未だ国内スタートアップにおいてO2O領域で決定的なプレイヤーが出てこない。そんな中、モバイルウォレットサービスの「O:der」に可能性を感じたため、O:derを運営する株式会社Showcase Gig代表取締役新田剛史氏に話を伺った。
O:derは事前決済+スタンプ特典を内包したO2Oサービス
まずサービス説明から。
ユーザーはこんな感じで使える。意識の高い人はアプリDLして使える店舗で使ってみてください。
表面的に見ると、飲食店とか中小店舗のスタンプカードを一括管理できる程度のサービスで、そんなものは他にもたくさんある。便利ですが、で?という感じ。新田氏は飲食店などのスモールビジネスを集客とオペレーション面で支援する事業にかねてから関心があったようで、肝は「事前決済」だといいます。図解するとO:derはこのようなビジネスモデルかな。
個人的にはスタンプなどで利用個店データを集め、広告配信などが可能かと思いましたが、事前決済に軸足を置きたいようです。新田氏は前職のmixiではクリエイティブ会社のバスキュールで取締役を務めた経験もあり「mixiクリスマス」という企画で58時間でにして100万ユーザーを獲得するなど、マーケティング広告周りには強い人物。プラットフォームとして機能した後の広告でのマネタイズは心配不要かもしれません。
現状の収益モデルは店舗システム使用料月額3,000円と事前決済手数料の二点となっています。
米国スタバ売上1,000億がアプリ経由。事前決済機能が追加
既に米国のスタバ店頭売上の15%、約1,000億円がアプリ経由での決済とのこと。そのアプリではプリペイドカードが電子化されており、バーコード表示機能がある。アプリ経由の売上比率は年間5%前後上昇していっているとらしい。このアプリに事前決済(米国ではプレオーダーという)機能が追加され年内にローンチされるという噂があります。プレオーダー機能が実装されると待ち時間が短縮できるという利点があり、更に利用が加速するのではないかと考えられます。
ちなみにSqaureもプレオーダーサービスSqaure Orderを始めるそうだが、サイトデザインカラーがO:derそっくり・・・苦笑。
スタバは既に事前決済で実績を伸ばし、Sqaureも参入する。スマホ時代においてアプリで事前決済は、確実にトレンドになりそうですね。
ちなみにSquareなどの小型リーダーによる中小店舗のクレカ利用率の上昇は、中小店舗がクレカ手数料支払に難色を示すことが想定され、現金のみの文化からカード決済に転換させる難易度は高く、普及しにくいと僕は考えます。国内では最も多くのカード会社に対応している楽天スマートペイが一番普及しているようですね。正直、コイニーがあれだけ絶賛されているのが理解できません。コイニーを絶賛する理由?をコメントで募集したい。
ローソンなどで使えるPontaの裏側もサポート
同社は2014年6月にロイヤリティーマーケティングと資本業務的系を結んだことを発表しています。ロイヤリティーマーケティング社は三菱商事の子会社でローソンなどで使える共通ポイントサービスPontaを運営。
O:derで提供される決済機能にロイヤリティーマーケティングが提供する決済サービスを利用しており、Ponta関連サービスの裏側にShowcase Gig社のプラットフォームが提供されている。Pontaの月次決済(トランザクション)総件数は既に約2億回に上り(参考記事)、その規模感を活かして各種サービスを提供しており、同社はそれを担うことで収益化しているようで、黒字化も達成しているとのこと。
ローソン以外にはケンタッキーや大戸屋などで使われています。Pontaは会員数約6,000万人、導入店舗約22,500店。こうしたB2Bで大企業との提携からチェーン店を押さえていくのは、大人スタートアップならではの戦略といえます。チェーン系はこの手のシステム改変は数年に一度。その機会を逃さないことが重要です。
中小店舗へのマーケットインの時期は慎重に判断
大手チェーンへは大企業との提携で参入し、中小店舗は青山エリアなどで実験的に100店舗前後が導入しています。まだスケールするタイミングではないと判断し、メディア経由での問い合わせのみに対応している段階。
O2Oはリアル(オフライン)を動かせないと上手く立ち上がりません。端末を店舗に配っても使われないと価値がない。まずはスタンプなどのCRM機能の価値を高め、スマホやクレジットカードの普及スピードを見て、マーケットインしたいと考えています。リアルは変数が多く、焦らずに適切なタイミングを図る必要があります。(新田氏)
ユーザー獲得は中小店舗の導入に紐づき伸びていくと想定しており、10坪で月3,000人の来客がある店舗もあることから、さほど心配していないとのこと。
事前決済などのオペレーションが簡略し、スタンプカードで再訪を促したり、データを元に新規顧客の集客をかけられる。O:derさえあれば、中小店舗は成立する。そんな世界観を新田氏は目指しているようです。
実際に3rd Burgar六本木店に足を運んでヒアリングしたところ、1日の客数300組ほどに対して現状ではO:der経由の事前決済が10組程度定常的にいるとのことです。オフィス街ではランチ帯は行列できそうなので、事前決済ニーズは高いでしょうね。
事前決済の肝は選択肢の少なさによる習慣化か?
事前決済の浸透に関しては、常連の店をいくつか持っていれば成り立つユーザー行動ですが、どれくらいの比率の人が同じ店ばかり使うのか。逆にO:derでの事前決済に馴れてしまうとそれが楽で、会社近くのカフェでO:der導入店があればそれがきっかけで通うようになってしまうかもしれません。ポイントよりも事前決済の方が個店のCRMに効くかもしれませんね。
事前決済のメニューの選択肢が少なく、選択が簡易的であることが事前決済の成立条件だと思います。よってコンビニよりもカフェでのランチとか飲食店が一番想定しやすい。同じメニューを習慣的に事前決済するというユーザー行動は想定されやすいと思いました。
以上です。浸透には時間がかかるでしょうが、事前決済をフックとしたO2OのCRMスマホアプリ自体には需要があるでしょうし、然るべき未来の姿だと思います。B2Bから落とせる大人プレイができるスタートアップに勝機があるように思えますので、O:derの今後にひそかに注目していきたいと思います。
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