コンテンツ体験の拡張性について考えよう

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メディア論・コンテンツ論の重要な点にもかかわらずほとんど議論されない観点として、コンテンツを「どのように消費・体験するのか」という話を。

本稿では「電車の中でスマホでの視聴が〜」的なお決まりのパターンな話はありません。コンテンツがどのように消費され、どういう体験をユーザーに提供できると一つのコンテンツの価値を最大化できるのかを考えます。

「誰と」そのコンテンツを体験するのか

1:一人で
2:家族や恋人、友達と
3:ソーシャルメディアで
4:そのメディアを通じて知り合った人と

この4パターンが想定されます。

一人で体験するというのは説明不要かと思いますが、一人で読んだり見たりして「ふむふむ」と思う感じ。

家族恋人友達という身近な人とのコンテンツ体験の共有。お茶の間でTVを見ながらの談笑であるとか、恋人と映画を観たあとに感想を言い合うとか(実は僕はこれが超苦手です)、昨日見たドラマについて翌日学校の友達と語らうとか(場合によってはヒット作は見てないと翌日の会話についていけなくていじめのきっかけになるとか)。オフラインでバイラルして消費されるというパターン。「私の周りでも読んでる人多いです!」という台詞は、こういう体験が裏側にあるはずです。とはいえ、雑談や日頃のコミュニケーションのネタとしての機能ですね。

次に昨今特有の現象としてのソーシャルメディアでのコンテンツ体験。そのコンテンツを体験した後ないしは前にtwitterなどで知らない人がそのコンテンツの感想をつぶやいているのを見かける。これはFacebookよりはtwitterとNewsPicksの方が多いのでしょうが、そのコンテンツに対するソーシャル上のリアクションも体験することで、そのコンテンツをより楽しめる。

コンテンツ体験

最後に「そのメディアを通じて知り合った人と」という観点。マスメディアではなくバーティカルやニッチメディアの場合、多くは趣味が似たような人を読者層に持ちます。彼らは趣味が似ているので友人になれる可能性が高いわけで(ひいては男女であれば恋人になれる可能性も)。

昔はmixi、最近はPairsのようなSNSサービスにはコミュニティ機能があり、そこで自分が読んでいるメディアのコミュニティに入っている人だと「気が合うかも」と感じることもあると思います。よって、そのメディアの読者同士が集まれる場を設計すれば、より多くの人とコンテンツ体験を共有することができます。

また、そういう体験がそのメディアでできれば、読者のメディアに対するロイヤリティは上がるはずで、メディアの緩やかなコミュニティ化にはチャンスがあるはずです。これを濃厚にやっているのが「サロン」モデルです。

そのコンテンツは「オフラインで」体験できるのか

本稿でいうメディア・コンテンツは「オンライン」のものを指します。そこに掲載されている情報やストーリーは「オンライン完結」での体験しかできないのか「オフライン」での体験もできるのか。

議論的なものであれば、直接会って議論するよりひょっとするとソーシャルメディアで議論するとかブログ記事で応酬しあってその記事にまたソーシャルで反応がつくとかの方が面白みがあるかもしれません。

一方で食とか店やファッションの場合、実際にオフラインでそれを消費して楽しむことができます。「このウニ丼、めっちゃ美味そう!」と思えばその店に行って食べることができますし、「エルメスのバーキンが欲しすぎる!」と思えは買って所有できます。

モノと体験に分けると考えやすいかもしれません。モノは基本的には一人で所有するモノが多く、モノの消費体験を共有して楽しむことができる財は稀です。家とか車とかになるでしょう。高級腕時計を誰かと共同所有して楽しむことはないでしょうし、せいぜい誰かから「それカッコイイね」と突っ込まれる程度です。

一方で体験の方はというと。レストランで食を楽しむ、喜ばれそうな手土産を買ってホムパで楽しむ。オクトーバーフェス一緒に行ってみる。など、身近な人と楽しめる情報を紹介するコンテンツも溢れています。そういった体験を、身近な人とに限らず、同じメディアの読者同士で楽しんでみては?という設計もアリだなと思います。

同じメディアの読者同士で体験型コンテンツを共有する

数多のバーティカル・ニッチメディアがある中で、そこに掲載するコンテンツのみで差別化することは難しくなっています。そのメディアの独自性が強いコンテンツもあるでしょうが、類似メディアに載っていても違和感のない汎用的なコンテンツもある。メディアをパッケージとして捉え、コンテンツ単体ではなくメディア自体に読者を惹きつける必要があります。

TheStartupは嫌いだけど、ファンドリターンズだけは読むわ。同じ資金調達のニュースだと代わり映えしないからTHE BRIDGE読むわ。となってしまいます。それはコンテンツに読者が付いているパターンであり、本質的にはよろしくないんです。同じコンテンツが載っていても、その読者にとって強烈なユーザー体験をもたらしたメディアがあれば、読者はそちらのメディアを選択するはずなのです。

コンテンツのコモディティ化時代を勝ち抜くには、メディアにロイヤリティを持たせることが大事で、その一つの解にコミュニティ化がある。そのメディアを通じて一人でも有益な人間関係が構築できれば、そのユーザーの満足度は上がるはずですし、バイラル効果も期待できます。

来期はそこの設計を頑張る所存でございます。



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