CGMとジャンルの相性:利用頻度と単価の高低から見るビジネスモデル

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CGMとジャンルの相性について気になったので考えてみました。

スクリーンショット 2016-01-01 16.35.13CGMサービスは個人的に好きで、数多あるスタートアップ領域では実務的な知見もある部類に入る領域です。

選択するジャンルによってアップサイドはわりと決まってくるのではないかなと。今のところ「利用頻度が高い」領域での月額300円課金がワークしているのはクックパッドと食べログ。食べログに感じては店舗からの月額課金も大きな収益でしょう。

CGMの収益モデルは主に5つでしょうか。

・ユーザー月額課金
・ユーザー従量課金
・ユーザー送客課金(Bからのアフィリエイト)
・店舗月額課金
・広告掲載料

利用頻度高く低単価ジャンルがCGMの金脈

利用頻度の高いジャンルであればユーザーの月額課金が成立しやすいと思います。最近株価がブイブイいっている@コスメもプレミアム会員機能は提供していますが、アプリリニューアル前なので投資抑制でむしろ会員数は減少している模様。ちゃんと設計すればそこそこの有料会員数獲得できると思うんですけどね。

エンタメではMixChannelも今後の期待を込めて記載しましたが、ニコニコ動画がここの王者ですね。YouTubeも同様で、かなりスケールしたプラットフォーム上での月額課金は機能すると思われます。

よって右下の象限に当たる「利用頻度が高くて単価が低い領域」は月額課金に向きやすく、CGMの金脈になりやすいのだと思います。この象限にギリギリ入れそうなのがネイルであり、ネイルブックは単独でスケールする路線をとるのか、本誌予想のようにM&A路線をとるかが注目です。

明らかに@コスメと相性が良さそうで、時価総額700億近くまで上がったアイスタイル株の3-4%程度の株式交換で買収したらいいのではないかと。現預金は30億も持ってないんですよね。iSGなんとかでばら撒くより、本業シナジーでネイルブック買収の一択ではないでしょうか。とはいえ資本構成を見てみたら複雑そうだったので株式交換は難しそうですね。借入してでもネイルブックの買収を!(既に9億くらい借入されてますが)

利用頻度も商材も高い象限とCGMの相性はよくわからない

正直よくわからないのが右上の分野。そこそこ利用頻度が高いけど、商材単価の高いジャンル。ここには主にファッションが入るでしょうか。WEARの進捗をスタートトゥデイの決算資料から拾ってきました。

スクリーンショット 2016-01-01 15.32.02DL数もコーディネート数も伸びてはいそうです。ZOZOTOWNへの誘導がキャッシュポイントであり、ZOZOTOWNありきのサービスとして捉えるなら良いと思います。

一方でZOZOTOWNのような当て先を持たないiQONはどうか。広告売上が主なビジネスモデルのようで、送客課金によるアフィリエイト売上はさほど大きくないと思われます。2015年8月には米ヤフーが約230億で同業のポリボアを買収していますが、IPOまで漕ぎ着けるほどの収益性を築けるジャンルなのか、私は最近少々懐疑的です。

利用頻度低く単価高いジャンル:ジャンル次第かな

「利用頻度低く単価低い」ジャンルのCGMは見当たらなかったので、最後は「利用頻度低く単価高い」ジャンルの解説です。

この領域では結婚式場探しのみんなのウェディングが上場しましたが、その後クックパッドに買収されています。式場からの月額課金が主な収益モデルで、値上げを実施しつつ1,000式場以上から課金。広告モデルのゼクシィよりも口コミを通じたユーザー体験の提供を試みていますが、ゼクシィの牙城はなかなか高い。

外食でもリクルートのホットペッパーは食べログの2-3倍の売上規模を誇り、広告モデルのメディアはリクルートのような大手がTVCMなどでパワープレーを仕掛け、店舗からの広告費で回収するというモデルに対して、売上規模で上回ることがなかなかできていません。利益率では上回るところは出てきているでしょうが。

みんなのウェディングは2018年通期経常利益10億を目標に掲げ、他ジャンルにも進出するとIRに記載があります。逆に捉えると、結婚式のCGMだけで経常利益10億は難しいという判断にも見えます。

