最近、STORYS.JPというサービスの投稿がバズっているのをたまに見かける。学年でビリだったギャルが、1年で偏差値を40あげて日本でトップの私立大学、慶應大学に現役で合格した話という投稿を見たことがある方は多いのではないだろうか。STORYS.JPは2013年2月27日にローンチ後、フジテレビとのタイアップ番組(6/23放送)も組まれるなど、好調に推移しているようにみえる。
実はリリース前からこのサービスの構想を知っており、リリース後に一度ヒアリングを受けたが「投稿ハードルが高いのであまりスケールしないと思う」という見解を私は持っていたが、見事に裏切られた。STORYS.JPはどんなニーズがあると感じ、実際にどうスケールさせていっているのかを、STORYS.JPのCMOである大塚雄介氏に伺った(大塚氏のSTORYS.JPはこちら)
ブログ大国日本でも、ジャンル特化で潜在需要を顕在化
「『知ってる人の知らない話』がSTORYS.JPのキーワード。人は人に興味があり、人が最強のコンテンツだと考えています。日本はブログ大国で、文章を書くことが好きな人はかなり多いのですが、ブログが続かない人たちにとって、書ける場所が欲しいのではないかという潜在需要を感じていました。STORYS.JPはその人が過去にやってきた仕事や家族の話などの、普段スポットライトが当たらないバックグランドを知れるような場になるといいと思っています」(大塚氏)
たしかにブログをいまさら立ち上げても最初は誰も読んでくれず、読まれないと継続するモチベーションが沸かない。実際にSTORYS.JPに投稿したユーザーはブログをやっていない人が多いという。オールジャンルのブログに対し、「人に特化したストーリー」というジャンルに特化したことで投稿を集め、あしあと機能や「詳しく聞きたい」というリクエスト機能やカテゴリーにより、にわかなSNS感もSTORYS.JPには感じられる。
「STORYS.JPで過去を振り返りながらストーリーを書くと『初心に戻れた』というユーザーの声を結構聞きます。読んでいてもピュアなストーリーが多く、ピュアな気持ちにさせてくれるサービスなのかもしれません」(大塚氏)
名刺にSTORYS.JPのURLを記載し、仕事内容だけではなく、人間性を伝えようとするユーザーもいるという。
ストーリーを書いてもいいかなと思える、UXサイクル
「新規ユーザーの獲得よりも、どうすればユーザーがストーリーを書いてみようかな、という気持ちになれるかを最優先に考えています。結果的に、2回目のストーリー投稿をしているユーザーはかなり多いです」(大塚氏)
私も昔、2つ書いてみたが(全くバズってないがw)その時の心理や、サイト上のユーザー行動を見た結果、下記のUXサイクルの仮説を立ててみた。
■2度目の投稿に繋がるSTORYS.JPのUXサイクル仮説
①:(行動)書いてもいいストーリータイトルを会員登録時のチュートリアルで3つ記載
②:(行動)「詳しく聞きたい」とリアクションがある
③:(心理)②が溜まると「書いてみようかな」という気になる
④:(行動)ストーリーを書いて公開する
⑤:(行動)「聞いてよかった」というリアクションがある
⑥:(行動)連載系の場合「続きを読みたい」とリアクションがある
⑦:(心理)「あしあと機能」で何人、誰が閲覧したかを知れる
⑧:(心理)読んでくれる人や、読みたいと思ってくれる人がいるなら、書いてみようかなと思う
⑨:(行動)2つ目のストーリーを書いて公開する
投稿したストーリーに関しては7割程度がFacebookでシェアされるという(投稿者がシェア)。Facebook経由の流入がやはり多いとのこと。閲覧者に関しては、知人のストーリーへの関心が高いが、各ストーリーの下部や右部のリンクを辿って滞在時間が伸びている傾向もあるとのこと。You tubeのレコメンドの設計に似ている。
「Facebook notification」が強力な流入経路に
投稿を促進する「詳しく聞きたい」の通知や、自分が「詳しく聞きたい」をしたユーザーの投稿があった際に、Facebookに通知がくる。STORYS.JPのような必要性の高くないサービスは、従来であればメールでの通知からサイトへの再訪を狙うというパターンが王道といえる。
しかし、Facebook APIの駆使して、Facebook notificationからの再訪率が高いという。元々Facebookアプリといえる肉会やomiaiのようなサービスではFacebook notificationがくるが、滞在時間が長く、迷惑メールなどにも飛ばされないため、明らかに再訪率が高くなりそうとの仮説は立てられそう。意外に実装しているサービスは少ないらしいので、実装を検討してもいいサービスもあるであろう。
インキュベイト和田氏、日本のソーシャルメディア転換点に
STORYS.JPの投資家であるインキュベイトファンド和田圭祐氏に投資した背景や理由を伺った。
CEOのJamesは、外資系金融機関出身のとてもクレバーな若手起業家ですが、最大の魅力に感じるのは、プロダクトに対する審美眼が鋭く、既存の常識に捉われずに大胆なアイデアを繰り出せる点で、将来が楽しみな若手起業家です。圧倒的な開発速度で彼を支えるCTOの和田晃一良さんはじめ、議論/実行両面のレベルが高いメンバーで構成された素晴らしいチームです。
欧米に比べてまだまだ発展途上にある日本のWebやCGMの領域は、単純に舶来サービスの輸入だけでは不十分だと思っており、日本の社会的文脈を理解しつつ、同時に新しい視座を持ち込むことで進化していける領域だと感じています。STORYS.JPを従来の日本のインターネットカルチャーやソーシャルメディアの転換点になるようなサービスに育ててほしいなと期待しています。(和田氏)
変化球的な案件を得意としそうな和田氏。私には見えていない未知の世界が見えていそうなので、和田氏の案件には今後も注目していきたい。
参考:和田氏VCの赤本
ストーリーには、方程式がある
STORYS.JPはブログというプラットフォームを細分化して潜在需要を顕在化させ、しかも2回目の投稿に繋げやすい上手いUXサイクルを設計している。プラットフォーム細分化のアプローチやUX設計は他のサービス運営者にとっても多いに参考になるはずだ。
投稿ハードルが高いとの見解は変わらないが、ブログをわざわざ立ち上げて継続することと比較すると、よほど低いかもしれない。昔、物語編集力という本を読んで、人々が惹かれるストーリーパターンを研究したことがあるが、困難を克服してハッピーエンド的なものがやはり好まれるようだ。当たり前すぎるといえばそうなのだが。僕は今年実は小説を書いていて、ハッピーエンド風にしてはみたものの、なかなか上手くいかなかったな…(苦笑)
ブログメディアも壮大なストーリーみたいなもので、全く知らない人が「この記事読みました」とか、思いもよらぬかわいい女性から記事の感想をもらえるとかは未だに嬉しいですし、リアクションが継続のモチベーションになっているということはプレイヤーとして実感できますね。
The Startupでは僕の人間性がわからないと評判のため、STORYS.JP(UmekiのURL)で人間らしさを書いてみようと思ったが、何の話を書けばいいかわからず。リクエスト機能があるので、何かあれば気軽にリクエストしてみてください。
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