PVは誰のためのものか?

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こんなツイートを見て思ったことを。

メディア運営者であれば「PV以外でみてくれ」とか「新たな指標を」などという話は、大して変わりもしない政治を野次っているのと同じくらい、不毛というか長らく言われてきている話である。

PVは誰のためのものか?

それは無論広告主様のためのものであり、ユーザーのためのものではない。ユーザーにとってPVなどどうでもよく、そのコンテンツから有益な情報なり癒しなりなんか面白かったとか、得るものがあれば良いのである。

PVを否定するのはたやすいことだ。

PV稼ぎで消耗しているのはどこのメディアも同じだ。しかし、広告主にとってのPVという指標は、昨今動画広告による「ブランドリフト」など新たな指標が出てきたとはいえ、到底すぐになくなる指標ではない。PVという指標がWEBメディアの王座から引きずり下されるまで、55年体制が崩壊するのと同じくらいの年月がかかるのではないか。ようは一人の政治家が「PV反対!」と声高に叫んでもルールは変わらない。

そのルールは正しいのか?という視点を常に持ち続けることは大事だが、その視点はルールの上での戦いを放棄して良いことは意味しない。WEBメディアにおいてPVを否定するのは、TheStartupとUmeki Salonの関係のような課金でマネタイズし、広告枠は空き枠がもったいないから回しておこうくらいのスタンスなら問題ないが、広告収入をメインに据えるWEBメディアが「PVなんて。」というのはお門違いというか、己のビジネスモデルを放棄しているとしか思えない。私からすれば、狂気の沙汰である。

ニュアンスや表現を選んだ上で主張したいが、いつの時代も広告主がトレンドの一番最後ではないだろうか。まずユーザーの行動が変化し、次に媒体が変化する。そして最後に広告主が変化する。ユーザーが求めるもの(需要)を提供できる媒体が存在し、そこに広告主が供給するという図式において、広告主から真っ先に変わるということはほぼほぼあり得ない。PVの変わりとなる指標として、滞在時間とかいくつかあるだろうが、広告主は最も分かりやすい指標をしばらくは評価し続けるだろう。

PV

書くことが専門のライターやジャーナリストは「PVが取れなくてもこの記事は良い」と思いがちな風潮がある。しかし、PVが取れている記事には全て理由がある。「PVが取れなくても、内容が良いからいいんだ!」というのは、より多くの読者に読まれるための工夫をしていないだけな、怠惰な姿勢ではないだろうか。

たしかに、ニッチなジャンルであれば需要がそもそも小さいので、良質な記事であっても読まれないことは多い。そうであれば、そのジャンルの裾野を広げるための記事を書くことはできないか?そういう視点でPVを伸ばすための工夫はあって然るべきであろう。

メディアは個人ブログとは異なり、関係者が複数いるのであれば、最低限彼らの人件費を賄うだけの収益を稼ぐ必要がある。言うまでもなく、ビジネスだ。PVという指標を放棄することは、PVを伸ばす姿勢をも放棄し、他の指標に逃げることで、広告ビジネスの拡大をも放棄する結果にならないか。

たしかにスクロールするだけでURLが切り替わりPVが傘ましされているメディアもあるだろう。しかし、そういったメディアにそれなりの金額で広告出稿しても効果が出ないことは明白であり、メッキはすぐに剥がれる。

Meryのような圧倒的規模のキュレーションメディアも出てきており、Meryの月次広告売上は雑誌発のオンラインメディアには到底出せないレヴェルの数字になっているかもしれない(月商1-2億程度)。よって、PVという規模は広告ビジネスの観点からすると、まだまだ正義であると言わざるを得ないだろう。

私は一人のメディアビジネスに携わるビジネスマンとして、PVを無視することは到底できない。

WIERDよ、死んでいるのはPVという指標ではなく、WIRED自体のPV、そして売上ではなかろうか。WIREDのPVは1年で100万しか伸びてない。記事数を積み上げていればSEOで何もしなくても多少はアドオンされるはずであり、むしろ新記事の月間PVは下がっているのではないだろうか。自メディアのPVが伸びてないからといってPVを批判しても、広告主はついてこないはずだ。
*売上は公表されるものではないので、わかりません。推測にすぎません。

2015年1Q媒体資料:800万PV
参考記事:LIGブログ
2016年1Q媒体資料:900万PV
参考記事:WIRED2016年1Q媒体資料

PVを否定する暇があれば、PVを稼いで広告主に振り向いてもらおう。それがルールの上で戦う、ビジネスマンとしての正しい姿勢ではありませんか?

PVがすごく多いメディアがPV不要論を語ったほうが影響力も大きいでしょうしね。

ジャーナリストに、メディア「ビジネス」はできないのかもしれない。



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