gumiが動画関連事業をひそかに構想しているという情報を耳にし、gumi代表取締役国光宏尚氏に独占取材を敢行した。gumiの動画事業構想の話はまだどのメディアにも出ていない。
結論、gumiはソーシャルゲーム事業の次の柱として動画事業を構想しており、それはプロによるスマホに最適化された質の高いオリジナルコンテンツ提供を指すようだ。動画事業の市場性についてゲーム事業の推移との比較から国光氏が説明してくれた。
*本文中のスライドの右下にconfidencialは入ったものはgumiから提供
ゲーム業界の革命から逆算する動画革命のビジネスチャンス
ゲーム業界に2つ革命が起こったと国光氏は説明する。要約するとこう。
■ゲーム業界2つの革命
1:デバイスの変化(家庭用ゲーム機⇒PC⇒スマホ/タブレット)
2:インターネット化によるビジネスモデルの変化
(パッケージ売り切り⇒フリーミアム)
国光氏はこう語る。
ゲーム業界の革命ではゲームができるユーザー数がまず増えました。家庭用ゲーム機はNINTENDO DSとプレステの合算販売数で1.5億台。スマホは全世界で30億台。単純計算で20倍のポテンシャルユーザー数です。
次にビジネスモデル。家庭用ゲーム機はハードとソフトの売り切りでしたが、インターネットの登場により特にスマホゲームはほぼフリーミアム。フリーミアムは違法コピーに強いという性質もあり、楽しみたければ課金してくださいという文化。課金ハードルが高いと言われる中国のユーザーも課金してハマるほどです。
次にインターネット登場後のゲーム業界のトレンドを説明してくれた。
■インターネットゲーム業界のトレンド変遷
1:家庭用ゲーム機ソフトからの移植(例:有名家庭用ゲームタイトルの再現)
2:個人の作ったミニゲーム(例:ジッポライター)
3:スマホ最適化されたネイティブゲーム(例:ブレフロ)
ゲームの3年前と動画の2014年9月現在が似ていると国光氏は指摘。
ゲームの変遷と動画の変遷は非常に似ている。家庭用ゲーム機がテレビで、そこからスマホへとデバイスがまず変化する。最初はテレビのコンテンツをPCやスマホに移植するだけだが、当然それはそのデバイスに最適とは限らない。
そこでスマホに最適なコンテンツを提供していく個人が現れる。それが今でいうYouTuber。しかし個人レベルのクリエイティブの質はたかが知れている。そこでプロが作るスマホに最適化した動画が出てくる段階が来る。gumiはそこを取りに行きたい。
動画の変遷の例として「映画⇒テレビ」が挙げられた。
テレビが出てきた頃は「そんなコンテンツあり得ないだろ」とよく批判されていたという。例えば「音楽のPVばかり流すチャンネルとかあり得ない」と言われたものはMTVとなり「24時間ニュースばかりなんて誰が見るの」と言われたものはCNNになった。
デバイスが変化することでそこにマッチするコンテンツは変化する。スマホに最適化されたプロが製作する動画コンテンツにはたしかに需要がある。
YouTuberを抱えるMCNは米国ではどこも大赤字か
以前本誌で紹介したYouTubeを中心とした今後の動画ビジネス市場概要。この図と同じフレームワークを採用してプレイヤーを分類するとこうなる。
gumiはコンテンツ制作の立ち位置を取りに行く。スマホが主戦場となる今後においてはスマホへの動画提供者としてgumiもワーナーも同じプロバイダーに代わりはないということだ。
uuumのようなYouTuberを抱え込む組織をMCN(マルチチャンネルネットワーク)と呼ぶが、MCM市場は米国ではこんな戦いとなっていたようだ。
米国のMCN市場は戦い方は激しい。MCNはテレビ業界でいう芸能事務所みたいなもの。TV番組へのブッキング力と役者を縛ることで強い立ち位置にあったが、YouTuber時代においては枠の制限があるTV番組と異なりブッキングの価値は相対的に下がり、YouTuberの方が力を持つようになった。
MCNはどこも大赤字でMaker Studiosがディズニーに買収されたりもしている。MCNのプレイヤーの多くが買収されており、買収後の起業家は数年ロックアップがあり大企業の重要ポジションに就くことが多い。その間の米国スマホ動画市場は成長が止まっており、そこにチャンスを感じた。
尚、国光氏は自分がスーパーサイヤ人だと仮定し、米国のスタープレイヤーたちを魔神ブウと喩え、「魔人ブウを倒しにいかねばならない」ということも言っていた。
