2016年に入ってから一部クリエイター界隈(といっても私の周りくらいかもしれないが)でnoteがにわかなブームとなっている。一過性ブームで終わるのか、それとも文化として定着するのか?noteを運営する株式会社ピースオブケイク代表取締役CEO加藤貞顕氏に、noteで売れているモノや今後の展開を中心に、直接話を伺った。
売れているジャンルは「マンガ」。数千冊単位の販売実績も
最近、私もnoteで何冊か販売してみましたが、案外売れて驚いている。実際にはnoteではどんなジャンルが売れているのだろうか。
noteでは「マンガ」「コラム」「小説」「写真」「音楽」という5つのジャンルを設けていますが、一番売れているのは「マンガ」です。漫画家の田中圭一さんの作品は、1作品100円などで販売していますが、数千冊前半単位の売れ行きです。あとは、マンガ家の中村珍さんも、かなり売っていただいていますね(加藤氏談)
あくまで私の予想だが、1作品を100円で2,000冊売ると20万円。手数料20%と仮定しても、手元に16万円残ります。きっと、漫画雑誌に寄稿するより印税条件良いのではないか(あくまで歩合制ですが)。書籍化を前提にnoteで1作品ずつ売っていくこともあるようで、「うつ抜け」もその手の作品。書籍化する漫画自体は白黒の予定とのことですが、noteではカラーで売っています。十分な収益性があるので、カラーにしようと作家のテンションが上がったのかもしれませんね。
梅木noteは「歴代売上トップ5」。数百万の売上実績はある
よく売れるジャンルは「マンガ」。冊数は「最高で数千冊前半」とのこと。それでは売上規模はどうか。
梅木さんの最近のnoteだと売上でいうと歴代トップ5には入ると思いますが、その上はマンガとかで3〜4作品はあったかと思います(加藤氏談)
ちなみに下記が最新の私の売上です。noteダッシュボードより。
1.10公開:投資判断前編(3,000円)=361冊
1.16公開:投資判断後編(5,000円)=108冊
の売上です。後編の方は抽選でオフ会招待券付きですが、販売から1週間たちましたので、この土日で招待をお送りしますので、お待ちください。前編はあと1ヶ月もあれば400冊いくのでは。
ちなみに高額のnoteだと1万円での販売実績もあるとか。現状だと最高単価の設定が仕様上、1万円までです。私のようにビジネス系のnoteを比較的高額で100-300冊売るケースはそんなになかったようで、現状の主戦場はマンガで100-500円くらいで数千冊売る、というモデルなんでしょう。
メルマガなども売れているようで、藤沢さんの金融日記メルマガあたりがnote上でも売れていそうです。バックナンバーの売れ行きが良いと加藤さんが仰っていました。
Kindleとnoteの違い。コンテンツ以上のモノとは?
最も面白いなと感じているのは、テキストコンテンツの場合、Kindleでも売れるようなものをnoteでも売るが、Kindleとnoteで価格弾力性の違いがあるのではないか。
例えば、私の「投資判断60社」はKindleで3,000円で販売されていたら買うだろうか?Kindleで3,000円の本などあまり聞いたことがないし、私なら自分で言うのもアレだが買わないだろう。Kindleというプラットフォーム上での消費行動は、本を買うという行為にアンカリングされており、ゆえにプライシングも本に引きづられるのだ。Kindleでの消費行動とnoteでの消費行動、その違いをどう捉えているのか。
noteって売れるとやけに嬉しいんですよね(笑)。誰が買ってくれたか、販売者も購買者の顔が見えるじゃないですか。(注記:購買履歴でわかります)コンテンツを買うという体験ではなく、クリエイターとの距離の近さを感じますよね。
今ではメッセージ機能もありますが、リリース時にはない機能でした。メッセージ機能入れて、御礼とか送れるといいよね!ということで。単にコンテンツのみではなく、体験を売る場として機能しているのではないでしょうか(加藤氏談)
メッセージやサポート機能はたしかに距離の近さを感じます。売れすぎて、すべてのサポートに対して御礼メッセージを打つことができないのは心苦しいですが、「あっ、あの人サポートしてくれてる!嬉しい!」的なユーザー体験は販売者としてはありますね。おそらくですが、購入者側も販売者から御礼メッセージとか来ると嬉しいはずです。私だったら嬉しいですね。
よって、コンテンツだけでなく、体験や関係性をnoteでは売っている。といえるのかもしれません。クラウドファンディング的なノリにも近く、「10冊買ってくれたら次も出すよ」とか、読みたい人は応援の意味も込めて買うとか。kindleでポチるときに「応援の意味も込める」とかほとんどないですよねw 純粋に本を読みに行っているだけです。
先日本誌で取り上げた「有料noteコピペ流出問題」ですが、実は今までそういう事例はほとんどなかったようです。購買者はクリエイターのファンであることが多く、買ったモノを流用するという悪質なことは今まではあまり起きてこなかったのではないかと。性善説がどこまで機能し続けるか。
インディーズのnoteから、cakeへデビューすることも。
最後に、cakeとnoteの共存共栄について。
noteがインディーズ発掘のような場として機能しており、「cakesクリエイターコンテスト」を実施し、2,500作品以上の応募から、SNSポリスのかっぴーさんなどが受賞し、cakesで近日連載が始まるようです。
コンテンツをこのように循環させる形は良いですよね。noteですごく稼げるようになると、cakesよりは原稿料が良いはずで、noteとcakesで食い合う可能性があるという指摘に対しては
cakesでは作家に担当編集が付きます。noteでは作家が一人で活動していくか、ないしは作家が自ら編集者を探して組む方式と、棲み分けがあります。noteでうまくやっていくコツは、プロモーションやコンテンツ、コミュニケーションのマネジメントをやっていくことが大事だが、それをぜんぶやっていくのはなかなかたいへんです。梅木さん、はあちゅうさん、イケダハヤトさんは、それがとてもお上手ですよね(加藤氏談)
我々3人にはサロンの知見がありますから、コミュニケーションマネジメントもお手の物です。クリエイターは「創作活動以外はしたくない」という人が少なくないらしく、だからこそ編集者がプロモーションやコミュニティマネジメントを頑張るという意気込みはあるようですね。
最後に、noteは一過性のブームで終わるのか、それとも文化になるのかという問いへの私の答え。もちろん、すべてのクリエイターがnoteでの販売が成立するわけではなく、noteで売れるクリエイターの方が少ないと思う。しかし、売れるクリエイターにとっては、今まで無料ですべてのテキストコンテンツを出していたのもアホらしいと思うし、無料読者を相当数保有していれば、C向けサービスの月額課金比率と同様の、無料会員の5-10%程度は課金してくれるのではないかと思う。もちろん、内容や価格次第だが。
我々のようなnoteでそれなりに稼ぐことを証明したクリエイターがガンガン事例をつくっていけば、世の中はそういうムードに流れが変わっていく。noteはブームで終わるのか、文化になるのか。それは事業者よりは、我々クリエイターのスタンスに大きく左右されるのであろうと、取材を通して感じた。
ということで、2月も何か作って販売したいと思います。あ、まだの方はとりあえず下記をどうぞw
1.10公開:投資判断前編(3,000円)=361冊
1.16公開:投資判断後編(5,000円)=108冊