乗り遅れた感満載ですがレアジョブのIPOについて。公募価格や時価総額、この規模で上場することの是非の議論は出尽くした感がありますので、本稿では詳細に触れません。事業数値を見て、今後のレアジョブにどれくらいの成長性が見込まれるかに焦点を充てます。
参考資料:レアジョブ新規上場申請のための有価証券報告書1の部
参考記事:株式会社レアジョブがマザーズに上場承認されたので有価証券届出書を読んでみた
丸山さんの記事内の資本政策から推察するに、2008年にグローバルブレインが入れてますから、そろそろファンドも満期だろうし回収したいということで、このあまり利益が出てないタイミングでの上場となったのかもしれません(大人の事情の推測です)。レアジョブのPL予測は本誌でも出していましたので、振り返りの記事リンクを貼っておきます。
参考記事:しまじろうは、ゾンビ化するEdTechたちを買収するだろうか
案外売上原価が高い?レアジョブのコスト構造
まずはPLからコスト構造を見ていきます。従来の英会話塾と比較する必要はありますが、フィリピン人講師ということで、一見、原価が抑えられそうに見えますが、さほど売上原価は安くない。
これは会員数が伸びてもその分講師の稼働も増えるでしょうから、粗利率60%前後というのは今後も大きく変わることは予想しにくい。
販売管理費は人件費は置いておいて、広告費は1億強。さほど掛かっていませんね。丸山先生によると今回の上場でのレアジョブの調達額は1.5億。直近のBSでの現預金も1.25億しかないので、上場後にTVCMというパワープレーでユーザー獲得という施策を打つことは考えにくい。
先述のしまじろう〜の記事内でレアジョブの収益予測をしていますが、営業利益2-3億出てて営業利益率30-40%というのは大きく外しました。次のパラグラフで説明しますが、有料会員化率と有料会員数、売上原価の読みが甘かった感じです。
迫り来るDMM英会話で、今後3年で2倍の成長は見込めず
上記の数字を元に算出すると、主要事業数値として下記を導き出せます。
有料会員化率:約13%
年間客単価:約56,000円
平均月額単価(仮説):6,000円
平均ライフタイム:約9.5ヶ月
僕の予測では有料会員化率を5%、ライフタイムを1年と置いていたため、狂いました。
事業上の肝は有料会員を伸ばすことであり、ここ約2年で1万人という伸びは多いのか少ないのか。先程の調達額と現預金状況からTVCMを打つことは考えにくいため、パワープレイで有料会員数を伸ばしにいく施策は打てない。しかもSkype英会話市場は競合がどんどん出てきており、その筆頭にDMM英会話などがある。
DMMはパワープレイで値下げと(ヒットしたかは知らないが)TVCMも既に打っている。DMMはエロで稼いだキャッシュを新規事業である英会話に投資できるのだ。レアジョブと比べて企業体力に差がある。
左がレアジョブ、右がDMMの価格体系。赤い海化しています。Skype英会話での月額有料会員のポテンシャルのアップサイドはまだあるものの、競合環境からレアジョブの成長の鈍化が予測されます。仮に3年で現状の2倍の6万人が有料会員になったとしても、売上は現時点から倍で32億。営利も利益率約10%と仮定して、現時点から倍としても2.5-3.5億程度(売上増加が利益率の上昇を後押しする事業モデルではなく、労働集約的)
競合環境も厳しいことから、現状のレアジョブでは3年後に2倍の有料会員を獲得することは困難とみます。売上の成長性に懐疑的です。
ちなみに英会話のEラーニング市場は55億程度であり、ここの16億がレアジョブ。約3割のシェアを持っているのはすごいといえそうですが、Eラーニング化率が今後劇的に上昇していくか否かは読み切れません。前期比120%の伸びなので、数年続けば100億市場には手が届きそうなレベル感。
上場後はコース制とスマホチャットアプリで活路を見出す
レアジョブは既存事業だけで売上を伸ばしていくつもりではなく、新規事業としてTOEICなどのコース制や、よりカジュアルに英語を学んでもらうためのスマホチャットアプリにリリースを予定しているようです。
英語学習の動機が「教養を高めるため(約64%)」(有価証券報告内に記載あり)なのが僕には意外でした。教養を高めたいからというファジーな理由で月額5,000円年間で6万円支払うユーザーがどれほどいるのか。
TOEICコースなどの資格特化コースはそこそこの需要はありそうですが、短期集中型で高いライフタイムは見込みにくいかも。一方で単価は上げやすいかもしれません。
スマホチャットサービスはSkype英会話よりカジュアルな内容でしょうから、スマホであることもあり、月額5,000円を取るのは厳しい。300円〜1,000円のラインとなる。1,000円で有料会員1万人でライフタイム1年でも年商1.2億。利益率は売上原価を下げればSkype英会話よりは上がりやすそうですが、既存事業ほどは売上のスケーラビリティはない。
以上から2つの新規事業は既存のSkype英会話事業を追い抜くほどのポテンシャルは感じません。
結論としては①競争環境の激化によりSkype英界隈事業はレッドオーシャン化しており、有料会員数増の鈍化による売上増の鈍化が予想される、②新規事業に既存事業を追い抜くほどのポテンシャルがない。
上場はするものの、今後の成長性には懐疑的にならざるを得ません。DMM英会話などとの競争ももはや価格競争にも陥っている時点で不毛です。レアジョブに未来はあるのか?主幹事がトレンダーズを手掛けた大和証券なだけに、一抹の不安を禁じ得ません。2015年度の業績予想に期待したいですね。
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