最近、借入での資金調達(いわゆる、デット・ファイナンス。本誌では度々「デッド」ファイナンスと表記していたことを今更ながらお詫び訂正いたします)が増えているようだ。そこで、Umeki Salonでデット・ファイナンスを活用した起業家数人にデット・ファイナンスの極意を聞いてみた。(一部実際のコメントを編集しています)
キャッシュフロー作れる確度が高い事業の場合に融資を使って運転するのはごく合理的な経営判断と思います。エクイティで攻める資金を確保し、融資で販管費の1〜1.5カ月分を持つくらい(ゲーム関連企業CEO)
銀行はキャッシュイズキングなので利益が出ていれば業種は問われない。エクイティで調達すると事業推進時に株主の承認が必要なので、承認を取るのが苦手でエクイティではファイナンスしなかった(クロスボーダーM&AでEXIT済みCEO)
会社を大きく成長させられる自信があるならデットをうまく活用すべき。会社が大きく成長した前提で考えると、どう考えてもエクイティの方が資本コストは重たい。(エクイティよりデット調達額が多いスタートアップCEO)
攻めの資金はエクイティで調達し、運転資金をデットで調達しています。個人保証は入れていますが、会社は確実に成長できると確信しているので、リスクだとは感じていません。孫さんは、創業初期に第一勧銀の麹町支店長にプレゼンして1億円を融資してもらい、それを原資に一気に事業を立ち上げた、というエピソードもありますね。(孫正義ファンの人材系スタートアップCEO)
借入のメリットとして、バリュエーションのことに頭を悩ませず、事務員に手続きの8割以上任せた状態で資金調達が可能というのもあるかと思います。自分は事業に集中できます。また、当然株を要求されたりはしません。
人や会社を紹介していただける点も意外とメリットがあると感じます。おそらくVCが紹介してくれるそれとは少し違った層が多いように思います。特にみずほは銀行・信託・証券でお客さんを紹介し合うことそのものが評価対象となっているようで、なんとなく悩んでいることを適当に相談するだけでも思わぬ人を紹介してもらえることもあります。(北新宿スタートアップCEO)
都銀ではみずほが「oneみずほ」なる積極的な融資を展開しているようです。日本政策金融公庫も「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」なるもの(すごいネーミングですね)を展開しているようです。
<参考>
・みずほ、ベンチャー400社支援 有望株を囲い込み
・挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の概要
「囲い込み」ってすごいですね。みずほが積極的なようですが、みずほ銀行による融資でIPO時の主幹事選定で野村大和の後塵を拝するみずほ証券が主幹事選定のコンペに入れたり、実際に主幹事を獲得できることもあるようです。そういった意味では日経の「有望株を囲い込み」というタイトルはまさしくですね。
本稿はみずほ銀行の記事広告ではないですが、売上が立つ形態であればエクイティに限らずデット・ファイナンスも同様に検討したほうが賢明かと思います。売上がすぐ上がらないモデルのスタートアップはエクイティしか選択肢がないでしょうが。ポイントとしては、決裁権のある支店長と仲良くなったり、口説き落とせるかというところでしょうか。銀行の支店長というと半沢直樹の浅野支店長的な悪そうな人しか思い浮かばないんですが。
個人的にはエクイティ・ファイナンスして売上上がってない企業のCEOとかが派手に遊んでいたりすると、アホなの?と思ったりします。その点、デッド・ファイナンスの場合は返済しなきゃいけないわけで、まだ赤字の企業で借入が残っているとちゃんと節約するとこは節約してそうな感じ。
最後に整理を。
<借入のメリット>
・株を要求されず、バリュエーションで悩まなくて良い
・資本コストがエクイティと比較して安い
・投資家の承認を得ずに事業推進が可能
・VCルートととは違う種類の人種を紹介してくれる<借入のデメリット>
・エクイティは必ずしも返さなくても良いが、期限までに確実に返済しなければならない
・不景気になったり銀行の業績が悪化すると引き揚げられる(晴れの日に傘を差し、雨の日に傘を取り上げる
実際にはエクイティとデットを組み合わせるとリスクヘッジとしては良いんでしょうね。
三菱UFJ銀行様からは以前バナー広告を出稿いただきましたが、みずほ銀行様からの出稿はございません。ご出稿、お待ちしております。