これから毎週日曜日はクリエイティブコーナーにします(たぶん)。何気なくFacebookを眺めていたら出てきた京都紹介サイトきょうとあす。リリース時にも話題になっていましたが、じっくりと読んでみると驚愕のクオリティの高さですね。企画編集に興味がある人は一度じっくり見ておいて損はないでしょう。
ビジネスモデル的にもメディアコマースとして機能できそう。インターネット企業からではなく、出版社からこうしたメディアが出てくる。出版社の事業資産である編集力を上手く活かしたメディアだと思う。
キラーコンテンツは京都のセレブリティの旅プランと日常
きょうとあすを手掛けるハースト婦人画報社は女性メディアELLE ONLINEやインテリア雑誌ELLE DECOも傘下に持つ米国のメディアコングロマリットハースト・コーポレーションの日本子会社。GQのコンデナストしかり、出版社が手掛けるオンラインメディアは僕が知る限りにおいては海外モノの方がクオリティが高い気がする。
きょうとあすの軸になっていると思われるのが京都のセレブリティによる的的なコンテンツ提供。京都人名鑑というページでは20人弱が掲載。各々の京都旅行プランや日常を伺いすることができる「ひとりごと」というコーナーがあります。ひとりごとの方は比較的更新頻度も高い。
僕は婦人が方の読者ではないので誰一人知りませんでしたが、雑誌の事業資産であるセレブリティを起用し、定期的にコンテンツ提供(ひとりごとは300〜500文字程度なので気軽さも重要)できる関係性を築けている点が付加価値が高い。編集者がいないと成り立たないでしょう。雑誌起点ということもあり、写真の質は圧倒的。ウェブ起点のメディアではほぼ見られないレベルです。
ストーリ性を持たせることで他メディアと差別化を図る
媒体資料を拝借(媒体資料はイケてないですねw)京都のサイトなど既にたくさんあるでしょうが、ストーリ性を持たせることでの差別化を狙っています。地域紹介サイトの多くは、観光名所や飲食店などのスポット軸か季節軸で区切ってその中でお勧めの観光名所や飲食店を紹介するという程度。
京都のプロフェッショナルが定期的に季節性も交えてコンテンツを投稿していくというスタイルはおそらく今までなかったはず。このアプローチはハニカムと近しい構図ともいえるでしょう。どんなバックグラウンドの京都のプロフェッショナルがなぜそのような旅行プランを作ったのか。京都旅行を企てる人向けの大枠の企画と、京都のいまを発信する小企画に分けて時事性を持たせているのも巧いと思う。
蛇足までにグロースハック的な観点でいうと、京都人のひとりごとは京都人が京都の日々を“本音”で綴るとあり、更新性が高いことから、リテンション(継続率向上)施策として機能するでしょう。通常の地域紹介メディアはその地域に旅行する人向けに旅行計画を立てる目的で読んでもらおうというもので、目的が終わればしばらくは再訪されないはず。
きょうとあすのようなストーリー性があると、京都およびそのメディアのファンとなり、特に行く予定が直近でなくても覗いてみようかなという気になりやすいと思う。
旅行予約とECも兼ね備え、メディアコマースとしても機能
京都人を軸にしたキュレーションコンテンツの上には旅行予約やコマースへの導線もあります。売上はそんなに大きくはないでしょうが、出版社の雑誌事業の収益は雑誌販売料と広告料。きょうとあすは課金メディアではないので、コンテンツ課金はないものの、広告料と予約やコマースというメディアコマースモデルを採用しています。単体ですごいスケールするとは思いませんが。
京都紹介メディアという一見レッドオーシャンに見えそうな市場でも、軸を変えれば強力なコンテンツが作れるという好例ですね。複数のセレブリティからコンテンツを集めるというモデル自体は古くは紙の雑誌から、最近のオンラインメディアでいえばBLOGOSなどもありますが、それをどう編集の力でキュレーションしてコンテンツの質を高めるか。そこは付加価値が出せる余地がまだまだあると思う。
僕がBLOGOSの編集者なら、同じカテゴリーに寄稿している人同士の対談とか、同じテーマで記事を書いてもらうブロガソン的な試みをやってみるだろうなあ。
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