既存市場からの参入という側面においても、米国ではTVの広告売上が回復しており、既存事業が好調な中でオンラインビデオ市場に積極的に参入するにはイノベーションのジレンマがあると考えられる。オンラインビデオ市場にはプロ制作のコンテンツを提供できるS級プレイヤーがいない。gumiはそこを狙うつもりのようだ。
オンラインビデオに最適なコンテンツの3S
スマホに最適な動画コンテンツとはどのようなものか。動画事業を担当し、業務時間中YouTubeとニコニコ動画以外見ることを許されないgumi新井氏曰くこのような特徴があるようだ。
■オンラインビデオの3S
・サプライズ:テレビで見ることのできない驚き
・ショート:日常生活の隙間時間で楽しめる。習慣性がある
・シンパシー:共感できる
テレビではあり得ないオンラインビデオのコンテンツを読み解いた新井氏はこう指摘する。
オンラインビデオでは「MCのキャラ」がより重要です。キャラが好きで視聴が習慣化することもありそうです。YouTubeでの人気コンテンツにゲーム実況がありますが、ああいう「やってみた」系のコンテンツをMCの魅力で見せるのはオンラインビデオならではの特徴。他には衝撃的だったり共感を生むコンテンツがYouTubeと相性が良いと見ています。
まずはゲームと子供関連のコンテンツ制作から始めたいという。
米国では何千万回再生、時に1億再生を超える動画があり、チャンネルの購読者数も数百万から数千万単位で獲得するYouTuberも珍しくない。この分野において米国は日本より3年は進んでいるという。筆者もgumiが事例に挙げた動画を何本か見たがクオリティが相当高い。こういった動画の制作者に対してナショナルクライアントのネイティブアドは入りそうだ。
明確な相場観は何とも言えないが、1PVあたり1円と換算すれば1億PVある動画だとナショクラからの広告出稿費で1億円取れるということもあり得る。YouTuberやチャンネルを通してファンコミュニティが形成され、それはある意味旧い言葉でいうならば「テイストグラフ」を形成している。500万の購読者がいるスーパーモデルの動画に化粧品クライアントが興味を持つのは自然だ。従来のテレビではせいぜい番組単位でのセグメンテーションであり、YouTube時代にはそのセグメンテーション精度が上がるといえる。
オンラインビデオのビジネスモデルは不明瞭だが広告が主軸
Amazonもネットフリックスも自社でコンテンツを作り始めている。今後コンテンツレイヤーの競争が激化するのは間違いない。視聴者は多くいる。だが明確なビジネスモデルがまだないのがゲーム業界との違いだ。
現在ではYouTube自体の再生数は1PVあたり0.1円がコンテンツ提供者に配分される。(注:YouTubeのオフィシャルパートナーとなっている動画提供者は0.4-0.5円という説もある)それだけでは収益性としては不十分で、おそくらはナショクラを始めたとしたワンショットの単価が高い広告ビジネスとなるだろう。
ネット時代のMTVを作りたい。圧倒的なメディア力がないとナショクラは広告を出稿しないだろう。全てオリジナルコンテンツで圧倒的なメディア力を持ちたい。日本においては動画制作ができる隠れた才能は多くなく、自分たちで知見を溜めて製作していきたい。
こう語る国光氏は最近Amazonに買収されたTwitchのようなサービスである「LiveUp」を2006年にリリースしていたようだ。今の若いスタートアップ関連の人は知らないだろうが、国光氏はgumiを起業する前は隠れた人気ブロガーだったようだ。そして国光氏はgumi創業前はアットムービーという動画関連の事業に従事している。いわば自身にとってはホームグラウンドといえる業界だ。
gumiはgumi vemturesの2号ファンドを組成し、そこから動画関連スタートアップに出資したいようだ。興味ある方は国光氏に直接売り込んでみるといいだろう。国光氏は関西弁で気さくないい人である。
日本が米国に3年遅れと考えると逆説的には3年後には日本でもYouTubeの時代がやってくる。その覇権を取るためにgumiは水面下で準備を進めていくようだ。日本ではオンライン動画領域に絶対的なプレイヤーはまだいない。gumiのようなコンテンツファームは絶対的なプレイヤーになり得る筆頭株かもしれない。
ところでgumiの国光さんもUmeki Salonにジョインしてくれました!国光節がサロンで見られるか注目ですね。
417名突破!gumi国光さんも参加するUmeki Salon
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