10億円以上調達のスタートアップの打ち手となる、TVCMのいろは

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TVCMを打つスタートアップが2014年に入ってから増えている。特にB2Cサービスを有する企業であればマスに普及させる段階においてTVCMは有効な施策の一つといえる。スタートアップがTVCM出稿をする際に留意すべきことや今までの出稿から見える傾向を、スタートアップのTVCMに詳しい某広告代理店の方からのヒアリングを元に紹介する。

2014年に出稿のあった9社のスタートアップTVCM

主に2014年に入ってから実施されたスタートアップTVCMの一覧をまずはご覧いただきましょう。あくまで振り返りで動画を貼付けただけ。突っ込んだ話が気になる人はサクッと次の小見出しへ飛んでください。

■ニュース1:グノシー(2014年3月〜)

DL数:CM出稿前200万⇒後500万

■ニュース2:アンテナ(2014年5月〜)

DL数:CM出稿前300万⇒後350万(2014年7月東洋経済オンライン取材時点)

■ニュース3:スマートニュース(2014年8月〜)

DL数:CM出稿前400万⇒後?

■C2C:メルカリ(2014年5月〜)

DL数:CM出稿前200〜250万⇒後400万(2014年9月東洋経済オンライン取材時点)

■クリーニング:リネット(2014年4月)

数字非公開(見当たらない)

■印刷:ラクスル(2014年6月)

数字非公開(見当たらない)

■名刺:Sansan(2013年7月〜2014年中も出稿してるはず)

数字非公開(見当たらない)

■ゲーム1:エイリム / gumi(2013年7月〜)

数字非公開(見当たらない)

■ゲーム2:アカツキ(2014年8月:関西エリア)

数字非公開(見当たらない)

外資なのでおまけですがSquareも地方限定でTVCMやっていたようです。

TVCM最適開始タイミング:B2Cアプリは100万DL

B2CとB2Bで出稿目的も変わってくるので分けて解説。

まずB2Cでスマホアプリの場合。マス向けのプロダクトであるという前提条件で早ければ100万DL突破くらいからが出稿のタイミングとしては適切だという。100万〜300万DLくらいでTVCMを打ち始め、成長速度を上げるのが賢いTVCMの使い方といえそうだ。既に1,000万単位のDL数があるサービスの場合はアクティブ率を上げるなどの意味合いでの出稿比率が高いという。

筆者が聞いた話では某ソシャゲ企業のユーザー数が数百万中盤だった頃、TVCMを打てば打つほど会員獲得CPAが低減していく(一定量の露出を浴びせることで獲得効率が上がるスイートスポットに上手くハマった)という説もあったが、こんなコメントをいただいている。

出稿すればするほどROIが上がるというのは稀で、初回CMの出稿時の反応が一番大きいのではないかと思う。

次にB2B。筆者にはラクスルやSansanのようなB2BはTVCMと相性が良いのか?という率直な疑問があった。

これはよく出る議論ですが、ラクスルやSansanはスモールB(中小企業や個人事業主など割とBtoCに近い属性)がターゲットと思われるため、母数が大きい=TVCMでもいけるという判断もあるかと思います。ターゲットのLTVが高く、獲得単価で考えるとB2Cとは1桁違うということもあります。

また、B2B企業はユーザー獲得よりは営業支援という意味合いで実際にTVCMを出稿していることもあります。

スタートアップのTVCM:4つのクリエイティブルール

TVCM出稿にあたり、どんなクリエイティブが良いのでしょうか。スタートアップによっては様々なクリエイティブパターンをバナーのクリエイティブを変えるかの如く試している企業もありますが、一定のクリエイティブのルールがあるようです。

■TVCMクリエイティブのルール(抑えるべきポイント)

1:サービス名の刷り込み(認知低いことがほとんどなので)
2:シズル(直感的にサービスを使いたくなる要素)の訴求
3:メジャー感(ダウンロード400万突破!とか)
4:オファー(今なら○○もらえる、今だけ限定~など)

スタートアップにおいては特に認知が低い段階からのスタートなので、1のサービス名の刷り込みが重要といえそう。だが、この4つの要素をバランス良く押さえているTVCMが獲得効率が良さそうな印象だという。逆にどれかの要素に絞り込んだ「1点豪華主義」は、打ち上げ花火的になってしまい、獲得効率はさほど良くなかった記憶があるという。

効果測定は出稿期間あたりのROI(アプリであれば主にCPI)で判断することが多いが、出稿時間(24時間7曜日で広告弾力性が高い時間帯はどこか?)やエリア別の評価もある。出稿主側は、流入チャネル別にLTVまで含めて測定し、評価していることが多いという。

全国区でTVCMを打つには3億:調達額は10億は必要か

最後にTVCMの予算感の話を。

■TVCM実施予算感

CM制作費:0.3-0.5億(タレントキャスティング料込み)
CM枠購入費:2.5億前後(2,000GRPの投下)

*1GRP=視聴率1%
*関東圏全世帯1,800万世帯の1GRPだと18万世帯にリーチ
*タレントキャスティングは安くて0.1億、高くて1億程度

2,000GRPを投下すると、例えば30代男女の広告認知率はだいたい50~60%程度まで到達し、2人に1人以上が「あのCM見た!」という水準までいくという。本当にマスにリーチさせたければ2,000GRP程度の投下は見込んだ方が良さそうだ。

一方でテストマーケティング的に地方都市(福岡や札幌、静岡が選定されることが多い)で実施されることもある。地方の1エリアのみの場合はCM枠の購入は数百万円単位で収まることもあるが、首都圏を絡ませる場合は最低1億円以上はかかることがほとんどだという。

スタートアップの場合、年間数億円の売上があるか、少なくとも3億円以上の資金調達を実施しない限りはTVCMの出稿は財務的に難しいだろう。現に冒頭で紹介した9社のうちリネット以外の8社は10億円以上の資金調達を実施している。リネットは関西エリアでの出稿のため、予算をそれなりに抑えられていると推測する。

10億調達した場合は人件費だけで10億使い切ることはないし、SEOやリスティングなどのオンライン広告に投下するのもせいぜい数億円前半が上限でその後は獲得効率が下がったり、出稿先がそもそもなかったりする。10億調達したうちの3億程度をTVCMに投下するというのは経営上合理的な判断といえそうだ。

現在の市況だと2014年内にもう何社か10億円以上調達するスタートアップが出てくるだろう。そういったスタートアップにとって本稿は参考になれば幸いだ。数千万円から1億円あれば地方でTVCMは打てるようなので、テストマーケティングでTVCMを回す際の参考になればいいし、10億調達の手前でもTVCMを現実的な打ち手と捉えてもいいのではないだろうか。

*注:本稿はTVや広告代理店からのPR記事ではございません。

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