起業家は刺激ジャンキーである

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自分も一応一介の起業家であるが、多くの起業家と接してきて、起業家と会社員には明確な違いがあると感じている。

起業家は、刺激ジャンキーなのだ。

彼らにとっての刺激とは、「グロース」と言い換えられる。

すごく頑張って売上が倍々になっていこうが、税金をがっぽり取られるので、手元に残るキャッシュは売上に正比例して倍々になるわけではない。正直にいうと「そこそこ頑張ってそこそこ稼げばいいのでは?」というの思想である僕は、そこが真の起業家足り得ない所以だとも思っているのだが、起業家はそうした経済的なリターンは実は二の次で、要は刺激がないと生きていけない生き物ではないかと。

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そしてその「刺激」とは周囲の環境に大きく影響される。

たとえば、とあるゲーム会社の国光さんが900億強の時価総額で上場したのに対して、とあるゲーム会社を数十億円で売却した大冨さんが「gumiなんて昔うちより小さかったのに!」と刺激を受けてスーパーサイヤ人化したりする現象です。

起業家にとっては、いかなるKPIでも「前月比減」は許し難く、「グロース」が唯一の絶対解になっている気がします。前月比成長していないと気がすまない。落ち着かないのです。そして毎日同じようなルーティンが続くと飽き飽きして耐えられない。「新規事業でも考えるか」となります。

この「グロース・ジャンキー」というのは起業家たちの病のようなもの。あるいは企業活動の前提条件といえるかもしれません。

しかし、日本経済は80年代のように右肩上がりでブイブイいわせているわけでもなく、「なぜ無理をしてまで成長を求めるのだ?」という論点はもっと議論されていいと思うのですが、グロース・ジャンキーな起業家たちには愚問なので特に話し合われることはありませんでした。

この「成長を前提とした暮らし」にある種異を唱えたのがイケダハヤトさんであり、「東京で前年より金稼いで家賃払うために働くなんて馬鹿らしいぜ」ということで高知に移住していったのでした。

僕自身も稼ぐことやグロースは好きなので、社会全体からみるとグロース・ジャンキーに分類されます。サラリーマンとして半年ごとに査定があって、「よく頑張った。1万円の昇給ね」というのは性格的に無理です。とはいえ、「なんでこんなに頑張ってグロースしたいんだっけ?」という、グロースの前提にあるwhyをたまに自分に問いかけますが、明確な答えはあまりありません。引いていうと「暇つぶし」とか「面白いから(ジャンキー)」というくらいでしょう。

ただし、グロース・ジャンキーは社会に迷惑をかけることもあります。行き過ぎたグロース・ジャンキーが立てた無謀な事業計画が未達の場合は「下方修正のお知らせ」が市場を駆け巡り、株価が暴落したりするのです。業績予測の帳尻合わせをするための下手なM&Aに手を染めることもあります。株式市場は、グロース・ジャンキーを過渡に高く評価する性質があるので、グロース・ジャンキーと株式市場は本来的には相性は良いのですが。

なんでグロースを強要されるのか。それは起業家の趣味(ないしはエゴ)であって、グロースを強要される生き方が自分に合っているのか否かはもっと考えてみた方が良いと思います。会社員であれば基本的にはグロースを強要される生き方を強いられることになるでしょう。だからこそ「グロースを放棄したように見える人」が社会から圧力を受けることがあるようにも思えます。俺らが汗水流して働いているのに、貴様はシエスタだと?とかいう反応が典型的です。

僕自身もややグロース・ジャンキーではありますが、グロース至上主義には異を唱えたいです。無茶な目標を立てて、身体を壊してまでやるものではないかと。

起業家はほぼ刺激(グロース)ジャンキーです。なぜ自分がそれを求めるのか、それを社員に強いるのかは、もっと考えてみてもいいのかなと思う。



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