事実上のギブアップ宣言にも見え、ここから「利用頻度低く高単価なジャンルのCGMってさほどスケールしないのではないか」との疑問を覚えるようになりました。みんなのウェディングは上場時には200億強の時価総額を営業利益3億強で付けているので、そこくらいまではいくかもしれません。

スタートアッププレイヤーである、部屋のCGMであり家具販売のプラットフォームに向くであろうRoom Clip、マンションCGMのマンションノート、この辺りのスケーラビリティはどの辺りがアップサイドなのだろう。

家具領域に関しては、キュレーションメディアでいえばiemo、家具紹介サイトではリクルートのtabroomが存在しますが、その後さほどスケールしているようには見えません。家具の市場規模が大きいとはいえ、ブレイクダウンするとIKEAやニトリのような巨大プレイヤーのシェアが大きいはずで、そういったプレイヤーは自社でプロモーションできるため、プロモーションメディアをさほど必要としないのではないか。

Room Clipやiemoと相性が良いであろう目黒通りに数多ある中小個店のインテリアショップは販促費をかける余裕も文化もなく、案外スモールBからの課金難易度が高く、ゆえに売上がスケールしない。利用頻度も低いジャンルであるため、サイトのトラフィックも伸びにくい構造にあります。ひたすた部屋の写真を見たい人って、レストラン探す人より規模は劣りますよね。よってRoom Clipも20-30億でのM&Aがアップサイドかなと感じました。ただそれを回収できるほどの売上利益が見込めるか不安。

マンションに関しては家具よりは市場が大きいし、広告で掲課金から送客課金モデルに切り替えたHOME’Sのネクストはかなり好調のようだ。ただし、広告掲載モデルの不動産サイトはユーザーとして使うとかなり利便性が低い。単価の高くユーザーにとって失敗が許されない不動産という商品においては、口コミの持つ価値は結婚式場選び同様に高いと思われる。ぐるなびを見て行ったレストランが不味ければどんまいで済むが、引越し先が日当たりが悪くて超ジメジメしてたらどんまいでは済まない。

しかしマンションノートはどこで課金してくるのだろうか。現在は一定数の口コミを見るには、自分も口コミを一定数投稿しないと見れない仕組みになっており、ユーザーにインセンティブがある状態で口コミを伸ばしている。この仕組みはリブセンスの「転職会議」も同様。転職も「利用頻度低く高単価」な領域でした。転職会議は伸びているようですね。

スクリーンショット 2016-01-01 16.10.432015年3Qの転職会議の売上は1.8億。4Qを2億程度と仮定すると、転職会議は年商6億。CGMなのでジョブセンスほど利益率が低くないかと思います。転職会議の売上比率が上がっていけばリブセンスの利益率は改善され、株価も上がっていくでしょう。求人領域なので、儲かりそうですよね。

決算資料には「マネタイズチャネルの拡充が堅調(例:人材紹介会社への送客等)」とありますが、転職会議の場力が上がれば人材紹介会社への送客も増え、売上は伸びていくはずです。CGMは基本口コミ数が伸びれば積み上げでトラフィックも伸びますので、転職会議には期待できそうです。むしろ転職会議だけ切り離した会社にしたほうが時価総額付きそうw

利用頻度が低く高単価なジャンルでは、転職会議の人材紹介のようなわかりやすいキャッシュポイントもあれば、家具屋のスモールBからの課金難易度は高いというような業界特性もあるでしょう。マンションはというと、B向け反響課金から始めるのが正攻法でしょうかね。

転職会議もマンションノートもいずれはユーザー課金もできると思いますが、月額がワークするかは微妙なところ。しかし、従量課金で集中的に月間APRU5,000円とか使うユーザーはいそうです。

意思決定ハードルが高く失敗が許されないジャンル。結婚、不動産、転職では、プラットフォームに相当数の口コミがたまった後は、ユーザーARPUの最大化を狙うと良いと思います。月額300円で2年のライフタイムを狙うのではなく、月間APRU5,000円で3ヶ月課金で1.5万円を狙うイメージ。

長くなりましたが、利用頻度と単価ごとに3つの象限でCGMを見ると、CGMに向くジャンルと向かないジャンルがある。象限によって最適なビジネスモデルが異なるというのが本紙の見解となりました。

CGM事業者の方々を中心にご意見ございましたらお待ちしております。



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