なぜWEB広告の単価が上がらないのか?

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インターネット広告の総額は伸びているのに、なぜ単価は上がらないの?

という質問をデジタルマーケターから受け、即レスできなかったので少し考えてみました。広告費全体の話と、インターネット広告市場の伸びというマクロ視点。次いでミクロ視点でのインターネット広告単価という話を。

直近では意外に落ちていないマス広告費。TVは伸びてる

電通発表による「2013 年 日本の広告費」ここの重要指標を抜き出します。

スクリーンショット 2014-05-06 15.27.35前年比成長率だけみてもあれなので、資料にあった一番古い2005年と直近の2013年の増減率も見た。中期で見ると新聞雑誌は相当ヤバいわけですが、直近の下落率はだいぶ落ち着いた印象。テレビは他と比べると少し下がってはいるものの、むしろ2013年は微増だった模様。ネットは言わずもがな伸び。ただし、国内広告費自体は中期で13%程度落ちている。

ネット広告の比率が伸びていくのは自明ですが、4マスの広告費減は下げ止まってた印象もあり、どこのチャネルからパイを奪っていくのか。今後10年で新聞や雑誌からもう1、000億ずつくらい奪い、テレビからはどれくらい奪えるのか。

国内市場は人口縮小ゆえに衰退市場なので、国内総広告費が増加していくことは考えにくい。少なくとも直近の約6兆円が再び7兆円に戻るシナリオは考えにくい。

テレビから広告費を奪えるかがネット広告の成長の鍵?

2012年から2013年のネット広告の成長率は108%。電通の資料内ではこれを「鈍化している」と指摘している。

インターネットメディアではあれだけテレビオワコン説が唱えられながらも、テレビの広告費は回復している。これはテレビの視聴率が回復し、impression数が伸びたこと(ファンダメンタルバリューの向上)と相関があるとは(感覚値的に)考えにくく、景気回復というテクニカル要因が主に寄与していると思う。

視聴者の可処分時間の総和がテレビからインターネットへ移行しているのは明らかだ。しかし、広告費は可処分時間の移行とはまだ連動していない。今後、緩やかに移行していくのだろうか。

ネットの広告単価が上がらない理由:無尽蔵に増える広告枠

インターネット広告費の市場規模自体が伸びることに疑いはない。成長率が鈍化しようが、テレビ広告費はテレビimp数下落というファンダメンタルバリューの低下により、遅かれ早かれ下がっていくはずだ。

ようやく本題に入ろう。インターネット広告の市場規模は伸びているのに、なぜ広告単価は上がらないのだろうか。考えてみれば簡単だった。

インターネットに広告枠の制限はなく、広告枠は無尽蔵に増え続けて行く。

テレビは民放5社などの枠に制限がある。ゆえに景気が回復し、出稿主が戻ってきたりあるいは最近のグノシーのようなインターネット企業による新規出稿主が登場し、限られた広告枠を争う構造にある。

インターネット広告でもYahoo!のような人気ポータルの枠は限られていて、競争も(比較的)激しいだろうが、無尽蔵に色んなサイトが増え、そのサイトが一定規模のPVを稼げればそこで広告商売は成り立つ。出稿主は出稿先が増える。だが広告費の総和は限られている。

インターネットでは一部の媒体は人気となり広告が集まる。しかし、媒体が増え過ぎると出稿主は費用対効果が良い媒体に流れ、売れない媒体同士のダンピングが起きやすい構造にある。

供給が2倍になっても需要(可処分時間)は2倍にならない

インターネット上に広告枠がある媒体の供給がいくら増えようが、視聴者の可処分時間の総和が上がるわけではない。インターネット上での可処分時間自体はテレビや隙間時間から奪い、上がることが想定される。しかし、いくらなんでも可処分時間の総和は二倍にはならない。

yd_guno2上記の図表はこの記事から引用させてもらった。少し古いデータだが。直近が平成21年(2009)で平成13年(2001)との比較で流通情報量は2倍。2009年はスマホが出てきたくらいの時代なので、流通情報量はもっと増えているだろう。このデータからだけ見ても、流通情報量が2倍になっても消費情報量は1.1倍にしかなっていない。この構造的な話は現代でも同様だろう。

むしろ今後も流通情報量は増えていくはずで、インターネット媒体は大きなトラフィックを集められるごく一部の勝ち組媒体になれなければ、競争過多により広告単価がさらに下落していくことが予想される。PCからスマホへトラフィックの主戦場が流れることで、単価下落に拍車が掛かっている。

記事タイトルの「なぜWEBの広告単価は上がらないのか?」という質問にシンプルに回答すると「広告枠が無尽蔵に増えるため、むしろ需給関係が悪化し続け、広告単価が下がり続ける」という結論になる。

最後にインターネット媒体で広告売上を上げている身からすると、トラフィックを集められる一握りのメディアとなり、広告収益を上げるか、それ以外でのマネタイズを模索しなければならない。僕は個人メディアとしての生計の立て方では、媒体をスケールさせて広告を狙うよりも、課金に早くから活路を見出してUmeki Salonを始めて3年目となる。法人としてスケールして何十人雇うには向かないけど、個人メディアとしては相性が良いモデル。

インターネット媒体で広告費のみで勝ち続けるには、今後ますます厳しい時代だろうなと思う。

LINE田端さんも参加する、会員数210名突破のUmeki Salon
内容の参考:【きまぐれUmeki Salon第1号】LINE田端氏の降臨など

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