。iQonは同様にCGMですがコーディネートCGMの中毒性とサステイナビリティに懐疑的で簿価割れ判定。
クラウドソーシング。クラウドワークスが最近地味に株価が上がってきて120億ほどですが、ランサーズは未上場で77億。クラウドワークスの時価総額が200-300億に上がってくれないと、業績がさほど変わらないと仮定すると、200-300億で上がるロジックはない。クラウドワークスは上場時の公募91億でした。ジャンル特化型はちょっと苦しいと思います。スケーラブルな市場ではない。
アドテクはジーニーが累計調達額ちと不明でしたが、直近の登記簿みるとvaluationは180億くらいなんですよね。DSPのフリークアウトは復調してきていますが、SSP銘柄ともカウントできるVoyageは100億台前半。その狭間で、ジーニーはいかほどで上場できるのでしょうか。
ゲームはワンダープラネット一社のみ。PER付きにくいでしょうが、アカツキの好調さなどもあり、ゲームに対する厳しい見解が晴れてくると良いのですが。ゲームは当たるとでかいですよね。
初モノ上場はチャンスの法則?
残りのジャンルを。FinTech多いんですよね。マネーフォワードが年内上場という噂を耳にします。マネーフォワード vs freee、先に上場した方に公募時時価総額はひきづられると思います。時価総額がまだ低いマネーフォワードが先に上場するというのは、正しい打ち手に見えます。
決済はかなり時間がかかりそうな領域ですが、最近調子が上がっているということでコイニーを上場判定。ロイヤルゲートってまったく話題聞かないな。
B2Bは最近シリーズA付近でも増えているんですよね。SanSanやビズリーチあたりは順当に上場するであろうと見て、チャットワークはslackに勝てず簿価割れの予想。FiNCはユニークな資金調達(株主数が凄まじい)ですが、B2Bの売上見込みが2017年から次第という説も耳にしているので、判断保留。
BitcoinやIoTは「初モノ」というので、政治的に上場できる案件が1社はある気がするんですよね。赤字だとしても。Bitcoinはそういった流れができているらしいので、2社共上場予想。IoTはまだその流れを耳にしないので保留。VRもまだ始まったばかりなので、わかりませんね。
EdTechはちときつい気がします。最近、本田圭佑氏がLife is Techに張りましたが。QuipperのM&Aが奇跡的だった(というか政治の香り)くらいで、上場して100億の時価総額がつく利益水準が出る事業には両社とも、EdTechというジャンルにも思えません。
以上です。少し私の予想はこれでも「甘い」という説がありますが(自分でもそう思います)、ここから多少ディスカウントが入り、実際に上場までいく確率は4割程度な感じでしょうか。10億以上調達になってくると、最低ポスト時価総額50億程度、50億前後調達していると、ポスト200億前後まで時価総額が上がっていますから、M&Aの出口は楽天やyahooなど数社に限られてきてしまい、M&A確率はグッと下がってしまいますね。
10億以上調達している企業にいても、決して安泰ではないんですよ!やばい、転職しようかなという方は、この記事下にバナーがある「転職にオススメのスタートアップ企業」のnoteをご覧ください。