ロマンティック上場は誰も幸せにしない

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どうも。LIG上場ゴール準備室長の梅木です。

というのはエイプリルフールネタでして、さらにそこに被せるネタを。上場ゴール問題が2015年のIPO市場を賑わせてますが、何のための上場かという話を。前回の上場ゴールと騒ぐ奴は馬鹿の記事では、個別論を論じたつもりはなかったのですが、冒頭に時事的なgumiの話を盛り込んだので、gumiのことと捉えた人が多かったようで、その点は紛らわしかったと反省します。

今回の話はどこの個別論でもない抽象論であると、最初に断りを入れておきます。

上場とはあくまで資金調達の手段の一つである

上場のメリットデメリットについてはこの記事で述べました。

◆記事:人と金を調達し、情報は曝け出す:上場のメリットとデメリット

上場メリットは社会的信用力向上に基づく採用力や取引の信頼性云々という話をしましたが、ベースとなるのは資金調達の手段の一つという話です。100億の公募時時価総額で10%売り出せば10億程度の調達ができる。

とある上場企業経営者に話を聞いたところ「上場でも未上場でも採用が強いところは強いし弱いところは弱い」とのことで、上場によって直接的に採用力が強化されるのかというと必ずしもそうではない。取引の話も同様。

調達した金を持って今後何をしたいのか。資金調達の使途のロジックが弱い企業が上場しても、調達した金を上手く使えず成長しあぐねて株価は下がる一方。調達した数億〜10億よりも上場維持コストが高いというオチになりかねない。

資金調達の使途があって、資金調達手段が未上場市場での株での調達ではなく、借入でもなく、上場がいいというのであれば、上場する。という資金調達の手段の一種が上場なんですよね。コーポレートファイナンス的観点から見ると。

男の夢を叶える「ロマンティック上場」が少なくない

ここからが本題です。本誌の読者の皆様もご存知の通り、小粒IPOによりかつてのスタートアップが株式市場でゴミと化している企業が少なくありません。そういった企業は本当に上場する意義があったのでしょうか?その後の成長戦略があり、それを実行して成長を実現しているのでしょうか?

■95%の起業家「EXIT?上場しかないっす!」

上場することによるデメリットは先の記事で述べた通りたくさんあります。

四半期決算対応に代表される上場維持コスト、株価が下がればTOBにより買収されるリスク、情報開示による競合が対策を立てやすくなる事業上のリスク。デメリットは少なくありません。

起業家に会うと「EXITはどうお考えですか?」と聞くと95%が「上場っす!」といいます。ロマンがなければ起業家なんかやってられないのは百も承知なので理解はできるのですが、なぜ上場一本しか選択肢を持たないのだろうか?といつも不思議に思い、辟易とします。「M&Aももちろん視野に入れます」くらいの方が現実味があり、柔軟性のある経営者なんだなと判断し、投資しやすくなります。

「なぜ上場したいのか?」と問うと、実はあまり合理的な回答は得られないことが多いです。「生まれてきたからには歴史に名を刻みたい!」とか「株主を男にしたい」とかそういう回答があります。株主を男にするならM&Aでそれなりに高いリターンを実現するでも良いと思います。

ビジネス的なメリットよりも「起業家としての男のロマン」を追求する「ロマンティック上場」がわりと多いのではないかと危惧しています。

ロマンティック引用:ロマンティックあげるよ

■「ロマンティック上場三銃士」という名脇役

この規模で、そのビジネスでわざわざ上場する意義あるの?と疑問を覚える小粒IPOが多い背景には、株式市場関係者による「ロマンティック上場」の肯定ロジックが働きます。まず東証はIPOの数を増やしたい。それに紐づいて証券会社は主幹事の数を増やしたい。ジャフコ様をはじめとする初値で売り抜けるVCは上場した後はどうでもいいから上場させたい。

東証・証券会社・VCの「ロマンティック上場三銃士」という名脇役たちによって、ロマンティック上場銘柄が粗製されます。

そうしたロマンティック上場は成長戦略も乏しいまま成長できず、株価は公募価格を一度も上回らずに夢展望化することもあり得ます。結果的に名脇役たちも面目丸つぶれとなり、ロマンティック上場銘柄の社内には不穏な空気が流れたりと、無茶に男のロマンを叶えようとすると、結局誰も幸せにならないのではないかと。

しっかり継続的に利益を出せる体制を築いた上で、もしくはそういった成長戦略がある上で、上場した方が良いだろうという段階で上場するのであれば、IPO銘柄はロマンだけでなく実利を得られるでしょう。実利をさほど得られずに、起業家がロマンを得たいという自己実現欲求によるロマンティック上場が少なくないのではないか。それってかなり微妙なんじゃないか。

こんな時期だからこそ、ロマンティック上場三銃士にはロマンティック上場への抑止力を働かせてほしいですね。

■東証の鐘を鳴らしたい!は合理的な経営判断ではない

この記事をご覧になった起業家の皆様は「ロマンティック上場」についてどう思われるでしょうか。「東証の鐘を鳴らしたい」というのはロマンティック上場です。そこに合理性はありません。合理的な経営判断をしようとすれば、上場のみを志向する起業家は減り、M&Aの選択肢をより模索するようになるはずです。もっとロマンだけでなく数字を見た方がいいのではないでしょうか。

ちなみに本稿は「ロマンティック上場」というワードを流行らせてみたかったので書いてみただけです。失礼しました。

■歌:ロマンティック上場(作詞:梅木雄平)

おいでスタートアップ 好きさマザーズ
社歴若さ 気にしないで
不思議したくて 冒険したくて
起業家みんな ウズウズしてる
野村に言われて あきらめちゃ
奇跡の公募価格 付けれないよ
もっと来期予測
もっとたくましく 計画してごらん

ロマンティック上場
ロマンティック上場
ホントの利益見せてくれたら
ロマンティック上場
ロマンティック上場
トキメク株にキラキラ光った
株価上げるよ



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